MK日記。-牧村憲一×津田大介の未来型サバイバル音楽論2016を受講して改めてパブリシストとして頑張ろうと思った話。

久しぶりのMK日記です。

 

MK日記。ではパブリシストの卵として、音楽業界の片隅で感じていることをつらつらと書いています。日々バリバリに音楽ビジネスに身を投じている方々からしたら、恐らく目新しいことはないと思いますが、もし興味があればお読みいただければと思います。長い長い感想文。自分のふりかえりと決意表明みたいなことを書いているだけなのですが、その過程でもし参考になることがあれば嬉しく思います。

 

 

<前置き>

 

先日音楽プロデューサーの牧村憲一さんと、メディア・アクティビストの津田大介さんによる、未来型サバイバル音楽論のトークイベントを受講してきました。

 

牧村さんは僕が多大な影響を受けた渋谷系、つまりフリッパーズ・ギターに始まるトラットリアレーベルと、L⇔Rに始まるWitSレーベルの双方の生みの親で もある方です。牧村さんには以前レビューを書いていただいたほか、僕自身牧村さんが校長の音学校の受講生でもあり、折に触れて大変お世話になっています。

 

津田大介さんは金髪のジャーナリストということで知っている方も多いと思いますが、やはりツイッターが有名ではないでしょうか? 著書「動員の革命」はSNSが引き起こしたアラブの春や日本での様々な事例について触れられている名著なので、まだの方はぜひ一度読んでみてください。他にも音楽ニュースサイトナタリーの立上げに関わられていたり、政治メディア「ポリタス」を創られたり、NHKに出られたり、MIAU(一般社団法人インターネットユーザー協会)の主に著作権分野で活動されていたりと、音楽×ITを軸に色んなことをされている方です。津田さんはツイッターやTVなどでお見かけしたことはありますが、実際に見るのははじめてだったので、どんな方なのかとても楽しみにしていました。

 

お二人とも僕にとっては「雲の上の存在」というか、「憧れ」といったらちょっと違う気もしますが、「新しい文化を作り続けている実践者」として勝手ながら大変尊敬しています。僕は実際に行動している人が好きなのです。

 

今回のイベントは牧村さんが校長でもある音学校の拡大授業の一環として行われました。この日は単回受講もできるということで見に行きました。ちなみに講座は 満員で教室の両脇にも椅子が並べられるほどでした。OTOTOYの学校や音学校で出会った人、バンド仲間に業界では名の知れた人達もチラホラいらっしゃい ましたね。

今回自分の立ち位置の整理のために、メモも兼ねて書くことにします。

 

 

牧村さんが校長を務める音学校については、下記をご参考ください。

http://www.ongakko.org/

 

 

<ポプシクリップ。とは>

 

実は自分でも「ポプシクリップ。」って何なのかよくわかっていないところがあるのですが、「好きな音楽とミュージシャンのために、何ができるのかを考え、実践かつ学び続ける場、貢献する場」を目指すために取り組むライフワークとして位置づけています。2009年からはじめ、とりあえず10年続けるということでスタートしました。今年で7年目に入るので残り3年ですね。その先も続けていくつもりですが、どのような形でやっていくのかまだ見えていません。

 

ポプシクリップ。は私とサポートしてくれる仲間や友人らの好意・善意の総和が集まってできあがっています。各個人の熱量に依存しているため、組織として継続性という観点からは大いに問題があるのですが、そういう仕事のやり方や取り組みは会社でさんざんやっていることもあって、この場では個人ベースのライフ ワーク、つまり自由に好きなことだけをやっています。苦手でも必要なことはやりますが、嫌いなことは一切やりません。

 

余談ですが下記はポプシクリップ。のロゴです。これも大好きなHARCOさんやadvantage Lucy のジャケットイラストを手がけられた日置さんにお願いして作っていただきました。このロゴ一つとっても僕の好きがつまっています。

<サバイバル音楽論とは>

 

