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今年結成20周年を迎えたスウィンギング・ポプシクルが、6年ぶりとなる待望の新作『flow』を12月10日にリリースする。ここ数年活動ペースは緩やかだったものの、ピッチパーフェクトで天才的な藤島美音子のヴォーカルに三声のコーラスワーク、口ずさみやすいシンプルなメロディは健在。ミディアムテンポのナンバーが集められていることもあって、腰を落ちつけて聴きたくなる作品だ。

 

記念となる取材で何を聞こうか悩んだが、ここでは前から気になっていたカテゴライズの話や、目立ったヒットがなかったのにも関わらずファンに愛され、世界でも活動してきた稀有な音楽活動を続けてこられた理由を尋ねることにした。とはいえまずは立場を忘れ、リスナーとして20周年おめでとうと伝えたいのが本音である。

 

インタヴュー・テキスト 黒須 誠

撮影 山崎ゆり

協力 ソニー・ミュージックスタジオ

企画・構成 編集部

※本記事は2015年12月10日に発売されたポプシクリップ。マガジン第6号収録の記事を期間限定で再掲載したものです

7/22、8/8のイベント会場限定で配布される20周年記念アニバーサリーCD「JoL」
7/22、8/8のイベント会場限定で配布される20周年記念アニバーサリーCD「JoL」

Swinging Popsicle 「メジャーデビュー20周年記念ワンマン ~Joy of Living~」

日時:2017年7月22日(土) open 12:00 start 12:30

会場:東京・下北沢モナレコード

料金:前売 4,000円(+1drink)当日 4,500円(+1drink)

備考:来場者には20周年記念CDをプレゼント!

New Album 『flow』

●アルバム完成おめでとうございます。09年の『LOUD CUT』以来のアルバムリリースです。まずは完成した直後の率直な気持ちを教えてください。

 

嶋田修(G/Cho) 「やっとリリース出来て、ホッとしております。今はただただ、ひたすら嬉しいですね」

 

藤島美音子(Vo/G) 「ようやく、ようやくお届け出来る運びとなって、良かったです!」

 

平田博信(Ba/Cho) 「お待たせして申し訳ありません。時間の許す限りとことんやりきりました」

 

●アルバム作品としては6年の月日が経ちました。

 

平田 「基本的にメジャーと違って締め切りというものがないということがあります。出せるタイミングで無理をせず制作していこうと思いまして、各メンバーのペースを考慮しながら進めていたんです。その間には1年に1曲はCDなり配信なりで発表はしていたんですが、6年経ってしまっていたという感じです。このメンバーが集まってから20年も経つとそれぞれ以前と環境も変わりますしね。きちんとそれぞれの生活を大事にした上で音楽と向き合う時間を用意するということが我々には大切だったんです」

 

●タイトル「flow(フロウ)」のコンセプトは何ですか?

 

藤島 「コンセプトといえるかわからないけれど…今まで溜めてきた曲を一気に出すのではなく、ミニアルバムをなるべく短いタームで2枚出そうとみんなで決めたんです。フルアルバムにこだわるのではなく、20周年という年にこだわろう、と。その2枚は関連性のあるものにしようと思っていて、その1枚目は『flow』というタイトルにしようと思いました。今回は再びフレイヴァー・オブ・サウンドからのリリースなんですが、フレイヴァー盤の歴史を紐解くと、『transit』をして、『Go on』で進み続けて、そしてそこから長い月日が流れ…。だけどそれはきっと必要なことだったんじゃないか、人生にはそういった流れていく時間もあっていいんじゃないか、ポプシはきっとそういう時間を過ごしたんだな、という意味合いで、『flow』とつけました。気負わず、逆らわず。でも私たちなりのスタイルで。収録曲も、アップテンポのものより、ミドルな、割とゆったりした雰囲気で聴けるものが多いのかな、なんて思います。長い年月を超えて、陽の目を浴びた曲達ばかりです」

 

●久しぶりのリリースでは、フルアルバムを望む声も多かったと思うのですが?

 

嶋田 「ダウロード時代なので、そんなにフルアルバムのボリュームに拘らなくなったっていうのもあります。『LOUD CUT』から時間が経ってしまったので、今固まっている楽曲をとにかく早くリスナーに届けたい、、、という思いもありました」

 

●本作品にはDVD、ミュージックビデオ(以下、MV)が6タイトルも収録されていて大変豪華です。MVをリリースされるのはポプシクルとしても初ですよね。

 

平田 「20周年記念盤ということで何か特別なことがしたかったところに、ポプシの映像をちょこちょこ作ってくれていたサトウヨシヤさんから “よかったら使って欲しい” と言っていただけたので、MVをDVDにしてミニアルバムと一緒にパッケージするという形式を選びました。[I just wanna kiss you]は、以前YouTubeにも上がっていたんですけど、今は見れなくなっていましたのでこちらも収録することにしたんです」

 

●どんな内容なのですか?

