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MIKKO Now and Forever Interview

山口県を中心に活動しているシンガーソングライターのMIKKOが昨年9月にミニアルバム『Now and Forever』をリリースした。この作品は時代を越えて多くのファンを魅了しているナイアガラ・サウンドの影響を多分に受けていることと、彼女自身の嗜好もあってかアルバムタイトルの「Forever」に相応しい、流行にとらわれず、いつまでも聴いていられる作品に仕上がっている。

 

筆者が彼女に興味を持ったのはここ数年の東京のインディーズ・シーンから聞こえてくる20代、30代の音楽とはまた違った魅力を感じたのがきっかけだった。単なるオマージュ作品ではないように聞こえたし、30歳の彼女が何故ナイアガラ・サウンドに興味を持ち自分なりの解釈を持って臨もうとしたのか、そのチャレンジがとても面白いと思ったのだ。

 

また彼女のプロフィールを読んで、山口に拠点を置いてミュージシャン活動をしていることにも興味を持った。筆者の周りのバンドマン・ミュージシャンは地方から上京して音楽をやっている人が大半なのだけど東京、大阪、京都、名古屋などの大都会で夢破れて田舎に帰ると、一部のベテランを除いて大半の人が音楽以外の仕事に就き、音楽は趣味として楽しむ選択をする人ばかりだった。しかし彼女の場合は地元に帰ってからもシンガーソングライターとしてコンスタントに活動を続けており、しかも東京にいたときよりも音楽の仕事が増えたという。

 

この機会に彼女の最新作『Now and Forever』を知ってもらえたら嬉しいし、彼女の音楽に取り組む姿勢やそのスタイルから学べることもたくさんあるはずだ。本記事で何らかのアクションを起こす気付きが作れたら幸いである。

 

※本取材は2016年9月に行われました

 

インタヴュー・テキスト・撮影 黒須 誠

企画・構成 編集部

MIKKO作品

婦人倶楽部

ナウ・アンド・フォーエヴァー

MIKKO

2016年9月7日リリース

Amazon商品ページ

 

作品情報

MIKKO『ナウ・アンド・フォーエヴァー

発売日:2016年9月7日
形態:[CD] 

レーベル:FLY HIGH RECORDS

品番:VSCF-1760

価格:1,667円+税

 

 

<収録曲>

1. Re:Start

2. 胸キュン!

3. 街角のコーヒーボーイ

4. The Circle Game(ジョニ・ミッチェルのカヴァー)

5. 9月3日

6. 遠く離れて

婦人倶楽部

フォーエヴァーグリーン

MIKKO

2015年11月25日リリース

Amazon商品ページ


MIKKO Now and Forever Trailer

“私のこれまでとこれから”を意味する『Now and Forever』にしました

──昨年リリースされたミニアルバム『Now and Forever』は、その前のアルバム『Forevergreen』から“Forever”続きになっていますね。

 

MIKKO(Vo) 「前作が“永遠に色褪せない音楽を作りたい”という想いを込めて“Evergreen”と“Forever”を掛け合わせて『Forevergreen』にしたんですよ。私にとってこれは永遠のテーマでもあるんです。今回は私が30歳、節目の年を迎える時期だったことが大きく影響しています。このアルバムを書いたときはまだ29歳でしたが、発売のときには30歳になることもあって、“私のこれまでとこれから”を意味する『Now and Forever』にしました。“これまで”というのは私が好きだったナイアガラ・サウンドやカントリーミュージック、そして自分が生まれたときからのストーリーを綴っていて、“ここから”というのは…何だろう…今まで自分が好きじゃなかった部分も好きになっていきたい、新しい自分に変わっていきたいということですね」

 

──MIKKOさんが思う“色褪せない音楽”とはどんなイメージですか?

 

MIKKO 「いつの時代に誰が聴いてもいいと思えるレコードですね。小さい子からおじいちゃんおばあちゃんにまで聴いてもらえるような作品を生み出したい想いがあって。山下達郎さんや大瀧詠一さん、シュガー・ベイブに竹内まりやさんたちが作り出した音楽、あの時代に生まれた音楽がまさにそうなんじゃないかと思いますね」

 

──挙げられた作品、MIKKOさんが生まれる前の音楽でご年齢からすると意外でした。

 

MIKKO 「私、昔はテレビっ子だったんですよ。確かドラマの主題歌にもなった大滝詠一さんの『幸せな結末』を聞いて、こんないい音楽があるんだとジーンとなったんです。ドラマとリンクする歌詞やサウンドが印象的でした」

 

──90年代以降のJ-POPはいかがですか?

