スタジオ制作に向いている音楽家とそうでない音楽家がいるかもしれない

 

こんにちは、ポプシクリップ。です。

 

ミュージシャンのお手伝いをするようになって、難しいなと思うことの一つにスタジオとミュージシャンにも相性があるんだなということを感じている。というか納期や期限というものに対する考え方なのかもしれないけど。

 

スタジオは予算の都合上使う時間が限られる。だから事前準備をしっかりとして、スケジュール通りにやらないといけない。職業ミュージシャン・サポートミュージシャンの方はこのあたりをよく心得ていて、レコーディング前にしっかりと詰めてくる。今まで参加してもらった方々は本番では1テイクや2テイクで最高の演奏をして終わる方ばかりだった。

 

多分自分のセルフマネジメントがきちんとできる人には、スタジオはとても合う。そういう性格の人は下調べから準備から、念入りに行ってくるので、録音時の判断も早い。その場で試行錯誤をしたり面白いことをやってもベースができあがった上での話なので、成果も出る。結果いい作品になる。

 

一方で、事前準備が足りずその場であれこれ悩んで試行錯誤する方もいる。これはその人の性格によるところが大きい。そして音楽に正解は多分なくて、どれも正解だからこそ、試行錯誤して着地点を見いだす。そのために時間をかけるのはいいことだと思うし、その試行錯誤の結果が音に反映されるのもいいことだ。90年代までは制作予算も潤沢でメジャーだったらアルバム制作に数千万円の予算をかけることも当たり前だったし。でも個人レーベルだからお金はないに等しい。だから事前に試行錯誤をしてきた上で、いくつかに絞ってそれを録音するんだったらいいんだけど、その場で行き当たりばったりの試行錯誤をはじめて、結局どっちつかずな録音になってしまうとちょっとまずかったりする。

 

何人かのエンジニアさんに尋ねたところ、自分の表現したい音楽が固まっていない状況でスタジオに入られるのが一番困るという。もちろん腕のいいエンジニアはそれらを音楽家の意図をうまく汲み取って、その場で提案をして、いい録音にしてくれたりもするんだけど、でもやっぱりアーティスト側のやりたいことが明確でないと。

 

ぎりぎりまで試す性分の人、マイペースでないと制作ができない人は自宅録音、つまり時間や予算の制約のないなかで、思う存分作るのが向いている。結果納得のいくいい作品が生まれる。時間や予算の制約の中でも、いい作品を作りだすのがプロだと思うけど、インディーズではそのあたりのプロ意識というか、考え方が個人によって大きく異なるから、難しい。

 

以前あるミュージシャンとその話をしたら、「お金が発生する=仕事だったら、仕事には予算と締切があって当然でその中で結果を出すのがプロだよね。それにエンジニアを雇うのもスタジオを使うのもお金が発生しているわけだし、相手もプロとしてやってくれるんだから、自分たちもそういう意識でやらないとね」と。一方で「仕事というよりも趣味でとにかく納得いくまでやりたいんだったら、予算や時間などの制約のない環境でやるしかないよね。それはその音楽家の選択だよ」とのこと。簡単なようですごく難しいなと思う。

 

あとね、慣れしたしんだスタジオでないと、緊張して本領発揮できない人もいる。

一方でどこのスタジオでも、毎回最高のサウンドや歌声でレコーディングできる人もいる。このあたりは経験がものを言うと思うけど、そういった面でも音楽家によって合うスタジオ、合わないスタジオというのがある。

 

それらをミュージシャン毎に見極めて、その人の性格や音楽性に合わせて環境を提案をする。ハードルが高いけど、少しずつ経験を積んで、もっといい感じでできるようになっていきたい。

 

どうしたらいい作品が生まれる環境を提供できるのか・・・試行錯誤は続く。