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コントラリーパレードが今年(2016年)9月にマキシシングル『そして僕らは大人になる/魔女になりたい』をリリースした。3年ぶりとなった新作は、原点となったデビューアルバム『ファンファーレ』からつながる作品で、作詞作曲を手がけるたなかまゆ自身が、コンパレとは何であったのかを再認識した、記念碑的シングルとなっている。また彼女がこれまでのやり方を一新し、今後のアルバムも見据えて、新たなミュージシャンと新たなやり方で生み出した初作品でもあるし、10年以上もコツコツと音楽を生み出してきた成果であろう、一聴して彼女の作品だとわかる作家性が滲みだしている点も見過ごせない。今回彼女には新作のお話と、この3年間の想いを存分に語ってもらった。

 

インタヴュー・テキスト 黒須 誠

撮影 塙 薫子

 

本記事は2017年1月18日に刊行したポプシクリップ。マガジン第8号に掲載のインタヴュー記事をWEB掲載したものです。

New Album『PARADE』

コントラリーパレード

PARADE

2018年11月14日リリース

下北沢モナレコード予約ページ(店頭・全国通販)

タワーレコード予約ページ

Live Information

POPS Parade vol.22

miobell records「コントラリーパレード New Album Release Party "Parade goes on!"」

【日時】2018年10月27日(土) open 11:45 / start 12:15

【会場】東京・ 渋谷LOFT HEAVEN  http://loft-prj.co.jp/heaven/

【出演】コントラリーパレード(フルバンド編成)/ 杉本清隆(orangenoise shortcut) / you & me together

【料金】アルバム付前売 5,500円(予約者限定特典付き/数量限定)(+1drink)

    前売 3,500円(+1drink) / 当日 3,900円(+1drink)

【予約】メルマガ会員先行予約 9月1日(土)21:00~

    オフィシャルサイト先行予約 9月8日(土)21:00~

            一般予約 9月24日(月・祝)21:00~

【備考】アルバム購入者には新曲のデモCDRをプレゼント!

「ジュブナイル」の続編を書きたかった

──前回取材させていただいたフルアルバム『アイネ・クライネ・リヒトムジーク』から3年の月日が経ちましたね。

 

たなかまゆ(Vo/Key) 「ええ、ほんとあっという間で(笑)」

 

──前回“やり切った感がある”と話されていたのは覚えているんですけど…。

 

たなか 「どうやって次の作品を出すべきなのか、そのやり方を決めるのに時間がかかったんですよ。私はやっぱりバンドでやりたい質なんですけど、レコーディングメンバーをどうしようかと…実はメンバーを探してスタジオ入ってというのを3回くらいやったんですけど、形にならなかったんです(笑)。なんかしっくりこなくて…。アルバムを作ろうとしていたんですけど、3回も頓挫したから一度考え直すことにしたんです」

 

──そこから話が進んだきっかけは何だったのですか?

 

たなか 「K-MIXのラジオで同じ曜日にやっている岡田ピローというミュージシャンがいて、彼と月に一度合同番組をやっているんです。その中で“フェニックス・マンボウ”というユニットを始めたんですけど、ピローが作るトラックやアレンジがすごくよかったんですね。それでピローにアレンジを頼んだら面白い作品ができるんじゃないかと思ったのがきっかけです。またコンパレの面倒を見てくださっているスタッフの伝手で、ドラマーにキンモクセイの張替さん、ベースにSwinging Popsicleの平田さん、そしてギターは元メンバーのなっちゃんにお願いすることになりました」

 

──確認しておきたいんですけど、なっちゃんとは別にしこりはないんですよね?

 

たなか 「あ、それはもう全くないです。近所に住んでいて今も仲がいいので」

 

──わかりました。前回のアルバムでは、ときめきジャンボジャンボと一緒にやっていたじゃないですか? 実はあの形がコンパレの理想形だと思っていたので、今回やり方がガラっと変わっていて少々びっくりしました。

 

たなか 「確かにあのときはそれがベストだったんですけど、参加メンバーも多くスケジュール調整から何から何まですごく大変だったんですよね。だからあの形で毎回やるのはなかなか難しいなと思ったんです。それと今回のシングルは次のアルバムに続く作品にしたかったから、やり方含めて見直す必要があったんですよ」

 

──前回と今回の違いについて詳しく教えてもらえますか?

