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スパゲッティ・バビューン!のアルバムがレーベルとしての転機になった。

──独自のやり方を模索しながらカセット、コンピレーションCDとリリースされたわけですが、その後スパゲッティ・バビューン!のアルバムリリース を手掛けられていますよね。この作品をリリースしたことは、レーベルとしても大きな節目だったのではないでしょうか?

 

ヒグマ 「レーベルをやってはいましたがもともと単独アーティストの作品を手掛けたいと思ったことはなかったんです。じゃあなんで? となると思うのですが それはスパゲッティ・バビューン!と出会ったからなんですよ。当時バビューンは神戸にいたんですが、ちょうど大阪に旅行する機会があったので彼らと会った んですね。話してみたらすごい面白い人達で。そこでカセットを貰って家に帰って聴いたらすごくよかったんです(笑)。彼らも東京でライブをやりたいと思っ ていたところで、僕がイベントをやるからと東京に呼んだんです。当時、関西にはギターポップのシーンがあまりなかったみたいで、こんなにいい音楽をやって いるのになんで知られていないんだろうと思うようになって、それで自分のレーベルでCDを作ってリリースすることで彼らをもっと知ってもらいたいと思った んです」


──バビューンの単独アルバムを作る上で大変だったことがあればお伺いしたいのですが?

 

ヒグマ 「それまでのコンピとは違って一つのアーティストだとアルバム一枚通してそのアーティストの魅力を伝えなければいけないので、どういう曲が入ったらいいのかが大事になってくるんですよね。バビューンの場合は“疾走感のある曲が多いから、ちょっと落ち着けるような曲も間に入れたいよね”、“こういうタイプとああいうタイプの曲があるから、じゃあ少し違った感じの曲も入れてバンドの幅を見せたいよね”など、コンピレーションアルバムとは全く作り方が違ったので大変でした」

 

──アルバムコンセプトについてはどのように考えられたのですか?

 

ヒグマ 「バビューンの場合だと、ファースト・アルバムは それまでのバビューンの活動の集大成的なものにしました。それまでにバビューンが作ってきた曲の中から完成度が高いものを中心に入れたい曲を詰めていくという感じでしたね」

 

──レーベルの立場としては売れそうな曲もあれば、これはマニアックでこれは売れそうもないなと思う曲もあったと思いますがそのジャッジはどうされたのでしょうか?

 

ヒグマ 「もちろん最終的には行いました。けれどもアルバムを作るには曲数も必要だから、まずはできるものを順番にやっていこうという感じでしたね。基本的に素人なので音楽的なアドバイスをバンドに対してすることはできませんから。でも単純な話で自分が好きか嫌いかというのを大切にしていたんですよ。バビューンの場合はそもそも好きな曲が多かったので、そこまで大変ではなかったですね。多分そこでなんか違うなと思ったりすると大変だとは思うんですけどね。もともと単体のアーティストとしてアルバムを作って出しましょう、という人たちは“自分が好き”というのが大前提であるから、彼らから出てくる音楽にズレがあることはほとんどなかったんですよ」

 

──バビューンのCDは売れたんですか(笑)

 

ヒグマ 「おかげさまで結構売れましたね。初期ロットはすぐに無くなって追加でも作ったんですよ。本当にみんなで力を合わせて作ったという感じだったので。自分はレーベルをやっていますけれども、一緒に作る人、という感じでした。バンドメンバーではないですけど、そのバンドを色んな人に聴いてもらうためにお手伝いをする人なので、どうやったらスパゲッティ・バビューン!というバンドをわかってくれるかな? どうやったらみんなに聴いてもらえるかな、というのを考えて作ったんです」

 

──すごくやりがいを持って取り組まれていることがよくわかりました。ただ会社員の給料でレーベル運営して、しかも単独のアルバムをリリースするのは大変じゃないですか? コンピと違って制作費に加えてレコーディングなどの諸経費もたくさんかかると思うのですが?

 

ヒグマ 「まあそこはボーナスを全部突っ込むだけですよね(笑)。当時はまだCDを買ってくれる人がたくさんいたからというのもありますし」

 

──なるほど、わかりやすいですね(笑)。

改めて個人レーベルの果たす役割を考えるのが大事な時期にきている

ヒグマ 「でも今の時代に自主で個人レーベルをやることの意味が何なのかは考えなければいけないと思うんです」


──と言いますと?


