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HARCO『ゴマサバと夕顔と空心菜』発売記念インタヴュー

今、HARCOは第二の全盛期を迎えていると言っていいかもしれない。

 

だが、HARCOこと青木慶則はやや謙虚気味に言う、「“coa時代”がピークだったんで…」。いやしかし、果たして本当にそうだろうか。もちろん、ミニ・アルバム3部作をcoaから出していた00年代半ばに、HARCO流の自作自演セルフ・プロデュース・スタイルを完成させた意味は小さくない。ポップ・ミュージックという枠組みの中でまるで音遊びをするかのように自由にメロディやリズムを組み合わせ、それを一つの完成形にまでつなげたあの時代のHARCOは確かに音楽家として研ぎすまされていたと言える。筆者が初めてHARCOに会ったのはナチュラルファンデーションからリリースされたシングルでのことだが、その頃に比べても当時のHARCOは技術的にも精神的にも大人になった、そんな印象だった。  

 

あれから約10年経った現在のHARCOは、その域さえも通過し、さらにのびやかに、さらに闊達にポップスと向き合っている。生活の中に音楽がある、という言い方はあまりにもありふれているが、実際に自宅にスタジオをもうけ、時間を気にせず音を出すことができるようになったという今のHARCOの制作環境はまさに生活と音楽とを無理なく密着させている好例だろう。そんな環境の元で作られたのがニュー・アルバム『ゴマサバと夕顔と空心菜』だ。前作『Lamp&Stool』からなぜ5年も空いたのか、についてはインタヴューを読んでもらうとして、いずれにせよ、ここには人としてリラックスして音楽生活を送れるようになった一人の男性としての素直な感情が自然と投影されている。

 

今年40歳を迎えるHARCOに本音を聞いた。

 

インタヴュー・文 岡村詩野

撮影 山崎ゆり

企画・構成 黒須 誠

MUSIC VIDEO

HARCO作品

HARCO ゴマサバと夕顔と空心菜

HARCO

ゴマサバと夕顔と空心菜

2015年4月22日リリース

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HARCO Lamp&Stool

HARCO

Lamp&Stool

2010年08月25日発売

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HARCO Portable Tunes2

HARCO

Portable Tunes 2 -for kids&family-

2015年6月3日リリース

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LIVE INFO

アルバムリリース記念・東名阪バンドツアー『ゴマサバと空心菜と雲呑と烏龍茶』

 

2015年6月05日(金)大 阪・Music Club JANUS 

18:30 Open / 19:30 Start Special Guest:杉瀬陽子

 

2015年6月07日(日)名古屋・TOKUZO 

17:00 Open / 18:00 Start Special Guest:杉瀬陽子

 

2015年6月13日(土)東 京・吉祥寺Star Pine's Cafe 

17:00 Open / 18:00 Start 

 

 

■バンドメンバー

HARCO[vo,piano,etc]

伊藤健太[bass]

石本大介[guitar]

榊原大祐[drums]

 

詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。

やっぱり締め切りがないと書けないんですよね。

──まず、ジャケットのアートワークの話から聞きたいのですが、今回、ラオスの町の風景を撮影した写真が全編で使用されていますね。これには何かコンセプトがあったのですか?

 

HARCO 「これは、ここ最近の僕の作品のデザインまわりを担当してくれているオグロエリさんがラオスに3ヶ月くらい滞在しているっていうことで、じゃあ、僕もそこに飛んでいって合流して、一緒に撮影もしてもらったら早いかなって思って。東南アジアには興味があったんですけど、ちゃんと行ったことがなかったからいい機会でもあったんですよね」

 

──今回のアルバムの内容ともシンクロしていた?

 

HARCO 「撮影の時点で9割5分くらいはレコーディング作業も終わっていたんですけど、夏っぽい曲が多かったんで、ラオスのイメージにも合ってるかなあって(笑)。1曲目のタイトル曲とかはなんとなくアジアっぽいし……」

 

──青木くん自身はどのくらい滞在していたのですか?

 

HARCO 「ラオスに4日間、ベトナムに3日間ですね。ベトナムは完全な一人旅で、ゆっくりと時間を過ごせたんで考えごともできて良かったです。今後どうしようかとか何をやりたいだろうかっていうようなことも頭の中で整理できたし……でも、実は今回のアルバムを作る前に少しスランプみたいになっちゃって」

 

──アルバムの作業に入ったのはいつ頃から?

 

HARCO 「2013年後半から本格的に…でしたね。それまでも曲作り期間をもうけていたんですけど、なかなか調子があがらなくて、途中で作業が止まっちゃったりして。これじゃいかんと思って、2013年にマンスリー・ワンマン・ライヴというのを企画してスタートさせたんです。8月から11月にかけて、5、60人くらいの小さなところだったんですけど、必ず毎月新曲を2曲発表します、とみんなに宣言して。4ヶ月連続だったので全部で8曲できたんですね。そこからエンジンがかかってきたんです。やっぱり締め切りがないと書けないんですよね。“僕は締め切りがある方が燃えるよ!”って毎回スタッフに言ってるんですけど、“できた時に聴かせてくれたらいいから”って、いつも(笑)。それじゃダメだから、もうツイッターとかで有言実行して。でも、それがいい結果を生んだので良かったですよ」

 

──その時に出来た8曲が今回のアルバムに収録されている、と。

 

HARCO 「いや、結局そこからは2曲、8月に披露した[ゴマサバと夕顔と空心菜]と11月に出来た[I don't like]。そのあと本当に調子があがるまで、もう少し時間がかかりました」

 

──毎月2曲ずつ4ヶ月って簡単に言うけれど、結構しんどくなかったですか? 青木くんのデモ曲って割と完成度が高いみたいだから…。

 

HARCO 「そうなんですよ。僕はリズムもアレンジも演奏もほとんど完成に近い状態でデモを用意して、それをバンド・メンバーに渡してやってもらう…というやり方をいつもしているので、毎月2曲となると確かにそれは大変なんですけど、でも宣言しちゃうとやれちゃうというか、やらなきゃいけなくなるから、結果的にこれで良かったと思ってます。10曲入りのアルバムを作るのにいつも30曲くらい作って、20曲はお蔵に入れちゃうんですよ。今回も結局、お蔵に入ったのってすごく多かったですね。とにかく、創作の調子があがるのに時間がかかる。体があったまったら曲は一気に出来るんです。立ち上がるのに時間がかかっちゃうんですよ。今回のアルバムの制作段階では、曲が出来てもスタッフからダメ出しが出たり、自分でも納得いかなかったりする時期が長かったですね」

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