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高橋徹也 The Endless Summer Interview

ベン・フォールズ・ファイヴに感動して音楽を始めたんです。(リカ)/ビートルズのような”音”が録りたくて。(及川)

──音楽はいつごろから?

 

リカ 「自分で始めたのは22歳のときからですね。小さい頃にピアノをやっていたんですけど2年くらいでやめちゃったし(笑)。音楽を聴くのは好きだったんですけどね。私の場合は社会人になってから目覚めたんですよ。遅いんですよね。早い人は10代からやっていますもんね」

 

──また何故自分でやろうと?

 

リカ 「ターニングポイントが二つあるんです。一つ目は大学三年生のときにアメリカでホームステイをしたときのこと。私は昔からラジオがすごく好きで、学校に通うときはホストファミリーの車でラジオを聴きながら通学していたんです。壮大なトウモロコシ畑の景色の中、ラジオがかかっていたときに“風景と音楽がリンクする瞬間”を何度も感じることがあったんです。そんなことは初めてでした。今まで日本ではそんな体験をしたことがなかったので・・・そこで音楽に対するシンパシーがすごくあがったんです。それから日本に帰って思いついたメロディや言葉をメモするようになったんですよ。ただ、そのあとすぐに音楽活動を始めたわけではなくて、大学卒業後は英語の先生として社会に出るんですけどね」

 

──もう一つは?

 

リカ 「これもラジオがきっかけなんですけど、ベン・フォールズ・ファイヴを聴いたときに感動して、来日ライヴを観に行ったんですよ。そのステージに観てから自分も作りたいと思うようになって始めたんです。昼間は仕事をしながら夜に曲作りをする生活を送るようになりました。独学なんですけどね。当時CDを出すためにはレコード会社からデビューする必要があったので、デモテープを作ってはオーディションに出してということをしていました。そんな生活を3年ほど続けていたんです。この前当時つけていたオーディションノートを見返してみたんですけど、1年目は全滅、全部バツがついていたんです。2年目はサンカクがつきはじめて、3年目にようやくレーベルなどでオーディションの最後まで会える人が増えてきてという感じでした。当時はまだ先生の仕事もしていたので、ミュージシャン活動と先生の仕事、両方やることにOKを出してくれたLD&Kと契約、デビューすることになったんです。20代も後半になっていましたね(笑)」

 

──及川さんは?

 

及川 「僕は親の影響が大きかったんです。父親が60年代の音楽が大好きで、小さい頃からオールディーズをよく聴いていたんですよ。演奏するよりも、ビートルズのような“音”が録りたくて音楽を始めたんですね。高校のころはMTR(マルチ・トラック・レコーダー)を買って自分で打ち込みをやりながら録音していました。宅録派なんです」

 

──リカさん、楽器はピアノだけでしたっけ?

 

リカ 「実はギターも買ったんですよ(笑)。ミスチルの桜井さんのファンで、すごく好きだったから。桜井さんが[CROSS ROAD]で弾いていたあの黒いギターがめちゃくちゃかっこいいなと思って御茶ノ水に買いに行きました」

 

及川 「確かギブソンのJ-180だよね?凄く高いやつ」

 

リカ 「そう、買いました、でも同じものは買えなかったので似ているやつなんですけどね(笑)。でもギターはね・・・挫折しました。頑張って練習したんですけど合わなかったんですよね・・・」

 

及川 「ギターやっていたんだ?」

 

リカ 「いくらやっても楽しめなかったんですよね」

 

──ピアノは楽しかったんですか? さっき小さい頃挫折したって話されていましたけど?

 

リカ 「・・・消去法で(笑)。家にもあったし、ベン・フォールズ・ファイヴにも憧れていたし(笑)。必要に迫られて独学ではじめた感じですね。独学だから楽譜もまともに読めなくて、コードだけで始めたんです。今でも楽譜は危ういですね(笑)」

ちょっとしたフレーズから自分が生きていく上でヒントになるような言葉を、リスナーの方に拾ってもらえるようになりたいんです。(リカ)

──デビュー当初から歌・曲を通して伝えたいことはありましたか?

