先日日比谷公園で開催されたグローバルフェスタで購入した、藤岡みなみさんが書かれた本「シャプラニール流 人生を変える働き方(Amazon.co.jp)」を読んだ。
この本は「働くって何だろう?」「自分はどう在りたいのだろうか?」というテーマについてじっくりと考えるきっかけをくれた。そして自分が取り組んでいることについてこれからも一生懸命やっていきたいと思ったし、背中を押していただいたような、そんな気持ちになっている。まずをもって藤岡さんはじめ本を出された方々に感謝したい。
素直にいい本だと思う。少なくとも今の僕にとってはね。
何かというと、物事を動かすのは「個人の縁」という極めてシンプルであることを再認識できたことだ。
これ以上でもこれ以下でもない。ここに集約されている。
この本では社会人になりたてのフレッシュな藤岡さんが今年40周年を迎えたNGO団体シャプラニールのメンバーと一緒にバングラデシュやネパールに赴き、現地で学び感じたことを旅行記として綴っている。日記調の親しみやすい文章に写真もふんだんに使われているためか、読み物としても面白いし、眺めているだけでも楽しい。そしてただの体験記としてではなく藤岡さんなりに「国際協力」や「働くということ」、もっといえば「生きていくこと」という誰もが避けては通れないであろう重いテーマを等身大の視点で、誰もが身近に感じやすいよう引き寄せながら様々な気づきを与えてくれている。
それは冒頭にある彼女のこんな一言にも表れている。
>お話をいただいたとき、はっきり言って私には無理だと思いました」
>正直言って、「世界を救いたい」と心から思ったことがなかったからです」
すごく素直だなあと思う。かっこつけた部分が全くない。でも飾りっ気のない本音が読み手の私に鋭く突き刺さった。自分にも似たような経験があったことを思いだした。
・・・旅を終えた彼女はこんなことを話している。
>「国際協力」「支援プロジェクト」なんて言葉にしてしまうと具体的にイメージできなかったけれど、現場では好奇心旺盛で涙もろい人たちがそれぞれのグっときた瞬間を信じて想いのバトンをリレーする、人間くさいドラマが繰り広げられていました。
藤岡さんが気づいた「一見難しそうに見えるものでも実は個人の想いやつながりが作っているという事実」に僕はすごく共感している。それについては後述したい。
本書が単に国際協力や活動の紹介だけではなく「働き方」となっているのは、多くの人の手にとってもらいたいというマーケティング視点の発想もあるのだろうと推測するが、その意図をくみ取っていえば、私と同じように会社で働いている方やこれから就職活動をする学生さんの役に立つと思う。特に会社組織で働いている人からみたら、目から鱗が落ちるような新しい気づきが、藤岡みなみさんとシャプラニールを通して得られるのではないか。
またこの本をプロデュースした2025PROJECTの福井さんが、広告会社で働きながら社会貢献活動にも取り組むという、興味深い働き方を実践されており、それらの経験がこの本をただの活動紹介に終わらせず、視野を広げたものに仕上げた理由でもあるのだろう。僕がこの本を買い、こんな長文の感想を書いてしまった一番の理由はその働き方という視点に興味を覚えたからだ。
>「世界を変えるのは、あくまでも個人の個人的な想いであることを確信した」
藤岡さんのこの言葉の意味は、とても考える価値があることだと思う。
特に企業で働いている人にとってはね。
一方、アーティストやフリーランス、自営業など個人で社会と強く関わりを持っている人にとっては目新しいことではないのかもしれないが、本書を読むことで自分を見つめなおすいいきっかけにはなるだろう。
ちなみにこの本には他にも特に企業で働いている人間からすると「はっとさせられるお話」がたくさん出てくる。
シャプラニール事務局長筒井さんのお話を2つ。
>「商談の相手」と捉えるか「これからのパートナー」と捉えるか。その感度や嗅覚の違いなのかもしれません。
この違いはすごく大きい。「仕事だから」という発想ではないということなのだろう。
>「一般的な日本の企業では、感情に流されないことが大切にされますが、NGOには「感情や感覚に素直に生きる」という文化があるのかもしれません。
一般の企業では未来永劫発展することを前提に活動をしている。だから組織としての「再現性」「継続性」が求められるため、一時の感情や感覚で物事を判断することはあまり好まれない。実際そうだったとしても社内の説明資料では誰もが納得するロジックが求められる傾向があり、僕の会社でも同様だからシャプラニールの考え方、働き方は少し羨ましく感じた。
上記のように民間企業で働く自分にとって気になる視点が多々含まれていてそれも面白いと思わせてくれた要素になっている。
人に話せるような大した成果があるわけではないけれど、働き方という観点でいうと、僕も自分なりに色々なトライをしていて今は3つの働き方を実践している。
・会社、Webサイトのディレクター兼編集者、マーケティング担当。
・プロボノ活動、プロジェクト方式で医療福祉系のNPO団体のサポート。
・ライフワーク、音楽情報サイトの企画運営。 etc.