授業のテーマ、「サバイバル音楽論」というのは、90年代後半をピークにマーケットが縮小している音楽業界で、今後アーティストが生き残っていくための「考え方」や「手法」をお二人がまとめたもの(であってるかな?)です。

 

現役最高齢の音楽プロデューサーで、音楽業界の生き字引ともいえる牧村さんと、インターネット×音楽という切り口で活動をされているジャーナリストの津田さんがタッグを組みました。

 

お二人は2009年から、後に本にもなった「未来型サバイバル音楽論」の講義をされていたそうで、僕は2010年に出版された本を買ってその存在を知ります。もともと渋谷系レーベルの生い立ちについて少しでも知ることができればと思ってこの本を買ったんですが(笑)、結果この本に書かれていたことが僕の人生に少なからず、いや多大な影響を与えることになったんですよね。

 

読んだことのない方は、ぜひ一度読んでみてください。数千部売れたらいいと言われる音楽本の中では、異例のヒットを放った本です。古い本ですが、まだまだ参考になる部分もあると思います。あと牧村さんの著書も日本のレーベルの歴史などをふりかえる上で参考になるので、追記しておきます。

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津田大介+牧村憲一

未来型サバイバル音楽論

2010年11月

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牧村憲一

ニッポン・ポップス・クロニクル

2013年3月27日

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<一人1レーベルの考え方とポプシクリップ。>

 

この本を読んで僕が興味を持ったことは二つあります。
一つ目は牧村さんが提唱されていた「一人1レーベル」のお話です。

 

音楽マーケットの衰退で、メジャーレーベルが一部機能しなくなってきた実態を踏まえて、今後新たな未来型レーベルを一緒に作っていこう、というのがお二人の考えだそうです。なお牧村さんは、未来型レーベルについて、音楽だけでなく、映像、フォト、絵画、小説などクリエティブナもの全般を対象にしています。

 

 

2010年に出された本からいくつか引用します。

 

今後は、ミュージシャン個人が直接ファンとコミュニケーションを取る中から音楽が生まれていく。そしてそのようにして生まれた音楽を、ミュージシャン自らがリスナーに届けるケースが増えていくのでしょう。-未来型サバイバル音楽論 p19

 

自分がリスナー、ユーザーとして、一つの音を知るための手口、あるいは音の周辺を知るための手口としてのラベル、デザインされたロゴマークも含めた目に見える信頼性という意味でのラベルが、イコール、レーベルなのです。そのラベルが貼ってあるものの向こう側にある音、スタッフを想像すること、それが僕の基本行為としてあります。-未来型サバイバル音楽論 p63

 

僕がここでいうレーベルは、大きくしてメジャーに売ろうとか、メジャーに吸い取られるような危うさではない、この時代にしっかり根付いた思想、または小さな思想でもいいから、そうした概念を持ったレーベルのことです。そういう意味で言えば、60年代のサラヴァは、結果論としては、僕の理想とする(レーベルの)構造を持っていたのです。-未来型サバイバル音楽論 p70

 

実は、「一人1レーベル」というのは、ある種口当たりのいい標語であって、ここで目指そうとしているのは本当は一人ではダメなのです。一人で作って、一人で満足して、一人で拍手する音楽ほど寂しいことは ありません。すぐそばで最初に音楽を体験して、批評をしてくれる人間、あるいは拍手をしてくれる人間を持っていた方が、より成功する確率が高いのです。社会に出て行くのは、一人では限界がありますから、最低限二人で始めることをお勧めします。事実、僕が関わってきたレーベルは、必ず二人以上で運営してきま した。「一人1レーベル」というのは、「一人ぼっちでしなさい」という意味ではなく、一人でもできるくらいのノウハウを持って、そしてなおかつ複数の人数でレーベルを運営しましょう、ということなのです。-未来型サバイバル音楽論 p106

 

 

これまでの自分の取り組みをふりかえってみると、

 

