いいバンドは自らビジョンを考えた上で優秀なスタッフやチームを持っている話。改めて津田大介さんの本とAwesome City CLUB とShiggy Jr.の記事を読んで感じたこと。

写真と記事内容は遠回しも微妙に関係があります。
写真と記事内容は遠回しも微妙に関係があります。

 

久々のMK日記です。

 

これから書くことは、現場で働かれている人から見たら、当然のことなのかもしれません。でも外の世界にいた僕にはイマイチよくわからなかったことで、中に飛び込んでようやく肌感覚で理解できるようになってきた、といったところです。あくまでファンに音楽を届けるためのやり方の一つ、選択肢の一つとして考えたらいいのではないかと思っています。

 

 

 

 

このバンドいい曲書くのになんかもったいないなあと思ったことはありませんか? また何故あのバンドは音楽はイマイチなのにこんなに売れているんだろう? と疑問を持ったことは?

 

 

 

色んなバンドさんのお話を聞く中でその大きな違いは、マーケットはもちろんなのですが、バンドを支えるチーム、すなわちバンドとファンをつなぐスタッフ、つまりニュー・ミドルマンというかエージェントの役割が非常に大事だなと思うようになりました。

 

 

ニュー・ミドルマンとは、メディアアクティビストの津田大介さんと日本最高齢のベテランプロデューサー牧村憲一さんの著書「未来型サバイバル音楽論」の中で書かれていた言葉。今後DIYのアーティストが増えていき、インターネットやソーシャルメディアが台頭する中で、バンドとファンの間をとりもち、必要な様々な役割・機能を提供できるスタッフのこと。レーベルやレコード会社の代わりにバンドを支えられる優秀なスタッフです。

 

 

ーーー以下上記記事の引用

未来型レーベルを作るためには、一人何役もできる素養を身につけることです。例えば、こういう言い方をする人がいます。「お前は、ミュージシャンになれな かったから、音楽ジャーナリストになったのだろう」。けれども今は、ジャーナリストもミュージシャンもできた方がいいんです。 つまり、最終的に全部のことを理解した上で、人と組むということは大賛成です。一人が未来型レーベルを作るために全部のノウハウを持つ。次に全部のノウハウを隅から隅までやっていたら疲れてしまうので、その中で得意ジャンルを各々交換すればいいじゃないですか。(P50) 


 …そのときに「こういうものなんです」と自分の言葉で伝えられて、アーティストと情報を共有できるような関係をファンとの間に築ければ、それが新しいエー ジェント、ニュー・ミドルマンになっていけるのかな、という気がしています。(P54)
ーーーココマデ

 

特に「最終的に全部のことを理解した上で、人と組むということは大賛成」という点がポイントかなと思います。

 

 

資本や人脈が少ないなかで、成果を出せる、お役に立てるようになるには、自ら考えて動ける企画提案型のニュー・ミドルマンの存在が不可欠です。インターネットやテクノロジーの進化で個人でも色んなことができる現代だからこその役割なのかもしれません。

 

 

調べてみると、インディペンデントで活動しているバンドの多くはそもそもスタッフがいないことも多いのですが、いる場合でもライヴの時のお手伝いスタッフだけの場合がほとんどです。そしてそのスタッフの多くはメンバーの知人や友人で、人間関係ありきでスタッフを頼んでいるのですが、ここが実はバンドが発展していく上で課題になっているのではないかと最近感じるようになりました。

 

 

そのスタッフが例えばメチャクチャセールストークが上手くて毎回物販を完売してしまうとか、音楽経験が豊富でメンバーのリハーサルの音の良し悪しを判断をすることができるとか、マネージャーとしてメンバーのケアができるとか、そもそもそのバンドに熱意と愛情を持っていて勉強熱心であるなど、一定の成果を出せる・コミットメントを持っているが故に頼んでいるのであればいいのですが、そうでない場合も多いんですよね。「友達だから」という理由だけでスタッフを選び頼んでしまっている。


受け身のスタッフさんの場合物販でも座って待っているだけだったりします。優秀なスタッフはちゃんとファンに売り込みます。グッズを売って利益を稼ぐことがバンドにとって大切であることをきちんと理解しているからです。意識が全然違うんですよね。

 

 