 

たなか 「前回は1曲毎に頼む人、ゲストミュージシャンを変えていたんですよね。またライヴもレコーディングメンバーでそのまま一緒にやっていたんですけど、このやり方だと制作予算もすごくかかるんですよ。いい音楽を作るのに必要な予算だから仕方ないんですけど、実際に結構大変だったのも事実で(苦笑)。リリースしてレコ発ライヴをやって一定程度お金が入っても経費を差し引いたらほとんど残らなかったりして。そうなると次につながらないんですよね。だから今回は同じメンバーでレコーディングを進めたんですよ」

 

──ゲストの方はいかがでした?

 

たなか 「張替さんも平田さんもやっぱりベテランの方はすごいですよね。何かというと、私が細かく言わなくても、私のやりたいことを汲み取ってくれるんですよ。だからお二方の音を聴いたときは、本当に震えたんです。デモを聞いただけでわかってくれるし、さらに遊び心もあって、参加していただけて光栄でしたね」

 

──新しいリズム隊はすごくコンパレに合っているなと思いましたよ。これまでの作品と比較してもね。

 

たなか 「私、リズム隊はグイグイいくタイプが好きなんですよ。平田さんのベースがまさにそれで、とても心地よかったんですよね」

 

──いつ頃から作り始めたんですか?

 

たなか 「(2016年の)7月からですね。7月に張替さん、8月上旬に平田さん、そして中旬にはアレンジも終わってミックス、マスタリングまでやりました。私、全然見てないですけど、ピローが相当頑張ってくれたからだと思いますね。アレンジは先に固めていたというのもありますけどね」

♦♦♦

──「そして僕らは大人になる」を聴いたときに、「ジュブナイル」を思い出したんですよ。

 

たなか 「あー、すごい!正解です。実はこの曲、[ジュブナイル]の続編なんです。それとミックスとマスタリングをやってくれたエンジニアさんが『ファンファーレ』と『ノクターン』を手掛けてくれた中村フミトさんで[ジュブナイル]風にとお願いしたんです(笑)。だから音像も近いものになっているんですよね」

 

──あ、よかったです(笑)。しかし“続き”というのは?

 

たなか 「実は自分の中で[ジュブナイル]が未だに強く残っているんですよ。すごく良くできた曲だったな、って。なんで私はあんなすごい曲を書けたんだろうって不思議に思うくらいなんです。いつかあの曲を超えていかなければいけないなと。一人になってから何年か経ったし、そろそろチャレンジしてみようかなと続きを書きました。わりとスルッとできたんですけどね」

 

──歌詞についてはどうですか?

 

たなか 「私って“想像したことが現実にならない”ジンクスがあるんですよ。だから本当に起こったら嫌なことを考えるようにしているんです。そうしたらそれは確実にはじかれて現実にならないので(笑)。2番のAメロで〈無くなっちゃうと怖いから 未来はいつも真っ白いままにしておく〉という詞があるんですけど、これは私のジンクスから来ているんです。あとはジュブナイルの登場人物のことを思って書きました。ジュブナイルが持つ意味を考えても、物語としてはずっと一緒ではないだろうなって。最初の[ジュブナイル]が10代だったら、今回は20代のイメージで、別の世界にも目を向け始めることなんだろうな、と」

 

──確か“ぼく”を使われることも多いですよね。

 

たなか 「そうですね、“私”を詞で使ったのは[五線譜のうた]だけで、あとはみんな“ぼく”を使っていますね。それは歌をあまり自分のことにはしたくないからなんです。[五線譜のうた]はすごく私的なことだったんですけど、他の歌は自分のことではないから、正確には自分のことにはしたくないと思っているからですね」

 

──たなかさんの歌は、普通のシンガーソングライターとは少し違いますよね。彼らの多くは我を前面に出してくるんです。自分の何かを伝えたい人が多いんですよね。独白的なものもあるし、日記的なものもある。でもたなかさんはバンドから音楽に入っているからか、シンガーソングライターなんだけど、それっぽくない印象が強い。

 

たなか 「それは私がシンガーソングライターになろうとしていないからですね、きっと。私はバンドマンでありたいので」

 

──その違いをどのように捉えていますか?