 2009年04月 ファンブログとしてポプシクリップ。をスタート

 2009年09月 ミュージシャンへの取材活動や独自の記事の制作をはじめる

 2010年05月 ニュース記事をはじめる

 2011年09月 音楽イベント「POPS Parade」をはじめる

 2013年01月 音楽小冊子「ポプシクリップ。ペーパー+」をイベントの一環で発行

 2014年04月 あるバンドのマネージャーをはじめる

 2014年12月 あるバンドのパブリシストをはじめる

 2015年12月 音楽雑誌「ポプシクリップ。マガジン」として全国販売もはじめる

 

 

亀のようにスローなペースで(笑)役割を増やしてきました。今の立場としては、リスナー、ファン、編集記者、イベンター、パブリシスト、マネージャーという様々な立場で活動しています。どれも勉強中なのですが、ポプシクリップ。という冠のもと、いつのまにか様々なことを手がけるようになってしまったんです。規模は小さいですけど(笑)、大好きなミュージシャンのお役に立ちたいなと行動して今に至ります・・・。

 

このポプシクリップ。という看板をレーベルに例えると、これまでの取り組みがまさに津田さんと牧村さんが書かれていたことに近いなと感じました。そこで自分の整理もしたいと思って今回受講しました。普段は別の仕事もしながら、合間に時間を作ってやっていますので、わりと大変なのですが、とにかく楽しくて楽しくて仕方ないし、やりがいがとてもあるんですよ。やりすぎて家族に怒られることもありますけど・・・(笑)

 

今は一人で全部できないので、デザインはあの人に、撮影はこの人にといった形でプロジェクト・案件ごとに簡易的なチームを作って対応していますが、それもポプシクリップ。が少し大きくなったからです。一人1レーベルの考え方・活動に近いものがあると思いました。

 

ただ基本の運営は諸事情で一人でやっています。やってみてわかったのですが、ものすごい稼働・工数がかかるんですよね。それでいてお金を一切とらない方針のために、純粋にやりがいだけをモチベーションにできる人でないと続けられないからです。しかもそれを何年もやれる人なんていないんですよ。例えば仕事の転勤だったり、結婚したり、子供ができるなどして生活環境も変わっていくと、好きなことに割ける時間はどんどん減っていきますよね。

 

知っている中では唯一ギターポップレストランの中村君は個人イベンターとして5年続けているのですが、彼のような思いを持った人でかつ稼働がその数倍あることに耐えらえる人でないとできないので、そんなことを頼める人が僕にはいません(笑)。なので普段は一人でやりながら、取材やイベント、雑誌を作るときにチームを組む「プロボノ形式」でやっています。

 

 

<ミドルマンの存在とポプシクリップ。>

 

本から受けた影響のもう一つが「レコード会社やレーベルに代わってアーテイストとリスナーをつなぐミドルマンの存在が今後重要になる」というお話です。

 

背景としてはレコード会社やレーベルが担っていた役割を、バンドメンバーの代わりに担う「個人」ないし「チーム」が今後求められるということだと僕は理解しています。何故そうなってくるかという理由は多分2つあって、1つ目はレコード会社やレーベルさんが経営的にしんどくなってきたので、本当に売れるアーティスト、稼げるミュージシャンでないと手伝えなくなってきてしまっているということ、もう1つはインターネットはじめテクノロジーの進化のおかげで、資本がなくてもリスナーに届ける手段ができたので、限度はありますが、DIYで色んなことができるようになりました。

 

 

新しいミドルマンについて、本の一部を引用させていただくと

 

結局のところ、クリエイターがリスナーとダイレクトに結びついていて、しかも制作者から、プロデューサーから、ソングライターから、全てを一人がこなすなんて、それこそ「幻想」なんですね。-未来型サバイバル音楽論 p49

 

ニューミドルマンの存在・・・、コアはあるのだけど、その周辺になんかふわっとした人の意志みたいなものがくっついている。でもツイッターなどで瞬時につながることで可視化され、現実としてミュージシャンをサポートする動きが生まれる。それが、ニューミドルマンをめぐる現在の状況なのかな、と思っています。-未来型サバイバル音楽論 p52