 

藤島 「各曲ごとにテーマが在り、楽しめる内容になっているんじゃないかと思います。ネタバレしちゃうとつまらないので内容は控えますが、そこに映像を作る事の必然性であったり、自分達が好む映画のテイストであったり、バックボーンとするところは映像であっても音楽と同じ、そういった部分は当然あると考えています。 クスッと笑える部分などが皆さんと共有出来たらうれしいなと思います」

 

●その中でポプシクルの代表曲でもある「I just wanna kiss you」を撮影したときのエピソードがあれば。

 

平田 「荻窪のSEIYUの屋上で夕日が沈むタイミングを見計らって撮影したんです。床に水を撒いて独特な反射があって不思議な映像になったと思います。すごく寒くて震えながら撮った記憶があります。この日に仁井聡子さんがインタビュアーでこの場所で番組の収録もあって、確かViewsicで特番として放送されたと思うんですが、残念ながら映像を持ってないんですよね。誰か持っていないかな? その映像ももう一度観たいなと思います」

 

嶋田 「たしか冬場で風もあり、とても寒かったのを覚えています。気分はビートルズのルーフトップって感じでした」

 

●事前に少し拝見しましたが、アメリカやメキシコなどの海外ツアーの様子も収められていて、ファンにとっては嬉しい内容だと思いました。

 

藤島 「[I just wanna kiss you]を除くその他の映像は、海外でのライヴやオフショットの映像を中心に、日本でのワンマン&イベントライヴ、様々なところで撮りためたものを織り交ぜて、NON-POLYのサトウヨシヤさんが作り上げていってくれたものです。ということは、10年程前の映像も沢山入っています! なので、みんな若い?(笑)」

 

●MVの見どころは?

 

嶋田 「[Chocolate Soul Music]の振り付けというか、ダンサーの方を交えたダンスが見応えありますね。ギター持ってなかったら、僕も踊りたい!」

 

藤島 「基本的には見てからのお楽しみです! が、普段は割と真面目だけど、ポプシクルって意外とお茶目なところがあるのね~って思ってもらえたら、いいかな(笑)」

 

平田 「少し時間が経っているのもあって懐かしかったですし、海外のライヴやオフの様子なんかは自分が見ても楽しめました。あらためて見てみるとサポートメンバーはもちろんスタッフもたくさん映っていて、いろんな人たちに支えられて活動しているなと痛感しました」

About 『flow』

●先程も少し触れましたが、アルバムを今年リリースすることになったのは?

 

藤島 「今年2015年は、結成20周年という記念すべき年なので、もうこの年を逃す手は無い、と思いました!」

 

●今回はフレイヴァー・オブ・サウンドからリリースされます。『transit』や『Go on』を出したレーベルです。そうなると 前作『LOUD CUT』の続き、というよりも作品の位置づけとしては『Go on』の続きになるのでしょうか?

 

平田 「そうですね。『LOUD CUT』はゲーム音楽に特化した一枚であり、ゲームでポプシを知ったユーザーにもポプシの今までのサウンドも聴いてもらいたくて『transit』や『Go on』からの楽曲をリマスターしてベスト盤的なニュアンスもありましたから、テイスト的には『transit』や『Go on』のオリジナルアルバムといった流れです。『LOUD CUT』リリース以降もゲームとのタイアップ曲はいくつかあったんですが、今回はその楽曲はあえて収録していません」

 

●久しぶりということで、選曲も大変だったのでは?