 

MIKKO 「J-POPも演歌も何でも聴いていましたね。私の年代だとモーニング娘。が流行っていたので、アイドルもよく聴いていました。毎週のようにお店の売れ筋ベスト10をレンタルしてカセットやMDに入れて聴いたり、カラオケに行ってみんなで歌っていましたね(笑)」

 

──少し脱線しますが大滝詠一さんや山下達郎さんもカラオケで歌っていたんですか? というのも僕が学生のころも、モーニング娘。はカラオケで歌うと盛り上がったんですけど、大滝詠一さんを歌っても誰も知らないので歌いたくても歌えなかったんですよ(笑)。

 

MIKKO 「ええ、普通に歌っていましたよ。そんなに多くはなかったですけど、友達の反応もよかったです」

 

──羨ましい環境ですね(笑)。オリコンをはじめカウントダウンTVやミュージックステーションなどチャートを賑やかしていた音楽については?

 

MIKKO 「それこそTVをよく見ていたので聴いていました。モーニング娘。に松浦亜弥さん、宇多田ヒカルさん、KinKi Kidsとか」

 

──どちらかというとJ-POPを主に聴いてこられたんですか?

 

MIKKO 「そうなんですけど、音楽の専門学校に通い始めてからは洋楽を聴くようになって、それ以降は邦楽よりも洋楽を中心に聴くように変わっていったんですよ。専門学校ではゴスペルを主に学んでいたので、R&BやPOPS、カントリーが多かったかな」

 

──洋楽で色褪せない音楽って何が思い浮かびますか?

 

MIKKO 「うーん、難しいですね(笑)。その答えになっているかわかりませんけど、専門学校で最初に歌ったのはフェアーグラウンド・アトラクションの〈パーフェクト〉だったんです。洋楽を全く知らない頃で先生に相談して決めたんですけど、フェアグラなんかは色褪せないと思いますね。あとビートルズやカーペンターズなんかも好きですしそのあたりかな」

地元の方の応援のおかげでホールライヴには700人以上が観に来てくれました

──今回はミニアルバムという形態でリリースということですが?

 

MIKKO 「30歳の誕生日に開催する、初のホールワンマンライヴで記念になる作品が作りたいと思い、その限られた時間の中でできたのがミニアルバムでした」

 

──前作から1年経たないうちのリリースだったのでハイペースだなと(笑)。

 

MIKKO 「そうですね、確かに(笑)。もともと個人事務所を持っていて、そこではプロデュースをお願いしているカンケさん※に相談しながら自分ですべて決めながら音楽活動をしていたんです。毎年作品をリリースしたいなと思って。そして前作の『Forevergreen』からFLY HIGH RECORDSの土橋さん※にもお世話になっています」

 

※カンケ(柏崎三十郎) 作曲家、音楽プロデューサー。97年にキングレコードよりシングル「サマーブリーズ」でデビュー。その後はCM音楽やTVや舞台の音楽、サウンドトラック、音楽プロデュースを中心に活動中。MIKKOの他にもこれまで吉田山田、ももいろクローバーZ、バナナマン、バカリズム、東京03らの作品に携わっている。

 

※土橋一夫 音楽制作ディレクター、ラジオパーソナリティ、アート・ディレクター。毎週土曜日21時よりK-MIXにて、毎週日曜16時よりFM PORTにて『ようこそ夢街名曲堂へ!』(構成・選曲・出演)放送中。最新の著書は『夢街POP DAYS 音楽とショップのカタチ』。

 

──カンケさんとはどこで知り合ったのですか?

 

MIKKO 「実は小さい頃の美空ひばりさんを育てていた方が知り合いで、自分が音楽活動をスタートするにあたってその方のところにお世話になることになったんです。最初のシングル〈DEVOTION〉を出すときにアレンジャーを探そうという話が出て、そのときに紹介いただいたのがカンケさんだったんですよ」

 

──一緒に仕事をされていかがでした?

 

MIKKO 「すごいなと思ったのは、“これまで一度も否定されたことがない”ということですね」

 

──8年間一度も?