 

 

この新しいミドルマンの役割について、ポプシクリップ。に照らし合わせて考えると、先にも書いたマネージャーやパブリスト業務が当てはまると思います。実際にミュージシャンの方々の裏方として働き、彼らが制作に集中できるようお手伝いをし、そして彼らの音楽をリスナーに届ける役割を担うようになってきました。まだ駆け出しではありますが、自分の手がけたプロモーションの反応やCDが売れた、という話を聞くと非常に嬉しいものですし、やっていてよかったなと心底思えます。

 

それと僕はこのWEBサイトそのものも書かれているニューミドルマンと同じ役割を持っていると考えています。サイトで発信するニュースやインタビュー記事を読んで音楽を知ってくださる方がいますし、イベントに遊びに来て、新しいバンドに出会ってCDを買って帰ってく出さる方も大勢いるからです。またこのサイトを通じて僕は多くの音楽ファンの友達やミュージシャン、音楽ライター、編集者、デザイナーと出会いました。このサイトがリスナーやミュージシャンをつなぐ場になっているのです。もともと勝間和代さんの「WEBは立体名刺」だという言葉を知ってはじめたのですが、「WEBは立体的でかつ広場になる」というのが僕の感想です。

 

 

<今回の講座>


講座では、これまでのサバイバル音楽論の話をふりかえりつつ、本を出した後に起こった出来事、すなわち震災以降についてフォーカスを当てながら二人の対談形式で話が進みました。

 

この間津田さんがポリタスという政治メディアを作ったこともあり、昨年登場したSEALDSについても触れながら、「政治と文化、音楽」の関係性についてのお二人の考えを提示されていましたね。

例えばフランスでは政権が変わると稼ぐミュージシャンも変わるそうです。共産党が政権を取ったら共産主義に賛同するアーティストにお金が流れるといった具合に。フランスでは政府が音楽業界に対して補助金などを出しているそうで、それらが関係あると話されていました。

 

ちなみに日本では政府が音楽業界に対して何もしてくれないので、政治に対して日本の音楽業界はニュートラルでいられるとのことでした。日本の音楽業界は政府のサポートがなくても、一時は6,000億というマーケットがあったからです。今はその半分以下になり、音楽業界が大変だという話は皆さんご存知だと思いますが、それでもまだ成り立っています。ただし、政権が変わってからニュートラルだったポップミュージックが思いもよらぬかたちで政治に使われてしまっているという具体的な事例を挙げられ、警笛を発しておられました。

 

 

 

<どうやったらバンドは生き残れるのか>

 

本題の「バンドは今後どうやったら生き残れるのか?」についてお二人は、ソロ・アーティストはやっていけるが、バンドは正直大変だという話をされていました。例えばライブのギャラでいうと、通常はソロでも10人バンドでも一緒だからです。10人バンドだったら10倍ギャラが出るかというとそんなわけにはいかないんですよね。

その中で津田さんは「ムーンライダーズ」が一つの形になるんじゃないかと話されていました。メンバー一人一人がプロデュースもできるし、ソロミュージシャンとしても活動しながら、バンドもやるといったスタンスが重要ではないかとのこと。そうでないとやっていけないだろうと。


この考え方に現時点僕も同意です。


僕はここ数年「どうやったらバンドが長く続けていけるのか?」というテーマを持ちながら、長年音楽を続けてこられている方に取材をしています。僕のインタビューでは、ほぼ必ず「何故続けてこられたのか?」についての問いをいれているのはそのためです。環境が変化しているとはいえ、長く続くバンドとそうでないバンドの特徴を整理して、それらから読み取れることを、悩んでいる若手ミュージシャンに時折伝えているんです。

 

