プロボノ形式で音楽業界に貢献できることってないかな。

 

今週は国際プロボノ・ウィークで、日本でも各地でイベントなどが行われているようだ。

 

僕も仕事をしながらプロボノワーカーとしてNPOへのボランティア活動に参加させてもらっている。まだ一年も経ってはいないけれども、プロジェクトに参加し全く未知の分野にてできることがないか試している。またマイペースではあるがボランティアでこのサイトを4年以上運営してきたこともあって、プロボノウィークというこの機会に気になったことを書いてみたい。

 

一般的にプロボノとは社会課題を解決するために、職業スキルを持っている人間がボランティアでその課題解決に力を貸すことをいう。ただ「川のごみ拾いをする」といったボランティア活動と少し毛色が異なるのが、作業そのものというよりも、それらを運営しているNPOなどの組織の体質強化といったような、より手間暇の関わる業務に深く入り込んでサポートをするという点だ。

 

1つのプロジェクトを遂行するのに、市場調査などからはじまり半年から1年とある程度の期間をかけて取り組む。営業資料やホームページを作る、業務プロセスの効率化を考えたり事業方針のアドバイスをするといったいわばコンサル的な役割を担うことが多い。だから空いた時間にちょっと手を貸すよ、といったレベルで行うことは到底できず、一つの仕事/プロジェクトとして真剣に取り組まなければできないボランティアだと思う

 

 

こういった活動は世の中を良くしていくという意味において、今後も増えていくと思われる。

下記のようなメリットがあるからだ。

 

・プロボノ活動を行う参加者

→ 社会貢献をしたいという想いの実現、新たな人の出会い、業務過程を得た自己成長など

 

・プロボノを受け入れるNPO

→ ほぼ無償で、有り余る経営成果を享受することができる(プロジェクトが成功した場合の話)。NPOに多いと言われている組織基盤の強化が図れる

 

・プロボノを派遣する企業

→ 社会貢献活動をしている企業としてのプレゼンスが高まり印象がよくなる。ブランドイメージの向上も図れる可能性があるし、プロボノをやった社員の人的成長が業務に生かされる期待もある

 

 

最近では「ソーシャルグッド」といった言葉も生まれていて、震災以降特に社会をより良くすることへの機運が高まっているような、そんな気がする。他にも長年経済が停滞している中で頑張っても金銭面で報われないならば他に新たなやりがいを見つけたいと考える人が増えていると思われることや、そもそもNPO法ができて15年が経過する中でNPOの組織課題が複雑化、成熟化してきているというのもありそうだ。(ちなみに下記記事によれば、アメリカでは就職したい企業の上位にNPOがランクインしていて社会的にもNPOと一緒に働くことへの価値は高まっているようだ。日本ではまだまだだけどね)

 

>なぜ非営利組織が、就職先としてグーグルやディズニーより人気が高いのか。

http://diamond.jp/articles/-/34669

 

 

 

ちなみにプロボノなんて言うと新しい働き方に聞こえるがそんなに大袈裟なことではなく昔から似たようなことはいくらでもあったと思っている。誰でも好きなことや共感したことなど、自分がいいと思ったことであれば金銭的報酬がなくてもボランティアで仕事をすることってあるんじゃないだろうか?近所のお祭りのお手伝いをする、PTAの仕事をする、とかね。多分今までは自分の知人友人や地域社会といった自分と直接関係のあった関わりに対して当然のようにやっていたことが、プロボノではそれまで何の縁もなかった組織とその先にある人たちのために行うという点が新しいのだろう。あとは一部の外資系企業のように働いている会社がそのような課外活動を推奨したり、情報提供、サポートなどを行うようになってきたという変化や、社会解題を解決するための対象の変化もあるがそれらは実践する上で補助的なものに過ぎないと思う(活動する上では会社や職場の理解は非常に重要だ)。

 

 