 

MIKKO 「はい、そうなんですよ。専門学校で音楽をしていたときは、先生に“どこがダメでしたか?”“どうしたらもっとよくなると思いますか?”と尋ねられていたんですね。すると先生は“じゃあもうちょっとヴィブラートをゆっくりかけてみて?”というようにアドバイスをくれたんです。でもカンケさんの場合は私がライヴで“この部分がうまく歌えなかったんです”と話すと、“あ、でもこの部分は出来ているから、ここも出来るようになるよ。と”、決してダメ出しや否定をしない方で…そこがすごく嬉しかったんです。先ほども話したように私自身、自分に対してダメ出しをする人なので(笑)。もちろん音楽制作のノウハウなども教わってはいますけど」

 

──少し話が飛びますけど、節目の年を迎えられて作ったアルバムとのことでしたが、この1年生きていていかがでした(笑)?

 

MIKKO 「生きててって面白いですね(笑)。うーん、振り返ると2015年から2016年にかけては激動の一年でした。地元のサッカーチーム“レノファ山口FC”の公式テーマソングを作らせていただいたり、アルバムを作ったり、ホールライヴもやらせてもらったりと目まぐるしい日々を送っていたんですよ。それでも、まだ出来る、もっと出来ると自分で自分のお尻を叩く感じで、今思えば痛めつけていたのかも(笑)」

 

──痛めつけているって、これまた激しいですね(笑)。

 

MIKKO 「そうですね(笑)。もう少し言うと、自分自身を誉めることがあまりできなかったんですよ。ライヴをやってもうまく歌えなかったり、ファンの方の名前を全員覚えようと思っても覚えきれなかったり…自分に課したものがちゃんとできなくて自分自身を許すことができなかったんですよね。自分の中にもう一人の厳しい自分がいて、忙しすぎたのか、好きな音楽をやっているのに苦しい一年でした。感情がなくなってしまうくらい追い込まれて、曲を作ることすらできなくなった時期もあったくらいで。そんな中でようやく作れたのがこのミニアルバムだったんですよね。(昨年)9月3日の30歳の誕生日に初めてのホールライヴを地元で行ったんですけど、このライヴを迎えたらきっと何かが変わるんじゃないかと思いこんだりして(笑)。無我夢中でやっていたら何故か自分の気持ちも変わり始めて、当日は大変多くの方に見に来てもらえて、音楽を続ける事が出来て本当に幸せだなと感動しました」

 

──山口県の音楽事情はわからないのですが、MIKKOさんの規模で地方のホールを埋めるのは相当大変なことだと思うんですよ。よくやりましたね。

 

MIKKO 「私は今山口県の下松市(くだまつし)に住んでいるんですけど、地元の方が応援してくれたからできたことなんです。当初は地元の方からも無茶だとは言われたんです。なぜなら誰もが知っているようなアーティストでさえ、私の地元だとホールの半分も埋まらない時があると言われていたからなんですね。でも私は地元でラジオ番組を持たせて頂いたり、観光大使も務めさせて頂いたり、地道に頑張っていた中、多くの人に支えて頂いて、結果1,000人のホールに700人以上の方が見に来てくださったんです」

 

──それはすごいですね。人の多い東京でもインディーズシーンにおいては300人のライヴハウスを埋めることができないミュージシャンが大半なんですよ。有名な渋谷クラブクアトロの場合、700人入ったら満員状態です。実際にはもう少し入りますが、人口比も考えるとそれ以上のことを成し遂げたということでしょうか。

 

MIKKO 「私、わりと思いつきで行動してしまうところがあるんです(笑)。多くの人に支えられていたことを改めて実感したライヴでした」

 

──記念ワンマンも成功して、絶好調じゃないですか?

 

MIKKO 「どうなんでしょうね(笑)。たださっきも話したようにこのワンマンに向けて力が抜けてきたころからいい状態になってきたなとは感じています」

 

──つまりそれまでの20代は力が入っていたと?

 

MIKKO 「すっごく力が入っていましたね(笑)。私、負けず嫌いなんですよ。だから自分の立場に近い方、周りのミュージシャンやラジオのパーソナリティなどを見ながら絶対に負けないぞと自分自身に言い聞かせながら気負ってやってきたんですよね」

 

──自分に負けたらダメなんですか?

 

MIKKO 「うーん、難しいですね(笑)。でもなんか嫌でしたね(笑)。負けることによってそれをバネにしようともするんだけど、悔しい思いはしたくなかったんですよ。自分で目標を決めたら必ずやりきりたいと思う完璧主義者だったんです。今はそういう部分が全くと言っていいほど無くなってしまったんですけどね(笑)。こんなに力が抜けていていいのかな? と不安になるくらいで」

 

──気負いが無くなったのは、先ほど話されていた“好きだった音楽が嫌いになるくらいに追い込まれてしまったこと”がきっかけだったんですね?