 

嶋田 「メンバーみんなで、あーでもない、こーでもないって感じで決めましたね。個人的なこだわりは特に今回は無くて。でも最終的に[seseragi]を一曲目にしたいと、ミネコフの一押しがありましたね。意外だなーと一瞬思ったんだけど、アルバムのジャケットを見ながらこの一曲目を聴いた時、“わ〜!”って鳥肌が立ちましたね。ジャケの世界観が、まんま飛び込んでくるんです。さすがだなと思いました」

 

●僕の第一印象は、心にすっと響く優しいアルバムだったんですよ。前作の『LOUD CUT』はアッパー・チューンでノリのよい「(a)SLOW STAR」「Perfect Loop」のイメージが強かったんです。それとは真逆に位置するアルバムだと。

 

平田 「確かに『LOUD CUT』は「Perfect Loop」「(a)SLOW STAR」の1~2曲目が印象的だったと思います。やはり1、2曲目の印象はアルバムの顔になるので狙ってわざとアッパーにしたんです。今回は6曲という時間の流れを大切にしてミニアルバムならではの聴かせ方を意識しました。そういう意味ではソニー時代のミニアルバムの『HEAVEN』なんかにも近い雰囲気あるかもしれませんね。1曲目も穏やかな曲ですしね。実は曲順が決まってから2曲ほどベースを差し替えて録音し直したんです。うまく曲順にはまるグルーヴを微調整しているんですよ。こういうことはフルアルバムだったらやらなかったでしょうし、宅録ならではの贅沢なわがままでしょうし、なによりメンバーからミックスを任された僕の特権だったかも。(笑)」

 

●ここから曲のお話に移りたいと思います。1曲目の「seseragi」は、音数も少なくミニマムな構成です。可愛らしいメロディが印象に残りますよね。

 

平田 「自分が結婚して家族が増えて、そしていつも変わらない仲間がいてくれる。そういうことに安らぎを覚えたり、しみじみとありがたさを感じたりするホワホワっとした柔らかくて温かい感情を曲にしたんです。家族や友達への感謝のメロディです」

 

●詞についてはいかがですか?

 

藤島 「平田君のデモが上がって来た時、仮タイトルが“mama”だったんです。でもそれは、平田君が自分の息子にこの曲を聴かせたら“まあまあだね”って言われたかららしいのですが(笑)。そこで、もし私に子供がいたらどうなんだろうな、とか考えながら、どんどんイメージが膨らんでいって、ああいった歌詞になりました。切ないけれど、子供のことで辛い思いをしている女性やご夫婦が沢山いらっしゃるのが現実です。実は、そのことで自らも非常に辛い体験をしました…。だけど、そこから目をそむけてはならないと思ったし、そういう年代になったからこそ書ける詞なんじゃないかと。かなしいけどあたたかい、せつなさとやさしさが共存するような、そんな歌詞にしたかったんです」 〈思いきり泣いたら また歩き出そうか 大人になったってそう、同じさ〉

 

●・・・藤島さんの辛い体験から生まれた歌詞だったんですね。続く2曲目の「Small Blue Sailboat」も藤島さんの飼い猫が亡くなったときに作られた曲だったと記憶しています。

 

藤島 「正確には、亡くなる前です。でももう歳を取って、だんだん天国に近づいてるなって、なんとなくそれがわかったんです。不思議なものです。それからまもなくして旅立ちました。その猫は、一度若い頃に大病を煩い、学会でも発表されたほどの奇病で余命宣告を受けていました。でもそこから這い上がり、結局18年という、人間で言えば8~90歳ほどの大往生で息を引き取りました。ソニー時代に出した、[I Love Your Smile]の中に収録されている、[Tiny Drops]という曲もその猫からインスピレーションを受けて歌詞を書きました。いろんなことを感じさせてくれる、不思議な猫でした。ちなみに同時期にもう一匹猫を飼っていましたが、その猫の歌詞は書けた試しがありません(笑)。同じ猫でも、一匹一匹それぞれ違う生き物、それは人間と同じなのですね」

 

●作曲についてはいかがでした?

 

嶋田 「これ、実はけっこう前に作った曲でして。5〜6年くらいは経ってるのかな。で、その時ジェフリンのいるELOがマイブームだった時があって、なんとなくELOのイメージで作りました。泣きのコード、ストリングス、スライドギターがポイントですね」

 

●続いて3曲目の「mobile phone」は、これまでにないタイプの打ちこみの楽曲です。サビのヴォーカルの響きが印象に残りました。

 

平田 「藤島の声を今までとは別角度で響かせたかったんです。アルバム『Go on』には[rainbounds]や[Chocolate Soul Music]など打ち込み然とした楽曲もありましたが、[mobile phone]はもうちょっとオーガニックな雰囲気が漂う打ち込みの曲ですね。アコギがキラキラと鳴っていながら爽やかな疾走感とたっぷりのコーラスワークはポプシならではのサウンドだと思います」

 

●この曲の歌詞はスマホ・携帯が生活に欠かせない現代において、人と携帯電話の距離感に疑問を投げかけたような、そんな印象を受けました。

 

藤島 「平田君からデモをもらったときに、“Is This Love?”というサビの英語がすでに歌われていました。 そのキャッチーさが耳から離れないので、採用することにしたのですが、だけどただのラヴソングにしたのではつまらないと思い、携帯電話に依存する現代社会の闇を恋愛に例えて描こうと思いました。タイトルについては最後まですごく迷って、あえてタネを明かさない方向にしようかとも思ったのですが、それだと今回の私の意図するところでない普通の恋愛ソングにとらえられてしまう可能性がなきにしもあらずなので、やはり“そのもの”の名前をつけることにしました」

 

●余談ですが、皆さんにとってスマホや携帯はどんな存在ですか?