今の若いバンドマンは、音楽業界が大変であることをよく知っていて、どうやったらサバイブしていけるのかをすごく考えています。例えば昨年メジャーデビューしたShiggy Jr.の原田君は、取材の際に音楽をずっと続けていきたいことを話していました。彼がすごいのはちゃんと実践をしていること。彼等はウルフルズも所属する音楽事務所「タイスケ」と契約しましたが、メジャーデビューの前に、自分達だけでどこまでできるのか、DIYで一通りやりきっています。自分たちで何がどこまでできるのか、CD制作・販売はもちろん、ライブのブッキングからプロモーションビデオの制作、グッズの制作販売など一通り理解した上で、次のステップとしてメジャーを選んでいます。以前はデビューするために楽曲をレーベルやレコード会社に送って、採用されたら契約してデビューする、といったプロセスが大半でした。今の彼らはプロセスが全く違っていて、それは生き残っていくための生存本能のようにも見えます。

 

余談です。彼らがメジャーデビューまでこぎつけることができたのは、僕の個人的見解ではインディーズ時代にYさんという彼らをバックアップしてくれた素晴らしい人がいたからだと考えています。Yさんとの出会いがShiggy Jr.を飛躍させる原動力になりました。彼らにとってYさんはまさにニューミドルマンなんです。

 

20代のミュージシャンに話を聞くと単純にメジャーデビューしたいという人は少ないようです。したいのはやまやまだけど、メジャーデビューすることの意味を、収入面などを踏まえてよく考えています。例えばインディーで1000枚2000枚売っているアーティストに話を聞くとメジャー行ってもそんなにCDの売れる枚数が極端に増えるわけではないし、手取りが減るだけだからあえて行かないという人もいます。もちろん、メジャーの持つプロモーションに期待をして行く人もいます。大切なのは自分がDIYでできることと、レコード会社やレーベルに求める役割をよくよく考えた上で選択しているということでしょうか。

 

そして10年以上バンドを続けられているベテランミュージシャンの方々に取材してわかったことがあります。それはバンド形態で活動しつつも、ソロ・ミュージシャンとして他のバンドのサポート仕事をしたり、映画やCM・ゲーム・アイドルなどへの楽曲提供という制作仕事、プロデュース仕事、音楽大学や専門学校での講師などをやりながらサバイブしている、つまりバンドマンである前にミュージシャンとして活動できている人が生き残り、音楽を続けられているということです。何かすごい答えを期待している人がいたら、申し訳ありません。シンプルに自分のミュージシャンとしての価値を高めて頑張っている人が生き残っている実態が取材から見えてきました。

 

僕が取材を通じて得た知見と津田さんの話されていたことは一致していました。バンドだけでやれている人もいますが、ミリオンセラーを持っている人などほんの一握りで、多くの方はミュージシャンとして周囲に認められてバンド以外の音楽仕事をしながら、バンドもやるというスタイルでした。それが現実解なのだろうと思います。

 

 

<音楽はじめ、自分のやりたいことを実現するには>

音楽に限らず、自分のやりたいことがお金にならない、という悩みを持つ方は多いと思います。私もその一人です(笑)。

 

津田さん自身も、津田さんがやりたい政治メディア「ポリタス」は赤字と話されていました。一回だけトヨタがスポンサーについたときはなんとか黒字だったようですが。でも津田さんはメルマガはじめ、それ以外の仕事で得た収入があるからなんとかやっていけているとのことでした。

 

他の仕事で稼いだお金で、やりたいことに投資する考えは目新しいものではありません。企業でも事業の多角化の際には同様にやります。また今はクラウドファンディングでパトロンを募集して資金調達に成功している事例もたくさん出てきました。

 

Awesome City Club、クラウドファンディングシングルを作りたい!

http://camp-fire.jp/projects/view/2774

 

 

若手の事例。ベテランの方も含めて成功事例、失敗事例もたくさんあるので興味ある方は調べてください。あとはくるりがnoteを使ってファンクラブ形式で運営していることは有名ですよね。また本にも登場するまつきあゆむさんが個人でパトロンを募って運営されている事例もあります。ネットの登場で色んなやり方で資金を集めることができるようになったということです。