そもそもバンドにとっては、お手伝いをしてくれるだけでも願ったり叶ったりなので、無理は言えないとは思います。それもわかります。僕もやっていたので…ただそこから大きく飛躍していくことを考えたら、スタッフ選びやチームの作り方にも一工夫いるのではないかと思うのです。一定程度成功しているバンドは音楽もさることながらスタッフやチームの作り方もうまいんですよね。

 

 

ベテランではサカナクションやTHE NOVEMBERSがアーティスト発でチームを作り取り組んでいることが以前話題になりました。

 

 

■これからも新しい体験ができるようなことにチャレンジしていきたい(What's in WEB)

http://www.whatsin.jp/feature/sakanaction-sakanactionlive/3

 

 

■THE NOVEMBERSの音楽マーケティング

http://www.popsicleclip.com/2014/11/08/diary/

 

 

 

また最近の若手では今年になってメジャーデビューしたAwesome City ClubやShiggy Jr.が挙げられます。どちらもバンド結成してから僅か2年3年でデビューにこぎつけたのですが、そこには支えるスタッフやメンバーの役割も大きく作用しています。

 

 

Awesomeの場合は、メンバー自身がビジョンを持ちそれぞれ役割を持って取り組んでいることをメンバーが語っていました。

 

 

■大注目株Awesome City Clubが語る、新しい時代のバンド論(CINRA.NET)

http://www.cinra.net/interview/201504-awesomecityclub 

 

 

ーーー以下上記記事の引用

マツザカ: テレビとかラジオにたくさん出ることが大事なのではなくて、アイデア勝負で仕掛けていくことが、単純にプロモーションの仕方として面白いと思うんですよね。海外のアーティストみたいに、「今面白いからこれをやる」っていうフットワークの軽さとタイム感で僕らも動きたいなと思っています。

 

atagi:いいクリエイティブチームって、ひとつになって面白いことをやろうとしてる感じがお客さんにも伝わるんですよね。音楽もそれ以外も、「ACCがやることは面白いよね」って思われることが、僕らの目指したいところです。

ーーーココマデ

 

 

彼らの場合は自分たちのやりたいことを実現するためのスタッフ、パートナーをメジャーというフィールドで選んだんですよね。また彼らは、密かにベテランのパブリシストのもとで、プロモーションや宣伝についても勉強をしていました。ビジョンを持っているからこそ、貪欲にどういうやり方がいいのかを、知識経験のある人たちに教えてもらいながら、一生懸命考えていたんですね。その行動力は大したものです。



Shiggy Jr.はもともと下北沢モナレコードのオーディションから出てきたバンドです。そこで元店長のYさんと出会い、一気に世界を広げました。Yさんはベテランであちこちに人脈をお持ちですし、制作現場から流通まで全てに渡って豊富な経験を持っている方。まさにニュー・ミドルマンといもいうべき存在の方です。彼らはその人の力も借りながら勉強してきたんですよね。Yさんを通じて多くのミュージシャンやメディアの方とも繋がっていったわけで、そういう人をスタッフに入れていたことが彼らの飛躍に大きく貢献していたことは間違いないと思うのです。Yさんがいなかったらデビューは数年遅れていたんじゃないかな。

 


少し前からメジャーの話はあったそうなのですが、全部自分たちで一度経験してから、ということで、昨年は自分たちでCD作って、 自主企画イベントなどもやりきってその上で次のステップとしてメジャーの道を選んだわけで、彼らなりのビジョンが先にあって、そしてどういった人たちをスタッフにして組むかを考えてやっているのです。周りがそうやっているからではなく、自分たちで実践経験を積みながら一歩一歩進んでいるところが、津田さんが書かれていることとも繋がっていて共感が持てますよね。詳しくは下記原田さんのエントリーを参照。

 

■メジャーでやるということ。(Shiggy Jr.blog)

http://lineblog.me/shiggyjr/archives/25268103.html

 

 

ーーー以下上記記事の引用

実は2枚目出す以前からメジャーレコード会社から話は色々あったのです、でもちゃんと自分達で音楽に関わる作業をちゃんと理解した上でメジャーや事務所と関わらないと良くないとのことで先延ばしにしてたんです。
ブッキングの事とか物販もそうだしライブ会場を押さえる事とかジャケットのデザインの交渉とかpvのこととかそういう作業をバンドで分担してとにかくやってみて大変な事が多くて、、、
いよいよ手が回らなくなるタイミングでレコード会社と事務所を決めました。