 

平田 「ドラえもんかな」

 

藤島 「まさに“mobile phone”のような存在です」

 

嶋田 「今となっては、無くてはならないモノ…ですかね。でもたまに、無くなってくれないかなーと思うときがある(笑)。昔はケータイ無しで生活してたわけですから」

 

●続いてはポプシクル初のクリスマスソング「at Christmastime」。この曲はライヴ会場やiTUNESでもリリースされていました。アルバム収録にあたって変更点などありますか?

 

平田 「もちろんありますよ! ミックスの雰囲気も随分変わったと思います。僕がリスナーの立場だったら、それを探すのが楽しみだと思うのであえて言わないでおきます。そのあたりをマニアックに聴いてくれると嬉しい限りです」

 

●世間にはクリスマスソングが溢れていますが、ポプシクルとしてのクリスマスらしさをどのように考えられましたか?

 

藤島 「クリスマスが特別好きというわけではないのですが、世の中にあるクリスマスソングで好きな曲は沢山あります。自分がクリスマスソングを書くのなら、そういった素晴らしい楽曲を世の中に提供してくれたミュージシャン達への敬意をこめた歌詞にしたいと思いました」

 

平田 「男女の声が混じってハモる泣きのサビはポプシっぽいと思います。コーラスもこれまたたっぷりですしね。そして僕らが聴いて育った80年代のフィーリングは狙ったところです」

 

●余談ですけどクリスマスに関するエピソードがあれば。

 

嶋田 「22才のクリスマスの時期に、パリやロンドン、オーストリアへ旅行したときすごくイルミネーションが綺麗で、その街並も相まってヨーロッパのクリスマスがほんとに素晴らしくてカルチャーショックでしたね」

 

●5曲目のジャクソン5のカヴァーである「I’ll Be There」、この曲を選ばれたのは? “僕はそこにいるから”という歌詞が、ポプシがいつまでもそこ=リスナーの傍にいる、という意味もこめているのかな、と。考えすぎでしょうかね(笑)。

 

藤島 「残念、、、、、考え過ぎでした。。。(笑)。元々大好きな曲だったのに加え、友人のミュージシャン(VASALLO CRAB75 オジー)の結婚式でのリクエストに応えたのがきっかけで、それから機会あるごとに、そこここで歌っていた気がします。それでポプシでも馴染みがあったし、カヴァーをやろうという風潮になった時期があったので、これならすぐ録音できちゃうんじゃないかと思い、選びました。歌詞もすごく素敵なので、ぜひ訳詞は入れたいと思いました。意味を感じながら聴くと、また一層好きになれる曲なんじゃないかと思います」

 

●この曲のアレンジ、構成はどのように考えられたのですか?

 

平田 「ジャクソン5の雰囲気はしっかり残しつつ、ポプシはよく3人でアコースティックのライヴをやるのでベーシックはその感じで進めました」

 

嶋田 「ギターに関してですが、なんかアコースティックで・・・っていうのは、最初からあって。で、なんとなくアコギでスライドギターやったら、ハマって…って感じです。あまり気負わず、リラックスした雰囲気が出てると思います」

 

●この歌ではゲストミュージシャンにGOMES THE HITMANの高橋さんとVASALLO CRAB 75の工藤さんが参加されています。

 

平田 「パーカッション入れたいねってなるとケッチャン一択です!(笑)。工藤くんの起用は藤島からの提案です。藤島と工藤くんはAkariというバンドを一緒にやっているし、互いのバンドのメンバーが行き来するのは良いことだと思っています。僕の好きなFOUNTAINS OF WAYNEとIVYとの関係とかいいなと思うんですよね」

 

●この歌をカヴァーするにあたり気をつけたことがあれ

 

藤島 「う〜ん、カヴァーする、という気持ちより、自分がマイケルに近づきたい、という気持ちの方が強かったかも(笑)。どれだけマイケルになりきれるか(笑)。ミネケルジャクソン!」

