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スカート 澤部渡 Call 発売記念インタヴュー

若いときの今しか書けない曲、純度の高い歌というものがあると思うんですよ

──アルバム収録曲についてお伺いします。新曲が中心ですが、12インチアナログでリリースされた『シリウス』からも再収録されていますよね。

 

澤部 「再収録はしているんですけど、バージョンは異なるんですよ。[どうしてこんなに晴れているのに]では元々エレキギターとローズピアノを使っていたのをアコギとアコースティックピアノに変えましたし[回想]は新たに弦を足していますしね。アルバムバージョンと書けばいいんでしょうけど、間違い探しも楽しんでもらえたらと(笑)」

 

──タイトル曲となった「CALL」について少し詳しく教えてください。

 

澤部 「一番核になる曲、特にうまくできたと思う曲なんです。この歌は今までと作り方が違うんですよね。ギターが単音で鳴っているんですけど、スカートってこれまではメロディとコードの関係で曲作りをしていたので、ギターの、コードではなく、単音を積み上げるかたちで作ったことはなかったんです。それが今回自分でもビックリするくらいうまくいったんですよね」

 

──歌詞について何か変化はありましたか?

 

澤部 「スカートの歌詞って抽象的だし、文章の前後の関係すら危ういものが多いんですけど、今回は曲の中で、背景を合わせて作ることはできたと思います。これまでは主題をぼやかす意味でカットイン的に関係のない言葉をいれてみたりすることもあったんですけれど、最近はそういうことをしなくてもよくなりましたね」

 

──歌詞を読んでいると、ところどころに“もどかしさ””憂い“を感じるんです。そこには澤部さんの日常、現実が内包されていると思うんですが、一方で歌詞全体ではリアリティを感じさせないようにしているのは前作までと同様の傾向です。これはやっぱり澤部さんの特長だと思いました。

 

澤部 「あまり現実を持ち込みたくないってのがあるんですけどね(笑)。直接的な言葉で歌うことが今のところできないのでどうしても抽象的になってしまうんです」

 

──抽象的な歌詞のいいところは、シーンを限定しないので耐久性があるということですよね。例えば若年層に人気がある西野カナさんの歌詞はシーンが明確でスマホ世代にはわかりやすいし、情景もすぐに思い浮かぶから共感しやすいと思うんです。一方で、聴く状況、共感するシチュエーションも限定してしまっているところもある。10代だったら共感できるけど40代になったら、共感できないということが起こってしまうし、まるで週刊誌のようにそのときだけ聴かれる作品になってしまう場合もある。音楽は聴く人の状況によって受け取り方も様々なので、抽象的な歌詞のほうが聴き手のシーンを狭めないし世代も超えやすい一方、わかりづらくなったり、歌詞を味わうのに一定の労力が必要になる場合もあります。文学的な歌詞の場合、難解なパズルを解くような気分にすらなりますよね。味わい深いとも言いますが。

 

澤部 「歌謡曲というかそういう意味で時代に寄り添ったポップスがその時々の時代背景を封じ込めて作られたいわば週刊誌の哲学にのっとったものだとすれば、その歌は週刊誌の役割を果たして終わりでもいいと思うんです。ただ、今僕が作っている曲達は少なくとも今すぐに読み捨てられる雑誌になったら困ってしまうんです」

 

──困るというのは?

 

澤部 「若いときの今しか書けない曲、純度の高い歌というものがあると思うんですよ。だからこそ、真摯に音楽に向き合っていい曲を作りたいということでしょうか…」

 

──なるほど、その真摯な想いが耐久性のある音楽を目指す澤部さんのアルバムへの拘りなんですね。

常に思わぬ方向に話が進んだりするのが楽しいですよ

──最近はカーネーションの直枝さんやゴロニャンずでは川本さんや三沢さんなど他のミュージシャンとの交流も広がっていますよね。サイダーの庭以降も増えていると思うんですが?

