個人イベンターが少なくなってきた、僕が思う3つの理由。

昨年のイベントの時に作ったオリジナルチケット。こういうのファン視点では大事です。
昨年のイベントの時に作ったオリジナルチケット。こういうのファン視点では大事です。

今は個人イベンターが少なくなってきているらしい。

この前のインタビューで元モナレコ店長のユキさんが話していた。


・ユキさんのインタヴュー



ここでいう個人イベンターというのは、いわゆる30人から多くても1000人規模程度のライヴハウスに企画を持ち込みイベントを行う個人の人を指す。

企画を考えてアーティストのブッキングをして会場を借りてやるわけだが、それを行う人が減ってきたということだ。ユキさんが言うには昔は学生らの持ち込みイベントなどがたくさんあったらしいんだけど、今は年に数えるほどしかないとのことだった。



普通の人が見ているような○○ホールや○○スタジアムとか数千人、数万人が参加するようなイベントではない。イベントというとこれらの規模をイメージする人が僕の周りでも多いんだけど、世の中には数十人から数百人規模のライヴイベントが毎日行われている。これらは業界団体が発行する○○白書などの調査の対象外でもあることが多く、最近ライヴ市場が伸びていると言われる数字にも換算されていない。記憶曖昧だけどあれは200人以上が対象だったかな?



何故減ってきたのか? 
僕が思う幾つかの理由を挙げてみる。


一つ目はアーティスト自身がイベントをたくさん企画するようになったことだ。


以前、ライヴイベントの多くはバンドにとってCDを売るためのプロモーションに位置付けられていた。だから作品作りがメインでライヴはそれほど重視されていなかった。ところがCD不況になるとバンドは作品を作って売るだけでは食べていけないから、自然とライヴをやる回数が増えていった。ライヴとバンドグッズで稼がなければいけなくて他に手段がないからだ。


そうなるとイベンターの出番はなくなっていく。バンドが自分たちで企画するようになると、個人イベンターの存在意義が薄れていく。

そもそも第三者である個人イベンターがいちいち企画書を作ってバンドと交渉するハードルは高い。知らない人のイベントに出ることに比べると、バンド自身が知り合いのバンドに声をかけて、今度一緒にやらない?、とやれば電話一本で済んでしまう。


二つ目はロックフェスイベントの増加だ。


フジロックやサマーソニックに続いて2000年代半ばから全国各地でフェスイベントが行われるようになった。夏の風物詩になるくらい定着している。僕が数えただけでも、30以上ものフェスと名の付くイベントが去年行われていた。


ある程度知名度があるバンド、例えばワンマンライヴで500人くらい呼べるようなバンドであれば、ジャンルにもよるが、大抵はこれら大型のフェスから何かしらのお声がかかるようだ。もしくは新人でも評判のよいバンドや関係者と人脈がある場合なども。ただ大型フェスは事務所やレーベルの力関係によるところもあって、新人でも所属するレーベルの力で出られることはある。


バンドだって誰かわからない個人イベンターの企画よりも、名の通ったイベント、人気のイベントに出たいと思うのが自然だ。認知拡大のメリットもあるしね。これらのフェスは1000人くらいのイベントから20万人を超えるようなものまで大小様々あるが、乱立気味で違いがわかりづらくなってきている。もちろんアイドル、メタルやハードコアなど、特定ジャンルに特化したものは除くが。

これら二点の理由は、言い換えれば個人イベンターの競合相手が増えたということ。

だからイベントのお声がけをしても、他のイベントやそのバンド自身のツアーなどで忙しくて断られてしまう。そのバンドさんにとってよほど魅力がないと。。。地方に遠征できる、いいブッキングである、ギャラがいい、とかとね、出演すべき理由をきちんと作らないといけなくて、その大義のハードル、企画力のハードルが以前よりあがっている。競争相手が増えたらそうなるのは仕方のないことだ。



三つ目は費用だ。

都内のライヴハウスを借りると結構いい値段がする。100人から300人規模の会場の場合、会場費で土日の夜だと10万円~50万円くらいはする。会場費用を払ってアーティストにギャラを払うにはいくら必要か。。。。もちろんお客さんを毎回たくさん呼べれば問題ないわけだが、これが難しい。サラリーマンのお小遣いが3万円〜5万円程度であることを考えると個人でやるには少々大変な金額だ。