 

●最後「RIBBON」について、この曲は作詞作曲を嶋田さんが行われています。

 

嶋田 「これはアドバンテージ・ルーシーのギタリストだった、福村くんに捧げた曲です。胸キュン☆アルペジオというライヴイベントが、毎年下北沢クラブキューで行われているのですが、福村くんに所縁のあるバンドが参加したコンピレーションCDを2012年にリリースしたときに提供した曲です。福村くんと過ごした時のことを思い返しながら作ったのですが、いつもは悩む歌詞も、不思議なことにまるで誰かに書かされているかのように、この時はスラスラと書けました。天国に行った現在でも彼は、自分の音楽の仲間を繋いでくれている存在だと、常日頃、感じていることをそのまま歌にしました。“リボン”というキーワードは、”結ぶ”というイメージと、”RE-BORN〜生まれ変わる“という二つのイメージがあります。また生まれ変わっても、仲間でいよう…そんな願いも込められているわけです」

 

●今回のアルバムは、全体的に切なさを感じます。曲調がゆったりしていることもありますが、収録曲の内2曲が、亡くなった方へ追悼の意が込められている歌です。以前のインタヴューでこの6年間、ポプシクルはお世話になった音楽プロデューサーとの死別や親しい者との別れなどが重なり、人生おいて最も辛い時期を過ごされたと伺いました。喪に服していた時期に作られた曲が集められたアルバムとも言えそうですが?

 

藤島 「そうですね、私たちにとって、悲しい出来事が多すぎました、、、。とても耐えられない時期も、正直ありました。それは3人が3人とも、そうであったと思います。そういった思いを中心に作ろうとしたのではないけれども、以前も言いましたが、生活=音楽である以上、日常で感じたことやあった出来事が反映されるのは、直接的であれ、間接的であれ、必至であるのかなと感じます」

 

嶋田 「そのとき一番強く思っていることを曲にするのは、自然な流れだと思います。『LOUD CUT』後に、奇しくもメンバー全員そういう経験をしていることは、少なからずこのアルバムにも影響があるんだと思いますね」

 

平田 「“喪に服していた時期に作られた曲が集められたアルバム”という意識は全くないです。僕にはポプシらしいポジティブな響きのアルバムに思えるんです」

 

●今回のアルバム、改めてマイペースなポプシクルらしいなと思ったんです。1stや2ndのころは、スウェディッシュ・ポップ・ブームだったり、ギター・ポップ・ブームでもあって、時代にリアクトしていた面もあったと思うんですよ。2015年の今は、あたりを見回すと巷ではEDMが流行っていたり、テンポ、BPMの早い4つ打ちの踊れるロックが相変わらず人気です。その中で時代に流されず、バラード曲中心のアルバムをリリースされたことに、毅然としたポプシクルらしさを感じました。

 

藤島 「私は、彼らが出して来てくれたデモの中から、自分が歌いたい、歌詞を書いてみたい、或は書けそう、と思ったものをチョイスしているだけです。今までの長い経験がありますから二人には絶対的な信頼を置いてますしね。作曲の時点で戦略的なものは二人の中であるかもしれませんよ。そこから更に私がある意味ディレクター的な役割で選曲しているわけです。でも、今回はほぼ書き下ろしではありません。EDMがバカ流行りする以前にそのほとんどの楽曲が作られているのです。もしかしたら、書き下ろしたのなら、EDMもあったかもしれませんよ(笑)。極端に言えば、それくらい、私は柔軟に、自分達が楽しめれば、それがEDMであっても良いと思っています。私はね。だけど、時間がどれだけ経っても、どれも良い曲だと思えるって凄くないですか? 飽きないんです、私がチョイスしてるからなのかもしれないけど(笑)。二人の楽曲には、そういうパワーがあるのだと思います」

 

●奇をてらわずオーソドックスなスタイルを貫くところを好きなファンも多いと思いますが、一方で周囲の環境は目まぐるしく変化しているのも事実です。

 

嶋田 「個人的にはそういう新しい要素に対する興味はすごくあります! ただ、ポプシはそういうトレンドフォロワーとはまた別な次元で存在している気がしてるんです。たしかに出発は当時シーンを席巻していた スウェディッシュポップだったのかもしれませんが、だんだんと流行の音より、自分たちの音楽〜自分たちのメロディを追求していくスタイルになりました。それは言い換えるなら、エバーグリーンな音楽、時代に迎合しない、普遍的な確固たる自己の音楽の追求の現れなのかもしれません」

