前回に続いて、今回もオリジナルのインディーズバンドが活動していく上で何が必要なのか考えてみたい。
前回書いたように、②のプロモーション・販売業務と⑤の契約管理業務は高度な専門性が求められる役割であって、結成したばかりのバンドにとってはなかなかハードルが高い業務内容であることから、まずはこの2点をサポートできるようになることがバンドとそれを支えるスタッフとのWINWINな関係になるのだと思う。そして⑤というのは①②が先で作品がたくさん売れてから主に重要になる業務であることを考えると②のプロモーション・販売業務、いかにして知ってもらうかがより重要だと思う。
一つ目はやはり言うまでもなくレーベルや事務所との契約だ。
メジャーのレコード会社ほどの力はなくても、中堅で一定程度のPRをきちんとしてくれるインディーズレーベル会社と契約をするのが合理的だ。(できるかどうかは別にして)個人的に聞いている限りでは例えばPヴァインさん、カクバリズムさん、モナレコードさん、残響レコードさん、オフィスオーガスタさんなどはアーティストのことを丁寧に考えてくれるという評判をよく聞くのだけれど、そういった会社と一緒に取り組めたらいいのではないかと思う。詳細は分からないけど、例えば最近勢いのある「森は生きている」さんや「吉田ヨウヘイグループ」さんはPヴァインと契約をしているし、新人ながら夏フェスにも参加できているのは、これは僕の勝手な予測だけどレーベルの力も一定程度あるのではないかと思われる。
二つ目はPRなどの業務を代行してくれたり、相談にのってくれる音楽エージェントの存在だ。
代表の永田さんのお話を以前聞くことがあったのだけど、インディーズバンドにとってはとても便利なサービスだと感じた。⑤の課題である契約書のレビューもしてくれるのは便利だろう。著書である『次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル』、4年前にこのブログでも紹介した『ネットで自分の曲を売る方法』にも永田さんは執筆をされていたのだけど、役に立つ内容が満載だったので困っている人は相談をしてみたらどうかと思う。相談料は無料らしいので。
三つ目は影響力を持つインフルエンサーを巻き込んでいくやり方、広報活動が挙げられる。著名なDJや音楽ライターなど、個人でも一定程度の影響力を持っている人は点在しており、それらの方々に取り上げてもらうのだ。これはPR手法の一つで予算のないバンドが知名度をあげるには昔から行われている一般的な方法なので、やってみる価値は大いにある。ただ闇雲にやってもうまくはいかないので、アプローチはよく考えて行わなければいけないけど。。。ちなみにポプシクリップ。がこうして今も細々と続いているのは広報活動によるところが大きかったりする。
他にもネットを活用した認知アップ手法など、いくつか手段はあるのだけど、キリがないのでいったんここでやめておく。こういったプロモーション活動をバンドメンバーだけでやるにはやっぱり限界があるということで、それなりの外部の方の力を借りたほうがいいと思われることだ。
最後に僕が最近考えていることを。
もともと自分は単に音楽が好きなだけの人で、本来音楽業界に何らかのコミットをする必要がある立場ではなく、一消費者・受動者として音楽を聴いてきただけなのだが、色々思うところあって、今はサイトの企画運営をしたり、イベントやったり、自分でもバンドをやったりと、生活の中に占める音楽の割合をここ数年高めてきた。並行して音楽業界、というよりもレコード会社やミュージシャンをとりまく環境が経済的にネガティヴな方向に進んでいるのを傍から見ていて、何故かもどかしくも感じていて、自分なりに何ができるのかを考え、実践してきたのがこのサイトだったりする。このサイトは僕と音楽・ミュージシャンをつなぐ場といったらいいかな。
「ミュージシャンに貢献する」という、どこにでもあるような綺麗ごとのようなことを、自分のできる範囲でまずは始める、それがこのサイトをスタートしたきっかけでもあった。
5年前、最初に僕がしたことは「市場・現場を知る」ということだった。そのために何をしたかというと具体的には「ライヴに足を運んで現場を徹底的に見てミュージシャンとお話しをする」ということと「本を読む」ことだった。それまでただのファンとしてライヴが好きで足しげく通っていたのだけれども、その場をただライヴを楽しむだけで終わらせずに、一工夫して色々な方に雑談交えてお話を聞くようにすることでネットワークと知見を高める場に変えた。ライヴハウスには色々な職業の方が来るので、そこで実際に色んな人の話を聞くことで学んだことは非常に大きかった。
