Tプロの3枚の原盤

こんにちは、ポプシクリップ。@ミオベルレコードです。

 


Tプロのレコードの制作もいよいよ大詰めです。
先日乃木坂にあるソニーミュージックスタジオで最期の検聴、すなわち試聴会をやってきました。

3枚のテストプレス盤を聴き比べて実際にプレスする原盤を決める作業。
通常はカッティングしたらそのままプレスして終わりなので、テストプレス盤、すなわち原盤は一枚しか作りません。(何千枚とプレスする場合は別ですけど)


しかし今回は初めての海外カッティングということもあって、カッティング違いの原盤を3個も作ったんです(^^)。詳しく書くとメタルメッキしたスタンパーを3個作ったってこと。。。
コストも3倍かかるので、普通はやりませんけどね。まあ行きがかり上そうなっちゃって。東洋化成さんにはホント、何度も無理いってご迷惑をおかけしました。3回も原盤作ることってかなり珍しいそうです。

余談だけどソニーさんが今年レコードの自社生産を29年ぶりに復活させました。その第一弾作品がビリー・ジョエルの「ニューヨーク52番街」、大瀧詠一作品集Vol.3「夢で逢えたら」の2タイトルなんだけど、その際も3パターンのテスト盤を作り、比較試聴して決めたとAV Watchの記事に書かれていました

この記事にも出てくるカッティング時とプレス時でまた音が少し異なる話がまさに今回僕が苦戦していたところで。なんかとても親近感が湧いたので紹介しておきます(^^)。


さて本題に戻るのですが、3枚の違いは音圧の違いやアナログの特性に合わせた作り込みの違いで。比較して聴いたら結構違います。あとレコードって独特の歪みが出るんですけどそのバランスをどこでとるのかも悩みました。リファレンスとなるMC型カートリッジのD103で判断するべきか多くの方が使っているMM型で判断するべきか。。。結果としては、MM型も考慮して3回目に作った原盤に決めました。エンジニアとも同席したメンバーともそれで一致。

またまた余談だけど、レコードレーベルの周辺にはカッティングハウスと担当者名、そしてマトリクス番号というものがあります。そこに今回はA4とB4つまりA面・B面の4回目、という意味で彫られているので、マニアの方はチェックしてみてね。3回目なのにA4なのは、実は3回目にカッティングしたものは原盤=テストプレスまではしなかったから。そのため手元にある3枚の原盤はそれぞれ、A、A2、A4。(ちなみに小沢健二さんの「ある光」のアナログにはA2と書いてありますね)。

CDやDVDはデジタルデータで、どこでプレスしても音は同じなんだけど、レコードはカッティング担当者やそのスタジオの個性が音にダイレクトに反映される属人的なところが残っているのが、面白いところ。ビートルズのような有名アーティストの場合、アメリカ盤、ドイツ盤、イギリス盤とあちこちで作られているので、同じ歌・曲でも作られた国によってレコードの音が異なるんです。イギリスでカッティングするとイギリスっぽい音に、アメリカで作るとアメリカっぽい音になるというのが不思議とある。

そういう意味ではミオベルレコードのこれまでのレコードは日本でカッティングしているから日本らしい音、今回のTプロはイギリスっぽいフレーヴァーが混ざった音ってことなのかな。ほんとかどうかわからないけど(笑)、そんなことも夢想しながら作ってきたレコード原盤もようやく決まり、アートワークももうすぐ完成。なんとか7/29のイベントでの先行発売に間に合いそうです。


リリースがとても楽しみです。

Scene39