 

 

ここで津田さんが大事なことを2点付け加えてくれました。一つは「他の仕事で稼いで、自分の好きな仕事(例えば音楽)をやる場合は、自分のやりたいことと他の仕事に”関連性”を持たすことが大事である」ということ。もう一つは「やりたいことのマネタイズも決してあきらめない」ということです。


アルバイトをしながらバンド活動をやる、という話はどこにでもある話ですが、要はそのアルバイトが音楽に関することであると、そこが自分のやりたいことと繋がっていくということなんだと思います。音楽をやりたい人が音楽と全く関係ないアルバイトをしていても、経済的にはよい場合もあるのでしょうが、音楽家として見た場合に遠回りになるんでしょうね。自分の周りのインディーズバンドでも、音楽スタジオで働きながらバンドをやっている人、CDショップで働きながらバンドを続けている人がたくさんいます。このような例がいいんでしょうね。


この話も、自分に照らしあわせたところ同じでした。

僕がポプシクリップ。でやっている取組みは、別の仕事と重なり合っています。もともとWEBサービスの企画・編集・開発・運営を手掛けていたことが、サイト運営や取材活動などに生きてます。雑誌を作ったことはありませんでしたが、カタログなどの販促物を作ってはいたので、その経験を生かしてあとはひたすら勉強と、出会った人たちの力を借りてなんとか形にしています。

 

パブリシストとしてアーティストのプロモーションする活動も、他の仕事で広報、宣伝、制作の仕事をしていることとつながります。紹介する記事の内容が商品やサービスなのか、アーティストのCDかの違いなんですよね。だからポプシクリップ。で学んだ経験が別の仕事でも生きるし、その逆もあって双方でポジティブ・フィードバックが進むんです。僕の場合は業界が違うので慣習や勝手はかなり違うためとまどいも多いのですが、職種という観点ではリンクしているので、はじめてのこと半分、過去の経験が生かせること半分といったイメージです。

 

マネタイズについて、僕は無償でやる方針なので、そこは少し津田さんの考え方と違います。広告ゼロサイトですしね。ただ、イベントや雑誌など個々のケースではトライしています。会場費はじめアーティストへの謝礼や制作費、印刷費、デザイン費など出費もありますので、やる以上はそこをまわせるようにしないと、健全ではないですし続けられなくなるんです。何より家族に怒られるので(笑)。累計では赤字ですが、イベントも雑誌も個々の案件では赤字が縮小、なくなってきています。自分のやりたいことをやる上で最低限のお金は必要なので、そこはなんとかしたい。

 

例えばイベントをやると数万円から数十万円、雑誌制作でも数十万円は軽く発生します。それを継続的にまわすわけですが、僕やスタッフの人件費をマジメに計算したら赤字なのでマネタイズできたとは到底言えません。でも単純な出費を回収するだけだったらほぼなんとかなってきてはいるので、あと二歩くらいどうにかできたらってとこでしょうか。プロボノベースではトントン、商業ベースで見たら赤字って感じ。商業ベースにする気はさらさらないのですが、考え方としては残り3年で見極めたい課題です。

 

 

<その他講座メモ>

 

・震災後、音楽と社会がどのようにつながるのかを考えるようになった。

・昨年登場したSEALDSはレーベルっぽい。

・なんでも拡大をするのではなく、必要に応じて閉じていくことも大事。右肩あがり、開くことばかりではない。

・政治と音楽はかけ離れていたほうがよかった。今はそうも言ってられなくなってきた現状がある。

・新宿ロフトが40周年、関係者に話を聞いたら最近はライブよりもトークイベントが伸びてきているとのこと。ライブは設備投資がかかるが、トークイベントは不要。

・牧村さんは09年に病気して、一回自分は死んだものとして考えるようになった。父親が早く亡くなったので、父親よりは長く生きたいと思っている。それと現在の社会への違和感みたいなものが牧村さんのガソリンになっている。