 

MIKKO 「そうですね。自分が苦しくて音楽が嫌いになったときに全てリセットされたんですけど、その上でまた好きな音楽を続けようとしたときに、その苦しかった部分、自分を追い込もうとする部分を取り除くことができたんです。だから今はとてもいい状態なんですよ」

地元の山口で音楽を作って、山口県で一番になろうと思って(笑)

──MIKKOさんは地元山口の仕事をたくさん行われています。地元ではどのように活動されているんですか?

 

MIKKO 「基本的にはライヴが中心なんですけど、ラジオ番組のお仕事やナレーターなど声の仕事、あとは楽曲提供だったり、観光大使など、色々とやらせてもらっています」

 

──地元での音楽の仕事をどうやって得ているのか不思議だったんですよ。

 

MIKKO 「仕事は人づてで依頼して頂いたものが多いです。個人事務所ですしマネージャーも音楽にそんなに詳しいわけではないから、本当は自分から仕事を取りに行かなければいけないんでしょうけど…。ありがたいことに多くの方から声をかけて頂いています。“MIKKOちゃんが来るとみんなが笑顔になるし元気もらえるんだよ”とよく言って頂けるので、そういう場所や仕事に呼んで頂いているんじゃないかと思います」

 

──MIKKOさんは21歳のときに一度上京されているじゃないですか? でも今は地元の山口に拠点を置いて活動されているわけですが、音楽の活動をする上でマイナスになったり不便だったりすることはありませんか?

 

MIKKO 「それがですね、山口に帰ってからお仕事がすごく増えたんです。東京にいたときよりもずっと恵まれていて、結果東京にいないほうがよかったということになったんです。不思議なんですけど(笑)」

 

──実は今回の取材の前に調べさせてもらって一番驚いたのが音楽の仕事の多さだったんですよ。MIKKOさん規模のインディーズで活動しているバンドで、MIKKOさんのように幅広く仕事をしている人ってかなり稀なんです。音楽関係のつながりも強かったのでしょうか?

 

MIKKO 「いや地元では音楽関係の仕事をしている人のつながりってほとんどないんですよ(笑)。東京でもカンケさんと土橋さんくらいです。2012年に地元に帰ったんですけど、ラジオやイベントを通じて知り合った方もいますが、地元で出会った方から声をかけて頂くことがほとんどです。昔と違って今は東京にいなくても音楽の制作はできますし、データのやりとりで大半を済ませられますしね」

 

──ツールなど環境面の変化は確かにあるとは思いますが…。

 

MIKKO 「そもそも地元に帰ることになったのは、2011年の震災がきっかけの一つなんです。震災が起きたときに親から地元に一度帰っておいでと言われて戻ったんです。そのとき感じたことなんですけど、私は高校を卒業してから地元を離れていたこともあって“山口のことを何も知らないな”って気づいたんですよ。それと東京に出て東京で頑張って音楽を続けることはすごくいいことだけれども、“自分のベースとなる地元を大事にできないことはどうなんだろう?”という疑問が自分の中でフツフツと湧いて出てきたんです。だったら地元の山口で音楽を作って、山口県で一番になろうと思って帰ることにしたんです(笑)」

 

──地元に戻られてよかったことはありますか?

 

MIKKO 「音楽の面でいうと、地元の基盤があるとないのではまるで違うなって思いますね。プロモーションもまずは地元で行うことができるし、さらに東京でもできる環境を頂いているので、2カ所で行えるのはすごく大きなことじゃないかなと」

 

──東京生まれ東京育ちだったらインディーズの場合、よほどでない限り東京でしかプロモーションできませんからね。また地方から上京してバンドをやり始めるとそのまま東京に居着いてしまう方が多いんですけど、不思議なことに地元でのプロモーションをやらないバンドがほとんどなんです。わざわざ東京に出てきて音楽をやっているからという気持ちもわかるんですけどね。

 

MIKKO 「山口でも音楽をやっている人はいますけど、プロモーションまでちゃんとやっている人って実は少なかったりするんですよ。地元の方に応援してもらえるのは本当に大きな力になりますね」

時間が経っても色褪せない音楽を作っていきたいという思いが一番あるので、それを続けていきたいなと思います

──話は戻りますが、今までのお話も踏まえて30代の新たな一歩ということで「Re:Start」を1曲目に持ってこられたんですね。

 