 

澤部 「ミュージシャンの大事な時間の一つに“雑談”があるって鈴木慶一さんから教わりまして。僕らはよく雑談をするんですけど、それがとても大事で。この前川本さんと話をしていたときにも、川本さんが最近聴いている音楽を教えてもらったんですけど、それがとても刺激になりましたね。他愛もないミュージシャン同士の会話に助けられることが多いんです」

 

──最近は何かはまったことはありますか?

 

澤部 「少し前に時間ができたので映画をたくさん見たんですよ。ダグラス・サークという監督の『僕の彼女はどこ?』という映画が面白かったですね」

 

──『マッドマックス』や『スター・ウォーズ』みたいな超大作も最近ありましたけど?

 

澤部 「『マッドマックス』はこの前知人に言われたので見たんですよ。確かに面白かったんですけど、脚本も映像も音響も全部がフルスロットルで見終わってドッと疲れてしまったんですよ。それよりも余白がある映画の方が好きかもしれません。無理やり作品にこじつけるとするならば(笑)、マスタリングも音圧を全く突っ込んでいないんですよ。一般的なJ-POP作品の場合ってつっこむことが多い、つまり低音から高音まで一様に音圧を高く仕上げられることが多いんですけど、『CALL』はつっこまなかった」

 

──マスタリングはどなたに頼まれたんですか?

 

澤部 「バーニーグランドマンの前田康二さんというベテランの方がやってくれたんです」

 

──それは贅沢ですね。

 

澤部 「そうなんですよ。マスタリングを前田さんにお願いして、例えば結構音をいじられてしまったり、音がパツンパツンになってしまったらどうしようかという不安もあったんです。でもスタジオで前田さんに作品を聴いてもらったら、これだったらつっこまないほうがいいですね、と言ってくれて、気持ちが伝わったなと思いましたね。余白のある優しい音になりました」

 

──インディーズとは思えない贅沢な制作環境だったんですね。さっきも言ったけど実際の音を聴くと、そこまで変わっているわけでもないんですよね。音の抜けがよくなったとは思ったんですけれど、劇的に変わった感じはしなかったんですよ。でもそれだけ澤部さんの音楽の核がしっかりとしているってことだと思う。

 

澤部 「もしかしてイヤホンで聴いていませんか?」

 

──そうですが。

 

澤部 「ぜひスピーカーでいつもより音量を上げて聴いてみてください。そうしたら音の良さがよくわかると思いますよ。イヤフォンやヘッドフォンでもいつもより少し音を大きくして聴いてみると音の良さが際立つはずです」

 

──わかりました、今度試してみますね。最後に読者に伝えたいことがあれば。

 

澤部 「今回のアルバムができて、長年の憑き物がようやく落ちた感じなんです。自分でも今回で一区切りになるんじゃないかと。次は次でこれまでと違ったアプローチで作品を作っていきたいと思っています」

 

──余談ですが、今年はスカートはじめてから10周年だと聞きました。

 

澤部 「そうなんですよ、18歳のときからはじめて10年経ったんですけど、10年前の曲が今でも聴けるってのが嬉しいですね」

 

──10年前、今の姿は想像できましたか?

 

澤部 「いや、まったく。でも常に思わぬ方向に話が進んだりするのが楽しいですよ」

スカート作品

スカート 澤部渡

スカート

CALL

2016年4月20日リリース

Amazon商品ページ

スカート

サイダーの庭

2014年6月4日リリース

Amazon商品ページ


LIVE INFORMATION

『スカート“CALL”発売記念ワンマンライヴ』

【日時】2016年5月27日(金) OPEN:18:30 / START:19:30

【会場】渋谷WWW 
【料金】前売り 3,000円  / 当日 3,500円

【出演】スカート DJ:臼山田洋オーケストラ

【販売】3月26日発売 プレイガイド:ぴあ(Pコード:294-617)/ローソンチケット(Lコード:72442)/e+

 

『スカート“CALL”発売記念ツアー』

【日時】2016年6月17日(金) 会場:心斎橋CONPASS

【日時】2016年6月19日(日) 会場:名古屋VIO

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