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中途半端にやると、かえってみんなに迷惑をかけると思って、一度バンドを抜けることにした。(木村)

──確かに初期の作品と今年の再録アルバムを聴き比べると、その3人だった時期の経験が音作りの面で表れているようにも感じますね。


大野 そうかもしれない。『Re:cipe』に入っている英語詞の曲は、宅録でかなり作り込んだものを改めてドラムに叩いてもらっていて。つまりフィードバックの流れが逆だったんです(笑)。そういう意味では曲づくりの幅があの時期の経験で広がったのかもしれない。あくまでも前向きに捉えるとね(笑)。

──木村さんが一度バンドを離れることになった経緯を改めて教えてもらえますか。


木村 大学を卒業したあとに就職したんです。会社員をやりながら続けるっていう選択肢もあったと思うんですけど、やっぱりどうしても片手間になってしまいそうだったので。

 

大野 実際にすごく忙しい時期だったからね。

 

木村 なかなか時間が割けない状態で中途半端にやると、かえってみんなに迷惑をかけるなと思って、一度抜けることにして。で、その当時はみんなすごく忙しい感じだったんだけど、今はそれぞれ平日に仕事して生活を築きつつ、マイペースにバンドを動かしているので、そういうスタンスでやれるなら僕もみんなと変わらないし、手伝えるんじゃないかなと思って。それでまた戻ってやらせてもらってます。

木村 孝
木村 孝

──一度は離れたとはいえ、結果として10年前と変わらないメンバーで現在も活動を続けているというのはすごく大きなことですよね。


大野 やっぱり仲が良くて(笑)。喧嘩もするんだけど、翌日にはそれも忘れているような感じだし、この4人がもはや家族っぽい関係になっちゃっている。それに、4~5年間バンドを離れていた木村さんがまた戻ってきてくれたとき、それまで続けてこられたことのすごさを改めて感じたんですよね。さっき、自主になったときに都落ち感があったっていう話がありましたけど、私はその逆で、レーベルに所属していた当時は、じっくり考える暇もなく目の前にやることが山積みで、あと、まわりの方々から頂く、曲に関する要望に応えなきゃと悩みがちでもあったので……。だから、自主だろうがなんだろうが、自由に音楽を作れる環境になったことは嬉しかった。原点に戻ってやり直せた、というか。そうやって形にしたものが、お客さんからの反応もよかったこともあり、やっぱり楽しんで音を作らないと私たちはだめなのかもな、と改めて思いました。

昔は詞に意識が寄りすぎて、ちょっと曲がおかしくなることもあった。(大野)

──大野さんはwaffles以外の場でも歌い手として活躍されるようになっていたから、いい意味ですごく職業的に音楽に取り組める方なんだろうと思っていたんです。でも、実際はそうでもなかったんですね。


大野 自分の思い通りに作った音楽で売れている人って、実際はすごく少数だと思う。それに人の考えをちゃんと汲み取って作品に仕立て上げるのって、ものすごい才能だと思うんです。でも私はそこまで職業作家みたいなタイプではなくて。そういう作り方も『音』に関してはできるんですけど、wafflesに関しては、どちらかというと気持ちが音よりも『詞』に寄っているところがあって。好きなように表現したものがすぐ世に出してもらえるようになったのは本当に幸運だったんだけど、そこからは職業的な感覚も求められるようになっていくうちに、一時期、どうしたらいいかわからなくなっちゃって。

──その「音よりも詞に寄っている」という話をもう少し詳しく訊いてもいいですか。


大野 とにかく日常で考えたり悩んだりしているうちに、詞がワーッと出てきて、それを溜め込んでいて。それを見ながらギターを手にしていたらいつの間にか曲が出来ていったようなところから、私の曲づくりは始まったんです。だから、昔は曲と詞が同時か、詞が先っていうパターンが多かった。最近は曲先が増えてきているんですけどね。昔は詞に意識が寄りすぎて、ちょっと曲がおかしくなることもあって。「この言葉だけは絶対に削りたくない!」ってね(笑)。


木村 詞が長すぎて曲からはみ出ちゃったりしてたね(笑)


──大野さんの個人的な心情が溢れちゃってたんですね。

 

大野 初期のものは特にそうでした。日常の中でなにか悩んでいるようなテーマがあって、それをぶつけながら、周りの人と関わっていくうちに、だんだんと自分なりに、ひとつの答えが出てきて。それを描いたような詞も多かったですね。今は自分の心情だけじゃなく、周囲の人の気持ちが曲に乗っかっていくことも多いですね。

 

──そのリリックのイメージはメンバー間でも共有されているんですか。

 

武田 そこがけっこう面白いところで(笑)。

 

大野 (笑)。ついこの間もその話をしたばかりなんだよね。

 

武田 大阪で10周年記念のワンマンを先日やったんですけど、その時は泊まりがけだったのもあって、打ち上げのあともみんなで呑んだんです。夜にみんなで話すような機会もしばらくとれていなかったから。

 

木村 部屋に戻ってまた呑んだんだよね(笑)。

 

武田 そこで詞についての話も出たんですよ。そうしたらメンバーそれぞれで考え方が違ってて。

            

 

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