僕が関わっている医療系NPOも、音楽業界も元々は全く縁のなかった人たちだ。実際のところやっている側の意識としては相手がNPOかどうかというのもあまり関係なくて、どちらも興味関心があってお役に立ちたいと思ったからボランティアでやっている。幸いなことにどちらも新しい出会いや学びなどがあったから続けられている

 

きっと人材を求めているNPOと、何か世の中に貢献したいという働き手はたくさんいて、例えばサービスグラントという組織があるが、彼らのように仕組みでつなぐ人たちが出てきたことがきっかけになり、ここ数年プロボノという活動が広がってきているのかもしれない。

 

 

ここまで書いていてふと気づいたことがある。実はこのプロボノってNPOだけではなくてインディーズシーンにおける音楽業界でも活かせるのではないか? ということだ。

メジャーと違って多くのインディーズバンドは資金も人材も不足している。アーティスト活動を行うには音楽を作る以外にも、売るためのプロモーションをしたり、イベントグッズを作ったり、ライヴスケジュールを調整したりと多くの付帯業務がある。事務所に所属しているミュージシャンであれば、事務所がそれらを肩代わりしてくれるがそうでないアーティストの多くは自らやるか、知人にスタッフ業務を手伝ってもらいながらやっているのが現実だ。ネットの発達や制作ツールも充実しているので、D.I.Y.でできることも増えてはいるが、スタッフを必要としているミュージシャンは多い。でも資金はないからスタッフに一般的な賃金を払うことはなかなか難しい。だから知人に無償で頼んだり、友達価格でなんとか切り盛りしているといったのが現状だろう。でもそれだとクオリティが落ちることは否めない。

 

例えば新作アルバムをリリースする時などに、プロボノ形式でメンバーを募ってプロジェクト型で新作のプロモーション、ツアーを行うということをやったらどうかと思う。プロモーター、ライター、カメラマン、マネージャー、デザイナー、Web制作者などが集まって一緒にプロモーションをしていくチームを作るのだ。それぞれが本職でやっているわけだから一定程度のクオリティも保てるしね。そういった人材をどこで集めるのか?という課題はあるが、アーティストが自分のホームページでファンに向かって一緒に作っていかないかと声をかけてみるのが一番だと思う。意外と一緒に作り上げていきたいと思うリスナーはいるのではないだろうか?もちろんプロジェクトリーダーには業界のことがわかるそれなりの人材をそろえなければいけないだろうけどね。

 

 

あとアーティストとNPOで働く人には共通点がある。 どちらも理念、想いが強い人たちであるということと、マネジメントなど一般業務があまり得意ではない人達が多いということだ。そういった点からしても民間企業の働き手が参加する余地は多分にある気がする。

 

 


最後にプロボノ活動をしている中で気になったことを。

職業スキルを無償提供する、それは一歩間違えば労働価値の低下につながるのでは?自分を安く売ることにつながらないか?という懸念だ。無償でやることが決していいとは思わない。時間をかけて働く以上労働に対する正当な対価を求めるのは当然だと思うし、一回無償にしてしまうとその後有償にするのは大変だしね。あくまで報酬を得る仕事をしているから、ボランティアでのプロボノ仕事もできるわけであって、後者だけだったら生活をすることができないんだよね。

 

僕の場合はミッションに共感するのが前提の上で、無償で働いてもそれ以上に得られるもの、新しい人達との出会い、夢の実現、喜んでもらえる、スキルアップ、といったものがあるからやっているんだろうな、というのが文章を書きながら思ったことだ。正直なところ大変ではあるし、手間暇がかかるから安易にオススメはしたくない。でも普段の仕事では得られないもの、面白いものに出会いたい人はプロボノ的な発想で働くというのは選択肢の一つとして考えてもいいと思う。嫌だったらやめたらいいだけのことだしね。

 


今後どのような活動をしていくのかはまだわからないけれども、しばらくはこの発想で色々なことにチャレンジして楽しい人生を送りたいなあと思う。(辛いこともあるけどね)

 

最後まで読んでくださりありがとう。