humming parlour 食べすす

このまま幕をひけるはずがなかった・・・半ば意地になってたね。

──DQSではこれまでの第一期9人、第二期7人、そして今回の第三期10人と変遷がありました。

 

溝渕 「DQSに限らずどんなバンドでもそうだけど、組んだときは何歳であろうがスタートダッシュが効くじゃない? 一年、二年くらいは? でも冷静に一年、二年と経つと“さてこれからどうするかな?”って話になるでしょ? 最初は話題性もあるからいいけどさ」

 

──はい、それは感じます。

 

溝渕 「どこに向かっていけばいいのか?、今でこそDQSは明確だけど、10人いれば10通りの考え方があるわけよ。生活における音楽の占める割合も個人差があるし、まあ普通に話すとまとまらないんだよね。そこで俺はメンバーとサシで一人ずつ話をしてきたんだ。無理はして欲しくないしね。10人が同じ方向を向いていないとバンドはできないし・・・少しでも心に迷いがある場合はお休みでいいじゃん、ってことが人数の変遷になっているわけよ。ただ結成当初しばらくの間は9人にこだわっていたんだ。それは“バンドでないと意味がない”、“ユニットだと説得力がない”、“いやバンドだからこそメンバーとやらないと意味がない”と思い込んでいたというかね・・・それでスケジュールの調整とかしていたら1年も間が空いてしまったんだよね。ある時“いかん、そこまでこだわらなくていいからとにかく動こう!”となったが去年のワンマンに際してなんだ。そのときもまた一人一人と話をしたんだよね。そこで当時7人いたメンバーの3人が各々のオリジナリティを生かしてやりたいことがあるということでお休みとなって4人になったんだよ。さあそれで、どうしようかという話になってね。残った4人で何度も話し合った。当然このままもう辞めるか?という話も出るよね。でもこのまま幕をひけるはずがなく・・・悔しいし・・・“周囲は絶対辞めると思っているよ“と思われてるというのがね。それを覆したくて半ば意地になって・・・思い切って新たに6人も仲間になってもらったんだよ。でもさ、メンバーの半分も入れ替わると新バンドじゃない? 今までやっていた楽曲も一からリハーサルしないといけないし。ゼロから大変なところを経験してきた4人と、もうルーティンに乗っちゃっている所に入ってくる6人のメンタリティの違いは明らかだったから、これら全てをすり合わせる作業というのはすごい時間を要することだったんだよね。でもそこを経て昨年11月のワンマンがあって今回のアルバムに進めているわけだから、俺はものすごくメンバーに感謝しているんだ」

 

──バンドとしてのこだわりを大事にされているのですね。

 

溝渕 「そうだね。どんなバンドでも同じだと思うけど“もうちょっと俺は楽しくやれればいいから。”という人もいれば“もうちょっと本気でやりたい!”という奴もいるじゃない? 譜面を全部書き起こしてくる人もいれば、譜面を全くとってこない奴もいれば、それはうまくいかないよね。みんな大人だしドラマーは人間できているやつが多いから、相手をたてるしさ。ワガママも言わないし顔にも出さない、態度にも出さないからストレスとして溜まっていくんだよね。でも表情見ていればわかるしね。やっぱりDQSでは「ドラムを使って思いっきり馬鹿なことをやることには徹底的にこだわりたい」わけよ。ちょっとグレーな部分を持っている人がいても、例えば俺らが二十歳のバンドだったら、“何言ってるんだおまえ、一緒にやろうぜ!”という勢いで乗り切れるんだけど(笑)、この年になるとそういうことも言えないんだよね。みんな時間もお金もかけて集まっているわけだし、みんなミュージシャンとしていい意味で頑固だし自分のスタイルを確立しているからさ。今は君が言うところの第三期10人だけど、昨年のワンマンを経て、今回のアルバムをリリースして5月21日の京都遠征、そして7月4日の下北沢ワンマンまでは走りたいと思っている。そこでようやく1クール、今の10人のスタートダッシュが終わるというイメージを持っていて、多くのリスナーにぜひ見てもらいたいんだ」

 

──DQSのこだわりの一つとして「キャッチーであること」も挙げられますがそのあたりについても少し詳しく教えていただけないでしょうか?

 

溝渕 「俺らは便宜上歌が欲しいから歌モノもやっているんだけど、やっぱりドラムという楽器のキャッチーさとかパワーをまずは魅せたいと思っているんだよね。だから単にセッションだけをやっているとかグルーヴだけにまかせて自分達だけが楽しんでいる、とかではなく、きちんとしたポップ・ミュージックをコラージュしていきたいと思っている。俺のことで言えば、普段から曲も詞も書くし歌も歌うんだけど、それはアウトプットの違いだけであって自分のイメージしているコラージュ感を太鼓10台に置き換えただけなんだよね。カスタネッツにしてもKGSS ON THE PEAKSにしてもDQSにしてもソロにしてもね。だから普通の人がドラム10台を使って曲を作ったり、アレンジをするよりもポップスへのコラージュ感があるとは思うんだ。それをライヴという2時間の中で魅せていきたいと思っているし、それには自信はあるよ」

 

 

ドラムのことをもっと知ってもらいたいんだよね。

──今回DQS史上初の遠征ライヴが予定されています。

 

溝渕 「元々京都MUSEとα-STATIONがインディペンデントで面白いことをやっていて、その流れで去年一度打診があったんだ。そのときはドラム3、4台でイベントに出ないかという話だったんだけど、DQS側としては10台のあれをパッケージにして運びたいという思いを伝えたところ、向こうでも色々考えてくれて、これだとマイナス・プロモーションになりかねない、という話になって改めて今回のワンマン・ライヴにつながったんだ」

 

──DQSではライヴ中にドラム講座や、円陣を組んだドラムの真ん中にお客さんを入れてドラム10台の爆音体験企画など、ユニークな企画を毎回欠かさずやられていますよね(笑)。

 

溝渕 「ドラムをもっと知ってもらいたいんだよね。これらのコーナーがあってのDQSだって気もするしね。ああいう楽しみというのは初期衝動だと思うし、そこを大事にしたいよね。ライヴもみんなが張りつめたままでいるのはしんどいと思うしね。企画コーナーのような緩い部分があって、その直後にぐっと締まった「Stroke」をやるとお客さんも締め付けられるような集中力で見てくれるし・・・ライヴ全体のエンターテインメントとしてやっていると言ったらいいのかな。だから今度の京都や下北沢のワンマンでも恒例の高橋浩司コーナーはあるからね(笑)。何をやるのかも当日まで彼におまかせだけど(笑)。他にもいつもやっている歌を殺すドラムのコーナーもやりたいね。或いは逆にお客さんで叩きたい人10人集めてドラム10台叩きまくってもらうのも面白いかもね(笑)」

 

 

               

 

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