 

●話は変わりますが、今回のジャケット、今までのポプシにはなかった優しいタッチのイラストですね。

 

藤島 「イラストレーターの服部あさ美さんにお願いしました。3人とも服部さんの絵が好きだったし、しまっちが今回提案してくれましたが、全員異論なしで、すぐオファーの運びとなりました。服部さんも快く快諾してくれ、イメージはまず服部さんに曲を聴いてもらって、お任せしてみようということになりました。あえて自分たちからは提案をせず。そこで服部さんが出してくれたイメージが、私が書いた今回の曲の歌詞の1つ[(seseragi)]とリンクするものを感じたので、よりそちらに近くしていただくようにお願いをしました。物語の一場面のような、ステキなジャケットになりました! とても気に入っています」

 

●子供のイラストも描かれていますが?

 

藤島 「[seseragi]の一場面のようなイメージを彷彿させたかったので、子供も登場してきます」

ポプシ、20年

●ポプシクルが20年続いたのって何故だと思いますか? 客観的な事実だけを並べるとポプシクルはすごく不思議なバンドなんです。ドラマのような奇跡的な出会いがあってメジャー・デビューされましたが(別記事16周年記念インタヴュー参照)、大きなヒットに恵まれたわけでもない。それなのに活動は他に類を見ないほど多彩です。インディーズに活動を移してからも韓国、アメリカ、メキシコと海外に10数回も遠征、現地で熱狂的に迎えられているほか、海外リリース、海外ワンマンもされています。またゲームでのタイアップを通じてギターポップ以外のファンにも音楽を届けられていますし、東京国際フォーラムやJCBホールといった大きなステージでも堂々と演奏できる力も持っているわけで。下北沢系ギターポップと一括りにされがちなのですが、実際の活動はその枠を大きく超えているんですよ。他のバンドにはない何かがあるのでしょうがそれが何なのか知りたかったんです。

 

嶋田 「ミネコフの歌、平田くんのリーダーとしての求心力、人望。これでしょうかね。そしてありがたいことに 聴いてくださる方々がいるからだと思います」

 

藤島 「一つには、メジャーを終えてからの我々のスタンスに、まさに『flow』のようなものが徐々に根付いていったからではないでしょうか。その時々によって自分達のペースを計りながら。そしてなにより、ありがたいことに、その時々でポプシを支えてくれる方々がいらっしゃったということ、これは本当に大きかったと思います。 ファンの方々は大前提としてあっての話なんですが、スタッフというか所謂裏方の人間として好意的に携わってくださった方々が何名いたことか。。。。。その点においても、私たちは本当に恵まれていると思います。 “捨てる神あれば拾う神あり”じゃないですけど、常に私たちの周りには、人こそ変わりすれ、支えてくれる方々がいてくれた、振り返ると本当にそうなんです」

 

平田 「基本的にはわれわれはラッキーだと思うんです。メジャーの契約が無くなった後も自分たちのやりたい音を自由に作らせてくれるレーベルと出会ったり、韓国からのラブコールがあったり、日本の音楽が世界的に聴かれて行く状況の中でアメリカやメキシコでイベントに参加できてライヴも行えた。そしてオタク文化が盛り上がっていく早い段階でゲーム音楽へのオファーがあったり、バンドを続けていく上でモチベーションを保ち続けられる何かや人といつも出会えてきたんです。これはすごい運だと思いますよ。そんな中でもわれわれは当然のようにケンカもしますし、、、解散の危機が全く無いバンドではありませんから。結局のところ最終的にはポプシで音楽を一緒に作りたいと思える何かをメンバー間で提供し続けているからだと思いますね」

 

●これまで渋谷系、スウェディッシュ・ポップ、ギター・ポップといった様々なカテゴライズをされてきたと思うんですが、葛藤などありませんでした?

 

平田 「あまりそういうことは感じなかったのですが、逆にどこのジャンルでも仲間に入れてもらえてないような気もしていました。それもあんまり気にはしていませんでしたけど(笑)」

 

嶋田 「渋谷系第二世代なんて呼ばれたこともありましたが、実はあんまし気にしたことはないですね」

 

藤島 「実際、自分たちも好きなジャンルなので、それには抵抗はありませんでしたね。むしろ“そこからあなたの歌は離れている”と言われることの方が辛かったです。当時はそれが悪いことのように言われてる気がして。。。責められてるような気すらしました。そうなりたいと思ってもなれない葛藤はありました。。。これ、以前にも質問されませんでしたっけ?(笑)。でもだったら、誰かにならなくていい、自分の道を行けばいいんだって気づくんです。それはもしかしたら、時代の変化もあるかもしれませんね。。。」

