こんにちは、ポプシクリップ。です。
今日は僕も取り組んでいる「パラレルプロボノワーカー」について少し書いてみたいと思います。
新年になったし、何か新しいことにチャレンジしたい人がいたら、参考になればと思いまして。
1.1枚目の名刺
ポプシクリップ。のメンバーは普段音楽業界とは別のところで会社員またはフリーランスで働いています。僕のように宣伝プロモーションの仕事で、例えばCMソングで使うといったような、または音楽配信サイトの運営で音楽と関わるような仕事をしていたメンバーもいれば、普段はエンジニアだったり印刷業界で働いていて音楽とはあまり関係ない仕事をしている人もいたり、基本は違う業界で働いていて、各自の勤務先でキャリアを積んでいます。
僕の場合は、BtoC向けのマーケティング(マスからデジタルマーケティングまで一通り)や宣伝プロモーション、商品やサービスの企画開発運営、あとWebディレクターなど多岐に渡る仕事をしています。それが1枚目の名刺のキャリアです。
2.2枚目の名刺
次に音楽関連の業務で培ってきたキャリアです。キャリアと呼んでいいのかは意見が分かれるのかもしれませんが、継続的かつステップアップしていて、実績があればキャリアと呼んで差し支えないと考えています。
僕の場合は編集、執筆、コンテンツ企画制作、イベント企画制作、パブリシスト業務などがそれにあたります(マネージャー業務はまだ目立った成果を出せていないので割愛)。これが2枚目の名刺のキャリアとなります。
3.プロボノワーカー
僕らはこの2枚目の名刺、すなわち音楽の業務についてはプロボノワーカーとしてやっています。プロボノというのは、職業スキルを生かした公共善、要はボランティア精神ですね。プロボノについてはサービスグラントのホームページも参考になりますので、記しておきます。
サービスグラント
僕の場合、音楽が好きで、そこに関わる方々に貢献したいという想いがありやっています。1枚目の名刺で生計を立てているので、2枚目の名刺では収入を得る必要がありません。そんなこともあって原則無償で働いています。
一般的なボランティアとプロボノの違いを、厳密には定義できないのですが、ボランティアの多くはメイン業務を行う人がいてその補助、お手伝い的な位置付けでやっていることが多いと思うのですが、プロボノは職業スキルを生かすということが前提であり通常の仕事と同レベルの主要業務を行うので、責任が発生しますし、成果にもコミットをします。
そして1枚目の名刺と2枚目の名刺を同時に行い並行して職務上のキャリアを積むのが、パラレルプロボノワーカーとなります。
4.パラレルプロボノワーカーのメリットは?
経験からすると下記が挙げられます。
・会社の枠にとらわれず自由に好きな仕事ができる
→1枚目の名刺で生活は担保できているからこそ思いきって好きなことだけに打ちこめるのはメリットです。
・本業の職務経験がベースにあるので、一定のクオリティと成果を出しやすい。
・1枚目と2枚目の両方の経験が相互にポジティブにフィードバックしてくるので、該当スキルをより深めることができる。
→僕の場合ビジネス経験としては特にプロモーション、広報業務でできる仕事の幅が広がりました。またそれまで対企業の仕事しかしたことがなかったのですが、対個人の仕事をすることで学べることもたくさんありました。
・1枚目の名刺と2枚目の名刺で異なるスキル、キャリアを積む場合は、スキルのかけあわせでオンリーワンの強みにできます。
→例えば、デジタルマーケティング×編集記者×Webディレクターと3つのスキルをかけあわせると、コンテンツの企画制作現場では大変重宝されます。
・アート、音楽、医療など、通常予算がつきにくい、マーケットが小さいタイプの仕事もできる。
→僕が一時期関わっていた小児医療のプロボノでは国からの予算がほとんど出ず、寄付金のみが頼りの事業でした。それでも取り組みの社会的意義は大きく、数百人の人がプロボノワーカーとして働いていました。
・興味のある仕事をトライアルでやることができる。
→いきなりの転職ではリスクが高くてもまずはプロボノで無報酬で働くことで、自分が本当にやりたいことであるのかどうか、試すことができます。周りでもまずプロボノでやって適性を試してから転職する方も見受けられます。
僕の場合は尊敬するミュージシャンと継続して一緒にやらせてもらっていることが、何よりのモチベーションになっていますし、そこで実績を積めたことで他からもお声がかかるようになりました。だから頑張ってやってよかったなと思います。何よりもかけがえのない出会いに恵まれたのは人生の宝物です。会社の仕事だけであれば、今の豊かな(けど大変な、笑)音楽人生はありませんでした。
5.パラレルプロボノワーカーのデメリットは?
僕自身はそれほどデメリットとは感じてはいないんですが、下記が挙げられます。
・2枚目の名刺の仕事に割り当てられる物理的時間が少ないので、専業の方と比べてキャリア成長が遅い
→これはどうしようもないことです。そもそも1枚目の名刺だけでもいいのに、あえて2枚目の名刺を持とうとしているわけですから覚悟は必要です。その代わり専業の人には持てない視野の広さと1枚目の名刺で得ているスキルや経験があるわけですから、プラスに考えましょう。
・上記に関連して時間がかかるので、それに耐えられるだけの、本当にやりたいことでないと続かない。
→1枚目の名刺の仕事にさらに追加してやるわけですから、強いモチベーションがないと続きません。精神的にも体力的にも。
6.パラレルプロボノワーカーをやってみて。
自分のやりたいことを探すキッカケを作り、その先の夢を叶える、視野を広げる現実解としては有効だと思います。現に私は夢をたくさん叶えました。1つの夢を叶えたら次の夢ができてそれを叶え続けています。すごく楽しくて仕方ありません。
その代わりめちゃくちゃハードな生活なので、タフでないと続けるのが難しいのが正直なところです。また私の会社はプロボノを勧めている会社なのですが、それでも「お金にもならないのに、何故そんなに一生懸命やってるの?
ボランティアにしてはやりすぎでは?」と言ったような話もたくさんあり、なかなか周囲の理解を得るのは大変かもしれません。正直なところ、やった人にしかその価値がなかなか伝わらないんですね。私の職場は50人位なのですが、プロボノ経験者は私以外には2人しかいません。
今回はパラレルプロボノワーカーがどんなものなのか簡単に書いてみました。今後もこれまでの経験で感じたことを書いていこうと思うのでよろしくお願いします。
〈プロフィール〉
東京都在住の音楽ファン。
2000年代よりコンシューマー向けの商品やサービスなどの企画開発、プレ・マーケティングからアフターマーケティングまで幅広い活動に従事。会社仕事の経験を生かして2009年4月にポップスリスナー向けの音楽情報サイト「ポプシクリップ。」をプロボノ形式でスタート。小規模ながらWeb「ポプシクリップ。」、イベント「POPS
Parade」、インディーポップZINE「ポプシクリップ。マガジン」、レーベル「miobell records」を主宰。近年は「ポプシクリップ。 パブリシストチーム」として、インディーズミュージシャンのパブリシストとしてもサポートを行う。
また2000年より当時日本ではまだ珍しかったスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって提唱された「プランドハップンスタンス」理論をいち早く自己のキャリア形成に取り入れ実践、やりたい仕事、好きな仕事を得るための環境作りに生かしている。現在パラレルプロボノワーカー8年目。