実際に入ってみてやっていること自体は自分達でやっていた時と変わらないなって。ただ、たくさんの人が動いてくれていて、それのプロで全然動きが違うし本当に素晴らしいクオリティーのものを出してくるんです。

なるほどこれが事務所とレコード会社かと。
ーーーココマデ

 

とはいえ自分たちのビジョンを達成するために、その選択肢としてメジャーと契約していいチームを作るということは誰にでもできることではないし、正直出会い、運の要素も大きいと思うんです。まあここに書いた2組はどちらもカッコよくていい音楽を作っているから遅かれ早かれメジャーという選択肢が作れたと思いますけどね。あとどちらのバンドも売れたい!と強く思っているしね。

 

 

 

 

話は戻りますが、その中でインディーズ活動を選んでいる多くのバンドにとっては、メジャーまではいかなくても、自分たちのビジョンを達成、成果を出していくために優秀なスタッフを仲間にすることが大事なのではないかと。

 

 

例えば私の知っているAというベテランミュージシャンは、デビューした時からKというマネージャーをスタッフに迎えています。その出会いは偶然だったのかもしれませんが、そのマネージャーは、多くの著名ミュージシャンをも担当しているベテランで、レーベルなどとの交渉から制作した楽曲の良し悪しの判断、物販スタッフからチラシ配りまで何でもやるんですよね。フットワークもすごく軽くて、多くのミュージシャンから愛されているマネージャーです。Aさんがメジャーに行ったときも、インディーに戻ったときも変わらず一緒にサポートしてきました。そんな方と出合えたからこそ、Aさんは今も音楽を続けていられるんだと思います。自立していて仕事もできるスタッフ、そんな人を仲間にできるかどうかはとても大事なことではないかと思うのです。

 

なので友達だからスタッフをお願いする、のではなくて、期待する役割が担えるからスタッフになってもらう、というスタンスを大事にして、それで自分たちなりのチームを作っていくのが今の時代の一つのやり方なのでしょうね。優秀なスタッフを集めて起業するベンチャー企業となんか似ていますね。

 

もしスキルのあるスタッフへのニーズが増加するのとしたら、今後ニュー・ミドルマン、パブリシスト、音楽エージェントといった役割を果たす個人が、欧米同様に日本でも身近になってくるかもしれません。



ただ色々やってみて思うのは、パプリシストだけ、プロモーターだけ、ブッキングエージェントだけといった個々の専門家よりもバンド全体を見渡して、ファンに音楽を届けられるストーリーを総合的に考えられるゼネラリストの方が、多くのインディーバンドには求められる感覚があります。もちろん局所的ニーズは絶対にあると思うんですけどね。こればっかりは色々やりながらトライですね。

 

 


 

振りかえって自分はどうなのか?

 

私自身も今一生懸命勉強しながら、昨年より数組のインディーズバンドのお手伝いをしているのですが、まだまだだなと落ち込む日々を送っています。とはいえ単に知り合いだから手伝うのではなくて、自分の果たせる役割が見えてきたから、なんです。だから最低限のところはクリアできているとは思います。その結果、最近パブリシストの卵として一定の成果を出すこともできました。正直そこで成果出せなかったら首になるんじゃないかとヒヤヒヤしていたので、緊張感持ってやれたのがよかったかな…。もっとできただろうなと思う部分もあって、反省もたくさん。。。

 

今後はさらに勉強しながら、YさんKさんに負けないような成果を出せる人間になりたいなと思います。別の仕事で培った様々なビジネス経験とポプシクリップ。を通じてかなり多岐に渡る仕事ができるようになってきたので、その経験を掛け合わせながら貢献していけたら最高じゃないかと。

 

いいバンドにはいいスタッフやチームがいることを改めて振り返りながら、自己反省も兼ねて書いてみました。自分がいいチームメンバーでいられるようにこれからも自己研鑽と成果に拘って頑張りたいと思います。

 

 

そんでもってようやくミックスが終わりそうと、お手伝いしているバンドから連絡がありました。今後は、バンドのコンセプト作りから、どうやって立ち上げていくか、などなどを考えていきます。いいミドルマンになれるかな…頑張ります。ジャンルとしてはソウルが好きな方にはきっと響きそう。楽しみにしていてください。というかバンド名すら決まっていないバンドですが、応援してほしいです。詳細はまたブログでも紹介していくと思うので。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 


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