 

●ポプシクルの音楽的なルーツを探っていくと、ビートルズ、ビーチボーイズにはじまり、ELO、ジョニ・ミッチェルやキャロル・キングなどに代表されるシンガーソングライターなど、バックグラウンドは多種多様なのですが、改めて皆さん各々のルーツについて教えてください。

 

平田 「中学生の頃はヘヴィメタルが好きで、高校生の頃は人並みにBOOWYのコピバンもやったりして、大学生の頃はレニー・クラヴィッツの1stと2ndが好きでした。大学を卒業してからはカーディガンズに衝撃を受けました。全部流行ものですね(笑)。一番影響あるのはやはりビートルズですね」

 

藤島 「洋楽を聴き始めたのは、小5の時です。当時流行っていた80年代ヒットチャートものが大好きでした。これは、今の自分を形成する上での非常に重要なポイントとなっています。今聴いてもワクワクします!」

 

嶋田 「若い頃聴いてて、いまだに好きなのは、ほんとうに自分の中で好きなんだろうな…と思います。逆に二十代の頃、聴いてた音楽が今の礎になってるような気もします。ビーチボーイズ、ビートルズ、ラモーンズ…あたりですかね」

 

●ふりかえるとポプシクルは詞の中でメッセージや強い主張をしてこなかったと思うんですけど、それは何故でしょうか?

 

藤島 「まあ、政治的な団体でもないし、ロックバンドでもないし、個人のシンガーソングライターでもないし、ワンマンな人が居るバンドでもないですしね。だけど、強い主張やメッセージは感じないかもしれないけど、Shall we?(〜しませんか?)は言って来ましたよ。そんなに人に強要したくないんでね。誘ってみるから、ちょっとここに置いてみるから、後は自分で考えて選んでくださいね〜、的な(笑)。絵画や映画のようなものの表現法が好きなのもあるかもしれませんね、そこから何を感じ取るかは聴いた方次第であるという。 それに、音楽を聴くことを選択すること、そして自分の好む音楽を自分で選ぶことも、ある種の強い主張であると私は考えます。石川県の金沢なんて当時は田舎ですよ、いまでこそ新幹線通ってプチバブルになってますけどね、当時洋楽を小学生のうちから聴いてる者なんて、ほんの一握りしかいなかった…よく探せばいたと思いますけど、それなりにレンタルCD店や中古レコード店もありましたしね、だからこそ、我々のような異端児小学生はそこへ求めに行けた訳で。。。でも少数だったと思います。それこそが主張であった訳です。今考えると小さいけど(笑)。話を戻すと、では例えば、政治的なことに関与する主張をする場合、そこに至るまでの知識や責任感を自分の中で持つことが出来なったこともあるかもしれません。今なら出来そうなことも、当時は出来ないとか、あると思うんです。そこに目は行かなかったとか。それより他に表現したい物があったとか。それだけのことですかね」

 

●この20年の中で、転機になった人はいますか?

 

平田 「一番の転機はポプシのメンバーと出会ったこと。これが絶対ですけど、大学生のときに高橋さん(ex.PEALOUT、HARISS、DQS)と一緒にバンドをやらなければ大学を卒業して普通に就職していたと思います。高橋さんと藤島とは大学の音楽研究会というサークルで出会ったんですが、高橋さんが4年生のとき僕が2年生で藤島が1年生でした。高橋さんとは25年経った今もDQSで一緒だったり、ポプシをサポートドラムしてもらったりしてます。あと南野くん(ジオライドのプロデューサー)に出会わなければ新宿LOFTで働かなかったのでデビューに至らなかったかもしれないし、ニトロプラスとも仕事をすることにはならなかったでしょう。南野くんとは彼がやっていたBOICE(のちに4-STiCKSと改名してデビュー)と、僕と高橋さんで一緒にやっていたMOTHERSで対バンして仲良くなりました。BOICEは当時メンバーが定まらず僕と高橋さんのリズム隊でサポートしたこともあります」

 

嶋田 「やっぱり平田くんに出会ったのは、すごく大きいと思います。当時、たまたまメジャーのレコード会社の方が自分たちの音源を聴いたっていうのもデカいですね」

 

藤島 「20年です、沢山居過ぎて、本当は一人には絞れません。それぞれの方に深い恩義を感じますし、心から感謝しています。全員ご紹介したいくらいです。そこを強いて一人代表であげるのなら、事務所が吉本興業だった時代にマネージャーをしてくれた上田さんですね。彼の尽力無くしては、今のポプシは無いと思います」