 

たなか 「自分の体験や気持ちを伝えて共感を得るのがシンガーソングライターのイメージですね。演奏もピアノと歌、ギターと歌だけあれば完成する作り方をしている、というイメージがあります。でも私はやっぱり常にバンドが入る想定をしたいんですよね。これからコンパレとして出す作品は、バンドサウンドで音源を作っていくと思いますね。やっぱり自分だけの歌にはしたくないんです。あと、私は普段から自分がどのように考えているのかを整理するのが苦手で、溜まりにたまって吐き出して、ようやく自分の言いたいことが見えてくるタイプなんです(笑)。それよりも、小さいころから物語を作ることが好きだったんです。その延長かなと思っていますけどね」

♦♦♦

──「魔女になりたい」なんですが、これもイントロからガツンとやられました。今までにないタイプのキャッチーなポップソングで、たなかさんどうしちゃったんだろう?っていう(笑)。

 

たなか 「いいですよねー、あれはもともと私がピアノで弾き語りをしていたフレーズをピローが何を思ったのか口笛でアレンジしてくれたんです。それがすごくよかったんですよね。“むっちゃいいやん!”って思って採用しました」

 

──ギターポップや渋谷系好きにはストライクな歌ですよ。

 

たなか 「自分でもニンマリしてしまうような、いいポップソングになったと思いますね」

 

──この歌も男性目線ですよね?

 

たなか 「そうですね。周りからも何故そんなに男心がわかるのかと不思議がられますね」

 

──どんなことを考えながら作ったんですか?

 

たなか 「この歌は名前の通り[魔女になりたい]という歌を作りたくて作った曲なんですよ。タイトルありきなんです」

 

──たなかさんにしては珍しいですよね。

 

たなか 「そうなんですよ。で、どういう曲にしようかと考えて、例えば魔女と猫みたいに切っても切れない関係になりたい、というところから、猫みたいな女の子に振り回される男の子という設定にしたら面白いかなと思って 」

 

──魔女になりたいんですか?

 

たなか 「小さいころから魔女に憧れがあったんですよ。ドラクエだったら“メラゾーマ”や“イオナズン”、ファイナルファンタジー(以下FF)だったら“オーディーン”のような召喚魔法ですね」

 

──たなかさんはゲームに詳しいんですね。

 

たなか 「そんなこともないと思いますけど、兄がいるんですよ。だからでしょうね。ゲームも難しいのは苦手なんですけど、RPG(ロールプレイングゲーム)だけは昔から好きだったんです。RPGって一つの物語だしそれを読み解いていくのが面白かったんですよね。ドラクエ、FFはもちろんマザーもやりましたね。街の人の会話なんかも凝っていてそういうのを見ているだけで楽しかったんですよ。あと特にドラクエとクロノトリガーは音楽も大好きでいつかコンサートを観に行きたいなと思っています」

 

──意外な答えが返ってきましたが(笑)、“物語”というキーワードが先の話と通じているんですね。話を戻しますが、この曲はどうやって作られたんですか?

 

たなか 「簡単なデモを私が作って、それをピローがアレンジしてくれました」

 

──アレンジを依頼するにあたってリファレンス作品はありましたか?

 

たなか 「[そして僕らは大人になる]は[ジュブナイル]の続きだから、それを聞いてもらいました。[魔女になりたい]はスピッツの[裸のままで]を渡したんですよ。リズムの感じを参考にしてほしくて」

 

──わかりました。話は変わるのですが今回のアートワークも前作同様たなかさんの写真を使われていますよね?