 

リカ 「私は“なんで? なんで?”と疑問を持つタイプの人間なんです。昔から人間観察が好きだったし。“私はこう思うのに、何故あの人はああ思うんだろう?”と。また私は小説家の向田邦子さんが大好きで、小説の中で生々しい人間関係を描くのが上手なんですよね。文章の書き方も尊敬していて、人間の心理描写をうまく捉えていると思うんです」

 

──人間観察などを通じて感じた“疑問”を表現したい?

 

リカ 「そうですね。ただ、私が単に詞を書くだけだったら、説教臭くなっちゃうからそれをポップソングに乗せて歌ったらどういう化学反応が起きるのか興味があったんです。突き詰めて詞だけ読むとわりと生々しいことを言っているんだけど、ピアノや及ちゃんのアレンジが加わることで、あまり押しつけがましくなく受け止めてもらえるんじゃないかと、そこを目指しているんですよ。薄っぺらい歌詞がついた曲ではなくて、小説というか、文章を読むとお話がしっかりと伝わるような曲にしたいなと思っているんです。ちょっとしたフレーズから自分が生きていく上でヒントになるような言葉をリスナーの方に拾ってもらえるようになりたいんです」

 

──それはまさに「先生」ですね(笑)。

 

リカ 「そうなんですよ、職業病なんだと思いますね(笑)。何かを感じ取ってもらいたいと無意識のうちに思っているんだと思いますね」

 

──詞を読ませていただくとリカさんの場合はストレートな表現が多いと感じました。比喩や暗喩が少ないんですよね。これは意図的ですか?

 

リカ 「いや、無意識ですね」

 

及川 「言われてみたらそうだよね」

 

リカ 「反対に比喩表現が苦手なのかもしれません。“愛しているよ”を“月が綺麗ですね”と表すことができないというか・・・苦手なんですよね。私はロマンチストではないから、比喩表現などをやろうとしてもうまく伝わらない気がしちゃうんですよ」

 

──文学的な表現をしたいとは思わないですか?

 

リカ 「憧れはありますね。ただ、私の場合赤裸々に語っているものが好きなんですよ。本でいうと自伝やエッセイ、ドキュメンタリーとか・・・リアリストなんですよね」

 

及川 「性格が出ているよね(笑)」

 

リカ 「そうかもしれない。ムーミンは好きなんだけど、それ以上に作者であるトーベ・ヤンソンの自伝のほうが好きなんですよ」

 

──それは、わかりやすいですね(笑)。リアリストであるということは、歌詞も経験談が大半でしょうか?

 

リカ 「経験八割、想像二割です。想像の世界を書くことが難しくて・・・身を切り売りしている感じです(笑)」

 

──そうなると最初はよくても段々ネタ切れというか、限界が出てきそうなものですけど?

 

リカ 「そうなんですよね。そういうときはやっぱり体験を膨らませて書きます(笑)。あとは疑似的な主人公を設定して、その人になりきって書くということもやりますね」

 

──あとリカさんの歌詞で一番気になったことは「私」はあっても「ぼく」がなかったことなんです。

 

リカ 「確かに、“ぼく”はほとんど使っていないですね。私の書く歌は主人公が女性だからですね。“ぼく”というフィルターを通した世界ではなくて、等身大の女性が主人公になっているから・・・言われてみると“ぼく”って言葉がそもそもあまり思い浮かばないんですよ」

 

及川 「それはやっぱり、リカちゃん自身が主人公に重なっているんだろうね」

 

リカ 「うん、そうだと思う」

 

──やっぱりリアリストであることが影響しているのでしょうね。余談ですが、性別関係なく「私」を表現したいとき、英詞で「I」を使われるミュージシャンは多いですよ。

 

リカ 「なるほどね。それはいいですね(笑)」

        

 

 

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