・海外と比べると、日本はまだ文化に対する意識が低いのかもしれない。根付いていない。

・今後は異業種交流がキーワード。要はレーベルに外で学んだことを持ち込んで、閉じたコミュニティに反映させていくことが大事。

・自分を規制してしまってはダメ。

・「でもやるんだよ」ということ

 

 

 

<今回の講座を受講して>

 

サバイバル音楽論で話に出たことと、自分の取り組みを照らしあわせてみると、リンクすることがたくさんありました。お二人の本を読んで自分なりにトライしてきたから、ある意味当たり前ではあるのですが、実際にやってみることはやっぱり大事です。

 

 

<これからはパブリシストが求められるんじゃないかと勝手に思う>

 

ポプシクリップ。では、最近になってようやくプロモーションにおいて、ミュージシャンの方々に対し、明確なお役だちができるようになったと考えています。パブリシティから取材を通じてのコミュニケーション、WEBと紙とイベントを連動させた情報発信(わかりやすい事例としては、プレスリリース、インタビュー、イベントといった流れを作るなど)なども小規模ではありますが、無償でできるようになったからです。

 

ポプシクリップ。をやる以前のファンの立場でできたことは、友達にいいバンドを教えたり、ライヴに誘うことくらいでした。それと比べると今ではできることが大分増えました。ポプシクリップ。という冠を作って、あとはひたすら頑張っていただけなのですけど、できる役割が増えるとお声がけしていただけることも多くなりまして、ありがたいなと思います。

 

 

そして一昨年からパブリシスト(の卵)として活動しています。海外のパブリシストに比べると、今僕がやっている仕事の領域は小規模ながら広いと思いますが、著書に出てくる新しいミドルマン、「アーティストとリスナーをつなぐ役割」を担うのは、インディーズ領域において、僕はマネージャーよりもパブリシストだと考えています。

 

 

小規模のインディーズバンドがチームを組む際に必要な役割とは何でしょうか?

 

まずマネージャーについては、いらないという声が多いです。何故ならメンバー自身でスケジュールを立てて、いつ制作をして、いつライヴをするのか?といったことはメンバー自身で管理できるからです。もちろんいることで新たな知見が得られるでしょうし、いいアドバイザーにもなるのでいた方がいいと思いますが、予算上優先順位は下がります。

 

次にA&Rやローディーなどについては、これもDIYで活動するバンドからしたら不要です。もちろんいたほうがいいのですが、予算上優先順位は下がります。

 

プロデューサーやディレクター、エンジニアなど作品作りに直接関わるスタッフについては、必要だという意見をたくさん聞きました。制作に関しては妥協したくないのがバンドの常ですし、いい音、いい作品を作るために必要な役割として、求めるバンドは多いです。固定で抱えるスタッフではなく、あくまでスポットでお願いするケースが大半なので、予算上もやりやすいようです。なお経験を積むと自分たちでレコーディングからミックス、マスタリングまでできますので、制作に関するスタッフを減らす方も多いようです。

 

そして制作した作品を世の中に届ける仕事がパブリシストやプロモーターです。これは話を聞くとニーズはそこそこありそうです。作った作品をどうやって売っていけばいいのか、どうやって世の中の人に認知してもらうのか、ファンとのコミュニケーションをどうマネジメントしていくのか、専門知識やノウハウ、人脈が必要なこともあるからです。ただ、これも固定ファンができてしまえば、もしかしたらいらなくなるのかもしれませんが。

 

予算のあるバンドはプロモーターを通じてプロモーションできますが、なかなかその予算が捻出できないバンドも多く、それらにはパブリシストが一番適任かと思います。プロモーターはバンドの魅力を一方的に伝える役割ですが、パブリシストは企業でいう広報活動の要素が大きく、予算を使わずに、もしくは限りなく少額にて、営業的視点や双方向の視点でバンドをサポートするからです。

 