ヒグマ 「今の時代ってレーベルをやりやすいのかやりにくいのかよくわからないんですよね。今の人達ってCD買わないじゃないですか? でも数年前まではカタチにすることが嬉しかったし、目に見えるものにすることで買ってくれる人たちもたくさんいたからわかりやすかったんですけど、今レーベルをやるとなったときに、ネットレーベルで配信だけやるのがいいのかは疑問なんですよ。もちろんそれで成功しているレーベルもたくさんあるんだけど、昔から音楽を聴いている人はやっぱりカタチにこだわりを持っている人も多いし、すごく難しいなと」


──時代の流れは配信ですよね。日本はまだこれでもCDは売れてますけど、年代によって大きく変わるじゃないですか? 30代以降はまだCDを買ってくれるけれども20代になったらそもそも買わないという人が一気に増えるんですよ。Youtubeで済ませちゃうから買う習慣がないんです。


ヒグマ 「アルバムなんていらなくて、自分が好きなシングルだけ買うって人も増えていますよね」


──そう、アラカルト方式ってやつですよね。加えてこの夏には定額制音楽ストリーミングサービスが上陸すると言われているので、聴き放題になってますますCDを買う人は減るでしょうね。そうなるとCDは本当にそのバンドが好きな人が買うグッズのような位置づけになるんじゃないかと思うんです。なくなりはしないと思うけど、減るでしょうね。あとはハイレゾなどいい音にこだわりがある人が残ったりアナログが細々と残ったり、といった感じでしょうか?


ヒグマ 「CD全盛の時代にアナログを作るような感じで、今度はCDもそういった位置づけになっていくんじゃないでしょうか?」


──ただリアルの現物って買った時のリアリティが全然違うんですよね。重みが違うというか。


ヒグマ 「そうなんですよ。配信で買った曲ってそのときは聴くけれども、何年も聴き続けるかというとそうでもないじゃないですか?」


──そうですね、配信だといわゆる愛聴盤といったものにはなりづらいと思うんですよ。だから今後は配信は増えていくけれども、CDやレコードなどでモノを作って届けられたほうがリスナーにとって音楽の価値が高まる、マインドシェアが大きくなると考えれば、あとはアーティスト側がどのようなファンを作っていきたいのか、自分たちの音楽をどのようにリスナーに扱ってもらいたいと思うのかによって届け方が変わるんじゃないかなと思いますね。


ヒグマ 「今制作中のバビューンとキャラウェイの新作はCD作ろうと思うんですけど、今後は7インチレーベルもやってみたいなと思っているんです。多分コスト的には厳しいと思うんだけど、7インチでも本当に好きな人はそれで聴いてもらって、普段から聴きたい人はダウンロードコードをつけておけばデジタルでも楽しんでもらえるしね。そうすればモノとしての愛着もあるしいつでも聴けるからいいんじゃないかなあと思うんですよ。結局CDはコストも安いので作ろうと思えばいくらでも作れるじゃないですか? それよりもモノとしてある程度数が限られていて愛蔵してもらえるような作品を届けたいなと思うんですよね」


──ところで今の時代個人レーベルの果たす役割って何だと思いますか? 単体のアーティストの場合はバンドの自主レーベルでいいんじゃないかと。実際に若手ミュージシャンのバンドには自主レーベルでCDを作って流通だけ外の会社に頼んでいるケースも多いですしね。コンピレーションアルバムはそのレーベルがキュレーターとなって出すことに編集価値があるのでいいと思うんですけど。またメジャーレーベルだったら色んなメディアを含めたプロモーション力があるから、ミュージシャン側もそこに期待をするわけですけれども・・・。


ヒグマ 「いや全くその通りだと思いますよ。別に特別なノウハウがあるわけでもないですしね。ただこれまでは楽曲を作る人と制作をする人が分担していたほうがいい面があったんですよ。制作にもそれなりの人脈やノウハウが必要だし、レーベル自体の持つ価値というのもあったからで。今はインターネットを使えばほぼ全てのことをアーティストでもできる環境が整っているじゃないですか? だから単純にその制作業務を面倒だと思うかどうかだけだと思うんですよね。だからアーティスト側が自分で出したいとか、他のレーベルから出したいというのがあればそれはそれでいいと思うんです。その上で僕に手伝えることがあれば手伝いますよっていうスタンスなので」


──やっぱりそうなんですね。


ヒグマ 「あとはレーベルを盛り上げていくんだったら新しいバンドを発掘してきて、紹介することを続けることが一つの役割になるんじゃないかとは思いますね。それとさっきも話したように7インチアナログのように音楽を大切にしてくれる人達に届けるというのもありだと思っています。そのほかにはPOPS Paradeのように定期的に開催されているイベントで固定客もついている場合は、レーベルとしてやる価値はあると思うんです。固定ファンもそうだし宣伝効果がある媒体を持っていることは一つの価値ですよね」

          

 

 

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