お金をいただいてやっているものもあれば、実費だけいただいてボランティアでやっているもの、完全に手弁当でやっているものまで内容は様々だ。ただどれも一生懸命やっている点は変わらない。
就職氷河期に社会に出たこともあって、どうやったら自分らしく楽しく働けるのか人一倍考え悩んできた。その際自己分析を徹底的にしたおかげで、ある程度充実した日々を送ることができてはいるのだけれど、並行して自分が本当にやりたいことなのか?という自問自答、疑問が頭を離れないでいる。
何故そう思ったかというと、友達や後輩に仕事について尋ねられた時に、○○な理由があるから充実しているといった、理由を探している自分がいることにあるとき気づいたからだった。「自己成長が感じられる」とか「責任ある仕事をまかせてもらえている」といった理由は確かに大事で、それが働くモチベーションに大いに関係していることは否定しないけれども、もっと素直に単純に○○が好きで熱中できる、といったいわば理由も必要もないようなことで説明ができないことにどこか空しさを感じていたのだと思う。
この本で書かれている国際協力とかそんな立派なものではないけれど、最近になって「個人的な想い、個人的なつながりが何かを生み出す」ことについてはその通りだと強く感じるようになった。
長くなるのでこの点は改めて書こうと思うが、僕にとって上記3つの働き方から藤岡さんが書いていることについて共感できることがあったことだけは伝えておきたい。
話を本に戻そう。
この本はシャプラニールというNGO団体の活動の紹介をしながら、僕ら働き手にとって、働くことがどういうことなのか、問いただすきっかけを与えてくれる本だ。タイトルにあるような「人生変える」なんてそんな大袈裟な、小難しいことを考える必要はなく、読んで感じたことがあればそれをメモしてじっくり考える、それだけでいいと思う。
著者の藤岡さんがバングラディシュやネパールで体験した人間臭いドラマを追体験しながら、自分らしい働き方、自分の夢って何だったかな? なんて考えてみるだけで、きっと心動くものがあるだろう。ぜひ手に取って読んでいただければ幸いだ。
この本を読んで藤岡さんはすごくいい経験をされたのだろうなというのが伝わってきた。フレッシュな気持ちで今後もアーティスト活動、タレント活動を頑張ってほしいと思う。僕が一つだけ彼女にアドバイスできることとしたら、プラン・ド・ハップンスタンス理論の実践かな。この本を読む限り、藤岡さんはとても感受性の高い方だと思うしこれをを実践するだけの行動特性が備わっているように思ったから。彼女がこのブログを読んでくれるのかはわからないけど、この理論を実践できれば彼女のなりたい自分に少しは近づきやすくなるんじゃないかなと思う。
最後に一つ御礼を。
この本で藤岡みなみさんが一つの出会いのきっかけを作ってくださった。それはシャプラニールで働いている親友との久しぶりの再会だ。互いに忙しくてなかなか会うことができなかったんだけど、この本の発売がきっかけで、先日のフェスタで会うことができたんだ。藤岡さんにはサイトやイベントでお世話になったわけだけど、まさかこんなところで繋がるとは思ってもいなかった。当日その友達と一緒に藤岡さんにそのお話をしたら大変驚かれていて、この奇妙な関係を楽しそうに笑っていた。
藤岡さんの作ってくださったこの「ご縁」にも感謝しています。
ありがとう。
また一つ不思議な縁を感じることができ、ちょっぴり前向きになることができたポプシクリップ。です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
関連リンク
・シャプラニール流 人生を変える働き方(Amazon.co.jp)