MK日記。-音楽パブリシストの立場から広報と宣伝の違いについて少し考えてみた

こんにちは、音楽パブリシストのMKです。

 

この前書いた音楽パブリシストの記事にちょっぴり反響がありました。
裏方の仕事なのですが、興味を持ってくださる方がいることは嬉しいものです。

それでもう少し音楽パブリシストについて書いてみることにしました。
今回は「広報」と「宣伝」の違いについて少し考えてみましょう。
 
広報と宣伝の違い

 

音楽パブリシスト、カタカナ言葉で難しそうなイメージがあるかもしれません。一般的には広報マンです。宣伝マン(プロモーター)とは少し違います。(なお私が実際に行っている音楽パブリシスト業務は、広報も宣伝もどちらも使い分けながらやっているハイブリッド業務ですが、基本は広報寄りのスタンスに重きを置いています)


広報と宣伝、バンドのプロモーションを行うことにどちらも変わりはないのですが、大きく異なることがあります。
「広報」は原則、メディア掲載にあたり媒体費を使いません。その代わりに掲載保証はありませんし、掲載内容のコントロールができません。またPublic Relationsの名のとおり、バンドとリスナーの双方向の関係強化に力点を置いて情報発信を行います。

「宣伝」はメディア掲載にあたり広告費(=媒体費や制作費)を払う代わりに、掲載保証があり、掲載内容のコントロールもできます。またバンド側からの一方的な情報発信が基本です。
だからプロモーション予算のあるバンドは、宣伝を行うことで自分たちの伝えたいイメージをほぼそのままメディア経由で世の中に伝えることができます。ネガティヴな表現やコメントを避けてバンドのカッコいい一面だけを見せることが可能なので、カリスマ性のある見せ方をしたい場合などに重宝します(媒体にもよりますが、宣伝の場合、メディアはクライアントの要望に応えます。お金をもらっているので)

一方、広報の場合は、どのように取り上げるのか媒体側に決定権があります。例えばバンド側として、「今までにない新しいポップスの境地を切り開いた」と伝えたくても、媒体側が「どこにでもある聞き飽きたポップスで正直つまらない」と書かれることもあるわけです。ネガティヴな表現やコメントを避けることはできません。

他にも多数違いはありますが、まず大きな違いとして上記が挙げられます。

広報と宣伝、これは目的と役割の違いでどちらがいい悪いというものでもありません。バンドの環境とその時々の目的で使い分ける必要があります。書いたようにどちらにもメリットデメリットがあるんですよね。
音楽業界はフリーパブリシティが盛ん

 

もともと音楽業界の特徴として「フリーパブリシティ」が盛んであるというのが挙げられます。バンド、音楽は人のつながりがすごく大事です。その延長で互いのバンドを支えあう相互扶助の精神が強い業界なんですよね。そのためか働いている人もいい人が多く「お互いさま」という気持ちで、互いにプロモーションを手助けしているんですよ。相互扶助の精神で成り立っているんです。


例えばバンドが新作をリリースするときのPR手段として「応援コメント」というのがあります。見かけたことのあるリスナーも多いでしょう。著名な方や知人のバンドマンが、「推薦文」を書いて応援しているのです。実際のところあれのほとんどは気持ちで、つまり無償で行われているのです。もちろん中にはお金を取る方もいます。仕事と考えたらそうですよね。競争原理を考えたら、他のバンドの応援をすると自分のバンドの売上が下がる可能性もあるわけですけど、それにも関わらずみんな応援をしてくれるんです。それはみんなで音楽業界を盛り上げていこうという目に見えない気持ちが根底に流れているからなんですね。他にもたくさんあるんですけど、このようなフリープロモーションが音楽業界にはたくさんあります。


これがですよ、例えばお菓子の新製品、自動車の新製品が発売されるにあたり著名人の推薦コメントがつくときはほぼ有償です。会社が著名人の方にお金を払って推薦文を書いてもらっているのです。またA社のお菓子が出たときにお菓子メーカーB社が応援コメントを出すことって見たことないですよね。ブルボンが出した新作チョコレートを明治が「今度出たブルボンのお菓子最高だからみんな買おうぜ」なんて言わないわけですよ。同業他社は競争相手、そこに相互扶助の精神はありません(技術提携などで相互扶助しているケースはいくらでもありますが、それもビジネスでやっているわけで、無償ではないんですよね)

上記のように相互扶助によるフリーパブリシティがもともと発達していたこともあって、音楽パブリシストがその活動をお手伝いしやすいというのも特徴です。

前回の記事で音楽パブリシストは、主にインディーズバンドの役に立てると書いた理由

 

前回の記事で色々書きましたが、役立てると書いた理由の一つに、ぶっちゃけ予算があります。

 

音楽を聴く環境は年々改善され、手軽に身近になっていますよね。今はYouTubeを使えば無料で数多ある音楽を楽しめます。リスナーにとっては素晴らしい時代です。

 

一方CDなどが売れず音楽にお金がまわらなくなってきた近年ではPR予算を確保できないバンドが大半です。大多数のインディーズバンドの場合は特に厳しいでしょう。
 
10年前ならインディーズでもCDが数千枚売れましたが、今だと数百枚、1,000枚に届かないバンドがたくさんあります。これはメジャーでも同様で10年前であれば1万枚売れていたバンドが、今だと3,000枚も売れないといった状況で、メジャーレーベルからリリースしても1,000枚売れないことがあるのです。もちろんインディーズでも5,000枚、6,000枚と売れているアーティストはいますが、それはほんの一握りです。そのほんの一握りの人気ある方々の話をしても仕方ないので、ここではわりと現実的な目線で話を進めます

次回は「バンドはPRにいくらお金が出せるのか」について検証してみたいと思います。



最後、宣伝になりますが、来週から始まるOTOTOYさんの「音楽パブリシスト養成講座」にゲスト講師として招待いただきました。

 

まだ音楽パブリシストとしては3年目ですが、音楽ライター経験での各種取材話なども交えながら、音楽業界に関するお話、どうやってメディア掲載やタイアップを行っているのか、など色々なお話ができると思います。。ご興味あるかたはぜひ当日お会いしましょう。

 

 

・OTOTOY音楽パブリシスト養成講座

http://ototoy.jp/school/event/info/247