そしてたくさん本を読んだ。例えばその一つは音楽現場の仕事に携わっているインタヴュー本で、ミュージシャン、ライター、スタジオエンジニア、ライヴハウス経営者、音楽プロデューサー、レコードショップ販売員、イベンター、DJ、PAなど音楽に関わるありとあらゆる職業の方の現場の状況が載っていてそこでイメージを掴むことができたし、音楽一つとっても色々な仕事があることを知った。またライヴハウスを運営している方の本を読む中でビジネスモデルや収支構造などを知ることができたし、イベントの作り方に関する本ではそのやり方や現場でのポイントなどを学ぶことができた。あとは本ではないけど業界ニュースなどもそれなりに追いかけている。ただ業界動向を知っていても、自分の行動とはほとんど関係ないので傾向を見る程度に留めているけれども。
そのほかたまたま仕事で野外フェスに少しばかり関わることがあったので、イベントを企画した広告代理店の人に話を聞いたりしながら、話の進め方、企画して
協賛スポンサーを募って・・・といったやり方なども教えてもらった。ただ、これらは一定規模以上の会社組織でないとできないことなので、直接役に立ったことは今のところはない。今後どこかで活かせたらいいなとは思っているけど。
当初の目的である「どうやったら貢献できるか」という点において、僕が最近考えていることはアーティストが必要としている様々な役割、機能を自らも提供できる存在に自分をレベルアップさせていくことではないかということだ。パートナーと言ったら大袈裟だけど、お役に立てる存在になるには、自分のレベルを上げていく必要があって、それをいわゆるオウンド・メディアの形で展開できないかと考えているのだ。
これはバンドの相談にのって様々なサービスを提供する音楽エージェントとも概念は違う気がする。音楽エージェントはバンドとメディア、バンドと弁護士、バンドと制作会社などの間に入って相談にのり、解決策を提示する役割で、いわばコンサルティングサービスとマッチングサービスに価値を持たせてそこでフィーを得ている。でも僕の勝手な理想で言えば、それだけだと結果責任を持ちづらいのではないかと危惧している。バンドとエージェントとの契約にもよるのだろうけど。成果報酬型を採用しても最低限の費用はいただくというのがエージェントの原則だからだ。中には成果が出なかったらフィーはゼロでもいいというエージェントは稀にいるかもしれないけど、全体がマイナスだったら自分も赤字をかぶるというエージェントはいるだろうか?
そもそもエージェントの役割への対価はマッチングやコンサルティングにあるわけなので、そこまでする必要はない。
バンドメンバーと同じ立場で盛り上げていくのであれば、エージェントの役割を持ちながら自らPR活動やイベントの企画制作まで一貫してお手伝いすることで、よりバンドにコミットした形で、一緒にリスクをとりながらやっていくほうが自分の性に合っている気がする。言い換えると音楽エージェント兼マネージャー兼プロモーターといった形かもしれない。まあどういう組み合わせにするかはバンドさん次第だろうから、細かく決める必要はないけれど、一緒の目線で活動していくというのはそういうことじゃないかなと思う。そしてそれをオウンドメディア、つまり自分のメディアも活用しながら展開していくことでより効率的に進められるのではないかなと、漠然と考えている。ちなみにこのやり方だとリスクが高いので、別の仕事なりで収入を得ることなどしてリスク分散をするのは前提にはなるけど。まあ何が正解というのはないし、スタンスの問題だけだけど。
ただこればかりはやってみないとわからないので、縁もあって昨年からベテランバンドと新人バンドとの取組みをスタートさせていただいた。早速成果も出始めているけれども、まだまだなので、もう少し見えてきたらこの場で報告したいと思う。
こういうことっていくら考えても結局は行動してみないとわからないので、まずは動きながら考えていくつもり。時代によって概念とか求められるものはどんどん変わるしね。成果が出なかったらまた別のやり方も考えなければいけないし。
そういう意味では皆さんご存知だと思うけど、MUSICMAN-NETさんのインタヴュー記事がとても勉強になるので、隅々まで読んだらいいと思う。考え方、ビジネスモデル、業界動向などどれも役に立つけど個人的に特に勉強になったのをいくつか。
あとバンド活動のスタイルとしては曽我部恵一さん、山田稔明さん、スカートさんの活動スタイルが生き残っていく上でとてもよいヒントをくれると思います。
とにかく、行動あるのみ!
最後までお読みいただきありがとうございます。
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