MIKKO 「そうなんですけどこの歌は最後にできたんですよね。リード曲らしい歌がなかなか思いつかなかったんですけど、松田聖子さんが歌われている眼鏡市場のCMソング〈Summer Time Magic〉を聞いたときに、とてもいい歌だなと思ってそれにインスパイアされて作ったんです。歌詞は自分の幅も広げたくて、松本武史さんにお願いをして、初めての共作となりました」

 

──アルバム全体を通して聴くとサウンドもバリエーションに富んでいてカラフルですよね。「街角のコーヒーボーイ」はとても口ずさみやすくて、80年代歌謡ポップスの流れを汲んでいるし、「胸キュン!」はまさにナイアガラ・サウンドを受け継いでいるというか。

 

MIKKO 「まさにそうで〈胸キュン!〉を作ったとき、カンケさんにリファレンスとして挙げたのが山下達郎さんの〈ドリーミング・デイ〉だったんですよ。あの感じをうまく出せればと思ったんです。また〈遠く離れて〉は“冬のナイアガラを作ろう”をテーマにしたんですよね。実は前のアルバムに〈虹色の想い出〉という曲があるんですけど、その歌は大滝詠一さんの〈君は天然色〉のアンサーソングをテーマにして作ったんです。それで私なりの夏のナイアガラ・サウンドができたから、今度は冬のナイアガラをイメージして挑戦したんです」

 

──いい意味でも悪い意味でも2016年に作られた音楽とは思えないですね(笑)。時代を超えている感じがするというか、オマージュとも言えるけど古臭さもなくきちんと消化してMIKKOさんの作品として上手に昇華されているのが面白いです。カンケさんのアレンジの妙も大きいのでしょうが、40代50代の方が聴いたらビックリすると思います。

 

MIKKO 「私は自分がいいなと思ったら、自分でもそういう感じのメロディが作れないかやってみるんですよね。オマージュも好きなので私の作品からナイアガラやフィル・スペクターに行ったり、ニール・ヤングからCSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)を聴いて、また私の作品に戻ってくれたりしたら、感じてもらえるものがあると思います」

 

──また今回はジョニ・ミッチェルのカバー「The Circle Game」を収録されていますよね。前のアルバムでもバディ・ホリーの「Words Of Love」をカバーされています。

 

MIKKO 「単純にカバーで歌うのが好きなんですよね。カンケさんと何にしようか相談した際に提案してもらったのが〈The Circle Game〉だったんですよ。この歌はアグネス・チャンもカバーしていてそのバージョンも良かったのと、曲名がアルバムタイトルの『Now and Forever』とリンクしているように思ったんです。サークルゲームのように繰り返していくという感じで」

 

──シンガーソングライターの方って自意識の強い人が多くて、特に自分名義のアルバムで他人の歌を歌うことに抵抗を持つ人もいるのですが?

 

MIKKO 「それはまったくなかったですね。レコーディングも楽しかったです。カラオケでも歌っていましたし、自分の高くて柔らかめの声質にも合うと思ったんです」

 

──5曲目の「9月3日」はMIKKOさんの誕生日に関する歌のようですが?

 

MIKKO 「(昨年)FM山口でやらせてもらっているラジオ番組の中でリスナーさんと一緒に曲を作ろうという企画が持ち上がったんです。そこで呼びかけをしたら色んなアイデアが届いたんですよ。歌詞や曲のフレーズだったり、また応援歌を作ってほしい、家族にまつわる歌を作ってほしいなどなど。その中で“MIKKOちゃんは9月3日にライヴをやるんだから、自分の誕生日にまつわる歌を作ってもいいんじゃないの?”という声があったんですね。自分では思ってもみなかった発想だったんですけど、9月3日にライヴをやることは決まっていたので、じゃあ9月3日という曲を作ってライヴで発表しようと思ったんです。そこで皆さんからいただいたアイデアをもとに自分が生まれたころから今まで、これからの思いを書いてできたのが〈9月3日〉なんですよ」

 

──なるほど、そんなエピソードがあったんですね。あと「街角のコーヒーボーイ」は?