僕も最近まで知らなかったのだけど、インディーズだとギャラの出ないイベントもたくさんある。アマチュアに多いが厳しいものだと出演者に出演料をとるイベントもザラだ。僕は自分も少しバンドをやってるから、バンドの大変さが多少なりともわかるので、そんなことはしないけどね。これは集客責任を誰が持つべきなのか、どう考えるかによるので正しいものはないが。。イベンター次第だ。


先の金額はホールレンタルの場合。チャージバックとなると大分異なる。チャージバックとはいわゆる成果報酬型でチケット代の一部をバンドに戻すというものだ。たいていが売上枚数に応じてよくなっていく。安いところだと25%から30%くらい。アーティスト想いの会場だと70%も返してくれるところもある。ただチャージバックで使わせてくれる会場は定期イベントをやるか、お店スタッフとの関係がよっぽどよくないと、土日開催の場合は結構難しい。チャージバックは赤字にならないメリットがあるのでイベンターとしては有難いが、その場合は会場側にリスクを負ってもらうことにもなることは理解しないといけない。


ちなみに最近増えているカフェライヴでは100%、全額アーティストに戻してくれるところもある。何故ならカフェの場合飲食で利益を出せるため、チケット代まで求めないところもあるのだ。そのようなお店が全国各地にある。店主も音楽好きでミュージシャンへの理解がある場合が多い。出演者が集客をしてくれて、飲食を出せるわけだから双方にとってwinwinだ。ただし音響設備などはライヴハウスのようにきちんと設計されたものではないところが大半なのだが、僕の経験上はほとんど気にはならなかった。

余談だけど、平日の夜は集客が難しいし、イベントをする人が少なめということもあって、会場費用については相談にのってくれるところが多い。僕も色んな会場の人に、平日にやってくれたら安くしますからやってくださいよ~とよく言われる。特に月曜日と水曜日は埋まりにくいようで、まけてもらいやすい。まあ僕のイベントの主なお客さんは30代が多くて土日でないと来れない人が多いもんだから平日にやるのは躊躇ってしまうのだけど。

会場費用にギャラや準備の手間暇、集客活動などを考えると、正直200人~300人以上呼べるイベントでないと、割には合わないだろう。いや500人くらいのイベントでようやくまともな利益(普通の会社員なみの収入という意味で)が出るのではないか? そんなこともあって名もないインディーズバンドによるイベントは、まず成り立たないため、個人がライヴイベントをやりたくてもなかなかできないのだ。


なお3番目の理由については、会場費用だけが問題というわけではない。今も昔も相応の費用がかかることに変わりはないしね。色んな人に聞くと個人イベンターのやるイベントに以前よりも集客できなくなってきているのが問題なのである(大型フェスや著名バンド主催のイベントなどは反対に動員数が増えている)。

それは企画力の問題もあるかもしれないが、音楽以外の娯楽が増えていることや、ライヴに足を運ぶ世代、90年代のCD絶頂期の世代が今は子育て、ファミリー世代になり、足を運びづらい環境になっていること、メインの10代・20代は今の30代・40代が若かった当時よりも人口は少なく、音楽にお金を払わないことなど。


少し前に音楽情報サイトのCINRAさんやOTOTOYさんも数百人規模のイベントを不定期ながらやっていたものの、最近はやっていない。これも先に挙げた理由が絡んでいるのではないかと思う。ビジネスメリットがなかなか見出せないのだろう。


この点は時間があるときにもう少し数値的な根拠を調べてみたいが、集客が昔より難しくなり、イベントをやってもペイしづらくなってきたから、イベントをやる人が減ってきた。昔に比べたらネットのおかげでやりやすくなった面もあるんだけど、それでもね。。。




最後に僕自身はやっぱり今後もできる限りイベントを続けていきたいと考えている。色んなバンドと出会いたいし、紹介をしていきたいからだ。それにイベントはそれ自身がコンテンツにもなるからね。イベントはイベントだけでは終わらない。やってて楽しいし、ライヴのときのお客さんとバンドの盛り上がりは本当にたまらないのだ。


そんなわけで今年1回目のイベントが、3月中旬の週末のお昼に決まりました。メルマガ会員先行予約も近々やるので、よかったらサイト右上から登録してくれると嬉しいな。



最後まで読んでくれてありがとうございます。


Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...