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川本真琴リマスター盤発売記念インタヴュー

シンガーソングライターの川本真琴さんが1997年のデビューアルバム『川本真琴』と2001年のセカンドアルバム『gobbledygook』、2作品のリマスター盤を7月16日に同時リリースした。川本真琴さんといえば、96年のメジャーデビュー後、「愛の才能」や「1/2」など次々とヒット曲をリリースしファーストアルバムがミリオンセラーを記録、90年代後半のガール・ポップブームを作ったアーティストとして記憶しているファンも多いだろう。また最近では神聖かまってちゃんとのコラボレーションや地上波へのTV出演でも記憶に新しい。

 

今回の作品は川本真琴さん自らが積極的にリマスタリング作業、監修に立ち会ったほか、ソニー・ミュージックエンタテインメントがブルーレイディスクの製造技術を投入し開発した高音質CD「Blu-spec CD2※」仕様を採用しており、より原音に忠実な作品として仕上がっている。

 

また特筆すべきこととして初回限定特典として封入されている書き下ろしエッセイが挙げられる。これは今回のリマスター盤リリースに向けて新たに制作されたもので、これまであまり語られることのなかった様々なエピソード、周囲からの期待や制作へのプレッシャー、孤独感など、川本さんが自らの文章で当時のことを赤裸々に綴っている。個人的な話で恐縮だが、筆者もこのエッセイを読んだときには、大変目頭が熱くなったし、不思議なことにその後毎日リマスター盤を聴くようになった。それはエッセイと生まれ変わった音を通じて川本真琴さんの作品が、これまで以上に身近に感じられるようになったからとしか言いようがない。

 

この度編集部では川本さんにメールインタヴューを行いリマスター盤を中心に、デビュー当時のお話やセカンドアルバム以降の音楽活動についても少しお話を伺った。本インタヴューを通じて川本さんに触れていただき、少しでも彼女の作品に興味を持っていただけたらこんなに嬉しいことはない。

 

最後になりますが本記事制作にあたり、ご多忙の中川本真琴さんをはじめご協力いただいたご関係の皆様に改めて御礼申し上げます。

 

※「Blu-spec CD2」は株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの商標です

 

取材・文 黒須 誠/編集部

 

川本真琴 最新作

川本真琴

川本真琴

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2014年7月16日リリース

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川本真琴

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2014年7月16日リリース

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今回のリマスタリングにより綺麗に歴史がまとまった感じで嬉しいです。

──ソニー時代のファーストアルバム『川本真琴』、セカンドアルバム『gobbledygookリマスター盤の発売おめでとうございます。まずは今の気持ちをお聞かせください。

 

川本真琴(VoG) 「ソニー時代の作品は最近の作品と分けて考えられがちですが、今回のリマスタリングにより綺麗に歴史がまとまった感じで個人的に嬉しいです。こういうことって、なかなか人為的には出来ないかもと思っていたので、よかったなと思ってます」

 

──今回リマスター盤をリリースすることになったきっかけは何ですか?

 

川本 「Blu-specCD2 という新しいCD規格で再発したいと現ソニーの担当者さんから2年前くらいにオファーがありました。そして去年96k 24bitのハイレゾ規格でリマスタリングをしてみたら? とこれは当時のソニーの担当ディレクターに薦められたこともあり、最新のソフトの環境や新しい機材に対応できるものを残すのは大切かもと思ったからです

 

──当時、デビューが決まった時のことを覚えていたら教えてください。

 

川本 「ソニーSD制作部のコンベンションライブがデビューのきっかけになったのですが、オーディションという感じではなく、スタッフの皆さんも自由な雰囲気で、何か面白いから東京行ってみよう(駄目なら帰ろう)と思っていました。そしたら、しっかりした手順でソニーのレコードデビューが決まって、自分でも「歌手??」って舞い上がっていました。お金がなかったので公衆電話代もなく、親や友達と連絡できませんでした。デビューしてTVに出たとたん、親や親戚から急に連絡があり、それまで自分でバンドをやっていたり上京して貧困だったときは無対応だったのになぁ~とちょっと思いました。でも、元気だったのでぜんぜんさみしくなかったです。SD制作部と離れるのがさみしかったです」

女子や例えば妊婦さんにも聞けるような気持ちいい音にできるよう、と考えてました。

──川本さん自らが監修してリマスタリングされたと伺いましたが、これは川本さんのご希望だったのですか?