ちなみにプレスリリースを書くことがパブリシストの役割ではありません。それは最低限で、PR全般の戦略から実行、ファンやメディア対応までやるのが本来のパブリシストの役割です。バンドのイメージにあったメディア提案をしたり、記事を書いたり、タイアップを仕掛けたり、一方でリスナーやファンの動向も理解しながら、コミュニケーションをとります。

 

解は一つではないし、バンド個々の事情によって違うので、一概には言えないのですが、当面はポプシクリップ。のスキームを使いながらパブリシストとしてもお手伝いしていきたいと思います。この1年で一定の成果は出せました。あと3年くらいやってみて見極めをしたいですね。もしパブリシストに興味をお持ちの方がいたらぜひ声をかけてください。僕もまだ右往左往しながらやっている状態ですが、何らかのお話はできるかと思います。

 

なお個人的にはパブリシストよりも、先の例にも書いたYさんのような、業界に精通しているアドバイザー、バンドとメディアやレーベル、業界のキーマンと繋げてくれる人はチームにぜひとも加えるべきです。

 

<質疑応答>

 

講座の最後に質疑応答の時間がありました。

 

津田さんに前々から聞いてみたいことを投げかけさせていただきました。

その場で考えこまれ、お返事に少し時間がかかっていたので、ややこしい質問をしてしまったみたいです。すみません。

 

Q:津田さんのガソリン、すなわちモチベーションは何か?

Q:津田さんはフリーランスとして成功しているように見えるがその理由は?

 

・答えになっていないかもしれないが、複数の専門性を持つようにしてきた。

・新規の仕事は、ギャラが安くても必ず引き受けるというマイルールを課してきた。それで学ぶことが多かった。

・自分は成功したとは思ってはいない。ただフリーランスとして生き延びてこれたのには理由があってそれは「危機感」を持っていたこと。フリーランスだと周囲に翻弄される。雑誌やTVなどの仕事も、突然番組が打ち切りになったり、担当者が変わるとそれで仕事が来なくなる厳しい環境。

・周囲にふりまわされるのが嫌だから、メルマガなど自分で直接安定した収入を得られる仕事を作った。

人がいないところで勝負をするようにしてきた。その一つが、IT×音楽といったジャーナリストとしての視点。自分で新しいジャンルを作っていく感じ。

・2,3年おきにジョブ・チェンジを行ってきた。

 

 97年 IT関連のフリーライター

 99年 会社設立、編集プロダクション

 02年 ブログ「音楽配信メモ」

 03年 ジャーナリスト活動スタート

 06年 ナタリー設立

 09年 ツイッター関連の仕事

 11年 有料メルマガ

 13年 政治メディアポリタススタート

 

といった感じで。2、3年先を見据えて行動している。

 

 

他の方からも、ネイティブ・アドや企業をスポンサーにつけて好きなことをやることに関する質疑応答がありましたね。

 

<最後に>

 

今回の講座は、自分のことを改めて見つめ直すいいきっかけになりました。素直にいうと、普段は自分がやっていることの意味や意義をどのように理解し、どのように評価し、次へ繋げていくのかについては、いつも悩んでいます。

 

特に大義名分、モチベーションの維持には自分への納得と周囲への説明・理解がないと続けられなくなってしまうんですよね。お金にしないということが、そこをより顕著にさせます。今は求めてくれる人がいることや、応援してくれる人がいて、その人たちに具体的に役立つことができる喜びがあるから、続けられているので、それがある以上は今後もやっていけたらと思います。

 

一人1レーベル、というかポプシクリップ。という冠のもと、色んなことができるようになったのは大きな成果だとは思っています。そのヒントを与えてくれた「未来型サバイバル音楽論」に、著者のお二人にはとても感謝しています。今後も拡張しながら、取り組んでいくことでファンやミュージシャンをつないでいこうと思います。

 

講座終了後控室で津田さんにご挨拶させていただいたときに、津田さんから「続けることが大事」と話されていたことが、印象的でした。

 

とりとめのない話を、最後までお読みいただきありがとうございました。

頑張ります。

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