 

MIKKO 「これは地元に実在するコーヒーショップの名前なんですよ。私もよく通っているお店で、挽きたての豆をドリップで淹れてくれるんです。コーヒーも美味しいんですが、何よりもそのお店に集まる人たちがみんなあたたかくていい人たちばかりなんですよね。お店に行くと元気になれるので私のパワースポットにもなっていて(笑)。そのお店のことを歌にしました」

 

──地元愛にあふれているんですね。歌詞についても少しお伺いしたいのですが、普段はどのように?

 

MIKKO 「私の場合メロディが先に出てくるので、それに合わせて歌詞のストーリーを考えながら作っています。パソコンで作ることが多いんですけど、携帯にメモすることも結構ありますね。メロディは車の中だったりお風呂に入っているときだったり、何か別のことをしながら思い浮かぶことがほとんどです」

 

──詞を読んでいると自己体験がベースになっているように感じます。

 

MIKKO 「そうですね。そこから自分だけではない他人のストーリーや憧れなどを付け加えて作ることが多いんですよ」

 

──ファンの方からはどんな感想をもらいますか?

 

MIKKO 「歌詞だと自分と同じ状況、“苦しいときに歌を聴いて泣いて元気になれました”とか“詞が聞きやすくてすごくいいね”とはよく言われますね」

 

──自分のことを歌っていて恥ずかしくなったりしませんか?

 

MIKKO 「そうですね(笑)、私はもともと自分のことを歌うのは嫌だったんですよ。ブログやSNSなども苦手で、普段は隠れていたいタイプの人間なんです(笑)。でも今のご時世自分を出さなければいけないじゃないですか? だから恥ずかしいなという思いもありましたが、続けていくうちに今では全く恥ずかしくなくなりました」

 

──今回のアルバムだと「胸キュン!」の歌詞は女心をよく表している歌だと思いました。聴いているほうが恥ずかしくなるくらいで(笑)。

 

MIKKO 「これは学生のときの想いをテーマにしているんですよね。純粋な恋というか(笑)、青春時代は私も胸がすごくキュンキュンしていたんですよ。ちょっとしたこと、例えば気になる人と目が合ったりしただけで胸が高鳴ったりね(笑)。そんな風に感じる瞬間が今の年齢になるとあまりないじゃないですか? そういう感情って大人になると無くなっていくんですけど、いつまでもたっても胸キュンできたらいいなと思って作りました(笑)」

 

──MIKKOさんのこれまでの作品を聴くと例えば1stアルバムの「HAPPY SMILE」や3rdアルバムの「ドリーミング・ガール」「1-2-3」、レノファ山口FC公式テーマソングの「スタートライン ~All For Team~」など未来志向のポジティブな歌が多いと感じます。

 

MIKKO 「それは私の性格だと思いますね。もちろん悩むこともあるんだけど、いつまでもウジウジしていたくないし、“まぁいっか”みたいなところがあります」

 

──前に進みたい気持ちが強いんですね。

 

MIKKO 「元気なのが取り柄なんですよ。サッカーチームのテーマソングを作らせて頂いたときには応援隊長もさせて頂いたんですけど、スポーツが大好きなので楽しくて仕方なかったです(笑)」

 

──わかりました。それでは最後になりますがメッセージをお願いします。

 

MIKKO 「作品について言えば、最新作が特にいいというよりも、これまでの作品全てがいいと思っているんですけど、今回の『Now and Forever』は30歳になった自分にとっては節目となる作品で、そういう意味では思いが一番詰まっているとは思いますね。それとやっぱり時間が経っても色褪せない音楽を作っていきたいという思いが一番あるので、それを続けていきたいなと思います。あと私は山口で活動をしていて山口を盛り上げていきたいなと思っているのでこれを読んだ方の中から山口に遊びに来てもらえたら嬉しいですね」

 

──本日はありがとうございました。

東京・渋谷区のオフィスにて
東京・渋谷区のオフィスにて

MIKKO作品

婦人倶楽部

ナウ・アンド・フォーエヴァー

MIKKO

2016年9月7日リリース

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作品情報

MIKKO『ナウ・アンド・フォーエヴァー

発売日:2016年9月7日
形態:[CD] 

レーベル:FLY HIGH RECORDS

品番:VSCF-1760

価格:1,667円+税

 

 

<収録曲>

1. Re:Start

2. 胸キュン!

3. 街角のコーヒーボーイ

4. The Circle Game(ジョニ・ミッチェルのカヴァー)

5. 9月3日

6. 遠く離れて

婦人倶楽部

フォーエヴァーグリーン

MIKKO

2015年11月25日リリース

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掲載日:2017年3月8日

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