 

●これまで大切にしてきたことを教えてください。

 

平田 「出会いと縁を大切にしてきたことです」

 

藤島 「大切にしていることも、他からの圧力で曲げざるを得ない時がある。経験で学びました。もっとも、自分の力不足もあるからなんでしょうが。だけど、基本は自分達が良いと思えることしかやりたくない、なるべくそうしたいからそれを目指そう、と思ってやってます。たまに、外部からではなく、三人の中でも意見が相反する時はあるのだけれど、長い間やってきて互いの中で培われたのは、強い思いのある人に従う、ということでしょうか。多数決でもなく、無理強いでもなく。相手を尊重するのです。最近はそれが三人の意思になってきている気がします」

 

嶋田 「楽しくやる! これに尽きます」

 

●20年、ふりかえってみて皆さんは、自身が理想とするミュージシャンになることはできましたか?

 

嶋田 「考えたこともないですが、、、まぁ、不満もないのでなれているのかな? もうちょっと痩せたいですが(笑)」

 

藤島 「なってはないと思います。“レコーディング イン ハワイ”、まだ出来ていないから(笑)」

 

平田 「理想からは遠いですけど幸せにやれています。売れても無いバンドが20年も続くなんてある意味では理想を越えているとも言えます」

 

●ミュージシャンをやっていてよかったことは何ですか?

 

藤島 「全部」

 

嶋田 「憧れの方に出会えたりすることかな」

 

平田 「心を込めた音を贈りものにできることですね」

 

●反対に大変だったことがあれば。

 

嶋田 「朝のラッシュ時に楽器持って電車乗ると、舌打ちされる!」

 

藤島 「ノドのケア」

 

平田 「昼間に出歩くことがけっこうあるので近所の人にニートと思われている」

 

●今後のミュージシャンとしての夢や目標を教えてください。

 

藤島 「“レコーディング イン ハワイ”(笑)」

 

嶋田 「もっといろんな勉強したいですね。ジャズとかブルースとか」

 

平田 「夢は一緒に頑張ってきた仲間とこれからも元気に音楽をやっていくこと。目標は僕の子供たちが僕の孫に聴かせるような、そしてその孫達も自分の子供たちに聴かせるような50年後も楽しめる音楽を作っていくことですね」

 

●ポプシクルらしさって何でしょう?

 

藤島 「何でしょう?平田、嶋田、藤島のトライアングルですかね〜」

 

嶋田 「マイペースだけど、やるときはやるよ!っていう感じ」

 

平田 「音楽的には3人でハモるポップだけど明るすぎないメロディ。そしてマイペースであることです」

 

●そういえばバンド名の由来について、諸説あるようなのですが、改めて教えて頂けませんか(笑)。スマッシング・パンプキンズ(Smashing Pumpkins)の影響を受けたとか、L⇔Rの「Bye Bye Popsicle」から引用したという話も聞いたことがあります(笑)。

 

嶋田 「ほんとはね、60年代が好きで、雑誌から”Swinging”を、同じく60年代のグループ、ジャン&ディーンて人たちのアルバム名から”Popsicle”をいただいて、合体させました」

 

●最後になりますが、久々の新作です。精一杯PRしてください。

 

嶋田 「良いアルバムに仕上がりました! みなさんぜひぜひ聴いてください!」

 

平田 「レコードの片面を聴くように、一度プレイボタンを押したら6曲通して聴いてもらえたら嬉しいです」

 

藤島 「久しぶりの完全オリジナルミニアルバム、時間ギリギリまで愛情いっぱいかけて作りました。CDもDVDも。しまっちが良いこと言いました。 “アルバムってくらいなんだから、その時その時を切り取ったもの、良いことも悪いこともその時の自分を反映したもの。だから、これでいいんだ。” 一同 “おお〜!” ・・・それはまさに『flow』なのだと思います。是非聴いてみてもらえたら、うれしいです。そして気に入ってもらえたら、すごくうれしいです」

 

●ありがとうございました。

Swinging Popsicle

flow

2015年12月10日リリース

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7/22、8/8のイベント会場限定で配布される20周年記念アニバーサリーCD「JoL」
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Swinging Popsicle 「メジャーデビュー20周年記念ワンマン ~Joy of Living~」

日時:2017年7月22日(土) open 12:00 start 12:30

会場:東京・下北沢モナレコード

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