 

川本 「今回は(現場に)行こうと思いました。1st、2nd、共に当時も立ち会いに行っていたんですが、制作の終わりというのは非常に疲れていて(リマスタリングは通常一番最後に行われる作業です)、だいたいはディレクターとマスタリングの田中三一さん※にまかせていました。私が何か言わなくても、既に素晴らしいと思ったので、下手に口出すのはやめてました。今回は、田中三一さんと密に相談しながら、細かく音を聞く作業をしましたね。私なりのコンセプトがあったので、それを伝え、コンセプトに沿いつつ良い音である事を大切にしてやっていきました」

 

※田中三一さんはJUDY AND MARYやレベッカ、佐野元春さんなど数多の作品のマスタリングを担当してきた名匠と呼ばれるエンジニア。

 

──リマスタリングはいつ頃どこで行われたのでしょうか? またリマスタリング時の印象的な出来事などはありますか?

 

川本 「渋谷の Bernie Grundman (バーニー・グランドマン)で行われました。当時マスタリングをしていただいた田中三一さんの現在のスタジオです。居心地のよい場所で、機材も揃っていて、興味津々でした。今年初めからやる予定でしたが、忙しい時期を避けて、じっくりやれる5月にしました。(スタジオでは)最初にアイスカフェオレが出てくるんですが、これが美味しくて! マスタリングしながらいただくのが最高なんですよ」

 

──過去の作品を再度現代の音で甦らせることに抵抗などはありませんでしたか?

 

川本 「96k 24bit って、本当にいい音になるのかな?と少し不安でした。実際やってみて、そこにある機材を使ってどう面白く作っていくか、ということが大事なんですよね」

 

──リマスタリングにあたり、『川本真琴』、『gobbledygook』それぞれの作品について目指した音像をお聞かせください。

 

川本 「女子や例えば妊婦さんにも聞けるような気持ちいい音にできるよう、と考えてました。広がり感はなくさないようにしました。向こうに「柵」がないものにしたかったんです。だから今回のものは、ほっとできるような要素が前よりあると思います。私は音はクラシックを基本に考えています。三一さんは、みんなが聞いて面白いものをよく知っている方で、機材も選び抜かれていて、新旧問わずいいものを出してきてくれるので心強かったですね。途中でいくつか方向性を迷った曲があったので、予定より1日多く作業させていただき、しっかり最後までやれました。スタジオに行く前に大滝詠一さんの「A LONG VACATION」を聴いてました。いいよね~って。30th Anniversary 盤を聴いていたんですが、大滝さんは”アナログ盤の音に近づけたかった”と。この音が私は好きで。今回のも、結果的にそちらに近づけたかったのだと思います。旧版との比較でしか話せないのですが」

 

──私も当時買ったオリジナルアルバムとリマスター盤聴き比べをしたのですが、まず一つ一つの音がクリアになり、目の前で聞いているかのような、といったら大袈裟ですけれども、解像度、リアリティが上がっていることに驚きました。一言で表すと「音が凄く良くなった!」と。例えば「1/2」ではイントロのギターのカッティングの粒がよりくっきり聞こえました。そして何といっても全体的に音がふくよかになっていますよね。わかりやすいところだとAメロ以降のベースの一つ一つの音がより丸く膨らみが出ており、曲全体を包み込むグルーヴも増していました。それでありつつも優しさを感じたんです

 

川本 「ありがとうございます!そう言っていただけると、やろうとしていた事が表現出来てるんだなと思います。なんかすごいうれしいです!」

 

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