20年の時を超えたポップチューン。PANDA 1/2「フリージアとショコラ 2012」@渋谷O-nest 2012.2.10 Fri.

PANDA 1/2

男の僕がこんなことを書くのはとても恥ずかしいが、ギターポップに恋をしてから15年たった今の自分をふりかえると、未だに僕はフリッパーズ・ギターが大好きだ。彼らの音楽が多大な影響を与えたことは誰もが認めるとは思うけど、20年前をリアルタイムで体験できなかったフォロワーとしては、やっぱり悔しいというか残念というか・・・本当に彼らは存在したのかとか、よくもわるくも妄想ばかり膨らんでいる状態がずっと続いている。もちろん日々彼らの音楽を聴いているわけだから、彼らが存在したというのは当たり前なんだろうけど、やっぱり生で、ライヴを見ていない自分としてはどこかリアリティに欠けてしまうのが否めない。

 

僕が彼らの曲で一番好きなのが「Camera! Camera! Camera!」のギターポップバージョンでこのシングルCDを探すのは本当に苦労した。何件も数ヶ月かけてまわって、京都の中古屋で見つけたときは飛び跳ねるように嬉しかったことを今でも覚えている。イントロからサビ、エンディングまでキャッチーなこの歌の中で、特に僕はサビで「カーメラのなーか」と音を伸ばしながら微妙な抑揚をつけて切り出す瞬間が好きで、その瞬間は本当に時間がとまり周囲の風景が変わってしまう、何百回聴いてもそのエヴァーグリーンな風景が見えてくる。まいってしまう、ドキドキしてしまう。自分で書いていても気持ち悪いくらいにね。それは彼らが自分にないものをすべて持っているから、お洒落でかっこよくてどこかクールで・・・ある意味それは嫉妬なのかもしれない。

 

PANDA 1/2 が好きになったのは本当にその音楽性。それは聴いたらすぐにわかる。彼らはいわゆる渋谷系の音楽とりわけ、小沢さん、小山田さんの音楽が好きなんだろうなあというのがそのまま出ている。もちろんちゃんとPANDAなりの味付けをして、オリジナリティを加えてだ。この日のライヴもどこかで聞いたことあるようなタイトル(笑)の曲目が並んでおり、定番で少し中華風の雰囲気もある「上海は夜の7時」で一気に会場のボルテージをあげ、続いて音源化はされていないがライヴでは定番の「untitled melody」をしっとりと歌い上げる。普段はジェームズと藤岡みなみの漫才トークがはじまるわけだが、この日は珍しくジェームズはだんまりを決めて、ターンテーブルの上でくるくる回っていただけだったのは少し寂しかったが、それをポジティブに捉えるならば演奏に集中したかったということの表れかもしれない(多分絶対に違うけど)。

 

Twitterなどで予告していたように、本当に(笑)新曲の披露もあった。曲名は「恋と月夜と線香花火」で、サビでは「会いたい人がいる」と何度もリフレインをしていたのが印象に残った。といっても切ない音楽では決してなく、明るくポップなラブソングだから元気が出てくるのが不思議だ。誰が歌詞を書いたのかはわからないけど、それはまだ20代前半の、元気で明るい藤岡みなみのイメージとにも重なって聞けたのは偶然ではないだろう。その後は「中華街ウキウキ通り」でまたテンションをあげていったわけだが、会場では多くのパンダのぬいぐるみが、リズムに合わせて一緒に飛び跳ねていたのは言うまでもない、これは彼らのライヴでのお約束ってやつで、見ていて本当に楽しいのだ。会場が一体となっている感覚が味わえるのが魅力である。

 

さて今回のライヴで問題なのはこの後だ。MCで藤岡みなみが「ここで、大好きな曲を歌います、カラオケっぽくなっちゃうかもしれないけど」 といって歌い始めたのが、なんとロリポップ・ソニックの「Papa,Boy,and I」だった。ロリポップ・ソニックとはフリッパーズ・ギターの前進バンドであり、当然僕も見たことはないのだが名前だけは知っていた。この曲はのちに「クラウディー」として発表、音源化されているのだが、それをロリポップ・ソニックの方で歌うもんだからテンションが挙がらないわけがない。正直呆気にとられたというのが本音であり、でもすごく嬉しくて、と同時にどれだけ彼らはフリッパーズ・ギターが好きなんだろうとその想いも強く感じたのだった。最後の曲は「夏をぶっとばせ」。冬なのに・・・と自らMCで笑いながら歌う。これまた会場みんなが手をふりあげながら盛り上げたところで、本編は終了。

 

 

そして・・・その時事件は起こった。

 

アンコールの歓声があがり、再びメンバーが登場。「今日は本当にありがとうございました」と御礼を言いながら最後にはじめた曲のイントロは、なんと僕がこの15年間何百回と繰り返し聴き続けてきたあのイントロのギターのメロディ、わからないわけがない、最初の一瞬ですぐにわかった、「Camera! Camera! Camera!」だったのだ。あまりの出来事に僕は呆然とした、いつか生で聴いてみたいと思っていたあの曲をPANDA 1/2が見事に再現してくれたのだ。しかも藤岡みなみの歌い方はCDの音源にかなり近くて、サビの入り方、音の伸ばし方、リズムのとり方なども本当によくできていた。彼女も相当のファンで聴きこんでいたのがよくわかる。あまりの嬉しさに僕は泣きながらも一生懸命ステージを見ていた。全パートをくいいるかのように耳をすませながら、一音一音、キーボードのアレンジの入れ方、ギターのフレーズ、ドラムのリズムを必死で追いかけていた。(あえて言うならばギターがもう1本欲しかった)そして1番を終えて、そのまま彼らの一番有名な歌である「PANDA! PANDA! PANDA!」へと続いていったのだ。

 

よく音楽が受け継がれるという話を聞くけれど自分にとってはそういうのは頭でわかっていても体験したことはなかった。今回20年という長い月日がたつ中で、音楽が脈々流れていく現場に出会えることができたのは本当に幸運であったし、嬉しいものだった。僕にとってこの日の出来事は二度と忘れることはないよう。記憶の一ページに深く刻んでおくつもりだ。

 

 

 

 

setlist

 1.上海の夜の7時
 2.untitled melody (未音源化曲。ここではtetrapletrap版で記載)
 3.恋と月夜と線香花火 (新曲:会いたい人がいる~)
 4.中華街ウキウキ通り
 5.Papa,Boy,and I (ロリポップソニックのカバー)
 6.夏をぶっとばせ

 

encore

 7.Camera! Camera! Camera!~PANDA! PANDA! PANDA!

  (Flipper's Guitarのカバーからのスペシャルメドレー)