 

たなか 「そうですね、もともと自分の写真にしようと決めていたんです

 

──それは何故ですか?

 

たなか 「やっぱり作り手の、顔の見える作品にしたかったという思いが一番ですね。だから前回のアルバムも、前のシングルもみんな自分の写真を使っているんです」

ようやく一人にも慣れてきました

──前回出したアルバムの前にコンパレは一人になったじゃないですか? あれから4年経ちましたけど、ふりかえってどうですか?

 

たなか 「いやー、大変でしたよ(笑)。大変だったけど、ようやく一人にも慣れてきましたね。ライヴなども含めて」

 

──コンパレはもともとバンドで10年以上やっていたじゃないですか? それが一人になってしまって…何が一番変わったのか伺いたかったんですよ。

 

たなか 「バンドが長かったこともあって、一人になってまず感じたのは、目指している音がすぐにできないストレスですね。ベースやリズムなど、バンドの音を前提に曲を作ってしまうんです。昔は曲ができたらそれがすぐにバンドの音になっていたんですけどね…それが一番違うかな、やっぱり。もどかしさも、あるんでしょうね。あとはもう、ライヴをするときの空き時間が寂しいとかね(笑)」

 

──制作はいかがですか? バンドと違い、ソロになると全部一人で決められるでしょうから、バンドの時よりやりやすい面もあると思われますが?

 

たなか 「それはありますね。最近は一人で全ての楽器ができたらどんなにいいだろう、と思うことも増えましたから。でも私はピアノ以外弾けないんですよね。デモを作るときも、ドラムはなんとか打ち込みでできても、ギターとベースが弾けないんですよ」

 

──なるほど…他に変わったことはありますか?

 

たなか 「社交的にはなりましたよ、以前に比べたらね。前はメンバーがいたからその中で会話も成り立っていたんだけど、今は一人ですからね。元来私は人見知りなんだけど、そんなこと言ってられませんから(笑)」

 

──最後にこの作品ふりかえって思うことがあれば。

 

たなか 「今回改めて気づいたことがあって。制作を手伝ってくれたピローのアレンジ、平田さんや張替さん、そしてなっちゃんの演奏も全て最高だったんですけど、最終的にコンパレの音を決めていたのはエンジニアの中村さんのミックスとマスタリングだったってことなんです。ミックスの第一弾を聴いたときに“これは間違いない!“と感動してしまって…スタッフも同じことを感じたみたいで、”中村さんの音がコンパレの音だったんだね“と。初のミニアルバム『ファンファーレ』でレコーディングからミックス、マスタリングまでやってくれた方だったんですよ。それ以降も中村さんに頼みたいなと思ったことが何度もあったんですけど、力不足で実現できなくて。今回久しぶりに一緒にやることができて、その凄さが改めてわかったんです。[ジュブナイル]の続きの曲だから中村さんにお願いしたんですけど、私の求めていた音がここにあったんですよね。コンパレが一人になったとき、正直どうしていいかわからず、必死になりすぎて自分でもよくわからなくなっていたんですけど、4年経って、今は本当に落ち着いているんですよね。大人になれたんですよ、私も…あとは魔女になるだけですね(笑)」

New Album『PARADE』

コントラリーパレード

PARADE

2018年11月14日リリース

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miobell records「コントラリーパレード New Album Release Party "Parade goes on!"」

【日時】2018年10月27日(土) open 11:45 / start 12:15

【会場】東京・ 渋谷LOFT HEAVEN  http://loft-prj.co.jp/heaven/

【出演】コントラリーパレード(フルバンド編成)/ 杉本清隆(orangenoise shortcut) / you & me together

【料金】アルバム付前売 5,500円(予約者限定特典付き/数量限定)(+1drink)

    前売 3,500円(+1drink) / 当日 3,900円(+1drink)

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            一般予約 9月24日(月・祝)21:00~

【備考】アルバム購入者には新曲のデモCDRをプレゼント!

掲載日:2018年10月24日

初出:2017年1月18日/ポプシクリップ。マガジン第8号

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