MK日記。-PR予算の確保はできるのか?音楽パブリシストの立場でざっくり検証してみた

こんにちは、音楽パブリシストのMKです。

 

前回の「MK日記。-音楽パブリシストの立場から広報と宣伝の違いについて少し考えてみた」の続きです。


それでもう少し音楽パブリシストについて書いてみることにしました。
今回は予算面を中心にパブリシストの必要性を考えてみます。

 

 

 

それと私ことMKについて誰?という声もちらほら・・・。
一応日本PR協会(パブリックリレーションズ協会)の認定PRプランナーの一人です。

 

・日本PR協会

 

認定PRプランナーは全国で2,000名くらいいます。ほとんどが企業のPRパーソンで、私もその一人。この資格は事業会社のコミュニケーション部門(広報、宣伝部門)やPR会社、広告代理店、印刷会社のプロモーション担当者の方が主に取得しています。

 

実務経験が3年以上ないと最終試験は受けられないようになっており、合格率は20%程度、私のときは18%でした。私の場合、企業実務で得たノウハウや知識経験を音楽パブリシストに応用しています。でも資格は資格でしかなく、それが役に立ったことはあまりありません。実績や成果が大事なわけなので参考にしかなりませんしね。お守りにもならないけどPR業務を一定程度理解しているだろう、という感じで捉えてもらえたら。

PR費用にバンドはいくら予算を出せるのか?

 

どれくらいのPR費用が捻出できるのか簡単な試算をしてみましょう。

今回はよくあるインディーズのロック、ポップスバンドが制作する場合を想定します。(打ち込みにしたらレコーディングスタジオ代は不要ですが、代わりに10万以上の機材を買わなければならないので、やはりそれなりにかかります)

 

 

〈試算の前提条件〉

・6曲入りミニアルバムを制作する場合 CD制作枚数は500枚とします。

・販売価格は2000円とします。

・バンドが自主制作して販売し、利益は全てバンドのものになるという条件にします。

・JASRACや音楽出版社への信託、インディーズの現場では行っていないバンドが多数なので今回は信託しないという条件にします。最近はバンドの利益を先に確保してから後日信託をするという方も多いです。

 

 

〈余談〉

・CMやカラオケ、ラジオなどで一定以上ピックアップされることが想定される場合は信託しておくことで著作権収入が入りますので行っておいたほうが無難です。

・今回の試算はCDの売上だけで行っていますが、実際には配信やライヴ、物販などの収入もバンドにはあります。なのでCDだけで見たら赤字でもライヴや物販で稼ぎ、トータル収入はプラスにする、というやり方で行っているバンドもたくさんいます。配信は現状ほとんど利益になりません。

・流通コストのうち取次のコストを10%で試算していますが、15%~20%のところがほとんどです。Amazonは直接取引すれば通常30%から40%程度ですが、取次会社を挟むとそこに10%から20%程度上乗せされるので、売上の半分近く持っていかれる計算になります。インディーズの場合は通常取次会社(ウルトラヴァイヴ、ブリッジ等)を通して全国に届けますが、最近は販売店と直接取引をしてその分のコストを抑えたり、ライヴ会場限定販売やバンドのオフィシャルサイトの通販限定にして流通コストを抑え、制作費やPR費に割り当てるバンドも多数います。

・アーティスト印税について、今回は全てバンド側で制作費を負担しているという前提のため、15%で試算しました。いわゆる歌唱印税に原盤印税相当も合算しています。ちょっと荒っぽい試算ですが、ご容赦ください。

・ポプシクリップ。の音楽レーベル「ミオベルレコード」とこの試算は関係ありません、念のため。

・Cパターンの制作費55万円、ミニアルバムとはいえメジャーの人やインディーズでも90年代〜00年代を経験している方から見たら安めです。音楽制作の興味深いところは、安く作ろうと思えばいくらでも安くできるし、予算があればいくらでも使える点ですね。Dパターンは今のご時世インディーズではかなり贅沢な予算感です。

・有名な一流スタジオの場合、1日の利用料金は25万から30万程度です。インディーズでは1日5万から10万程度のスタジオを使う方が主流です。スタジオは高ければいいわけでもなく、録音したい音とエンジニアが肝です。例えば生のオーケストラアレンジで録音したい、となると広い大きなスタジオが必要になりますから自然と予算がかかります。作りたい音楽によって必要な予算は大きく変わります。

6曲入りミニアルバム

Aパターン

打込みと自宅録音中心

超低予算

Bパターン

スタジオ録音

梅予算で制作

Cパターン

スタジオ録音

竹予算で制作

Dパターン

スタジオ録音

松予算で制作

作品制作 3万円 18万円 55万円 130万円
 ┗レコーディング (ドラム以外宅録)3万円 (2日)10万円 (4日)30万円 (10日)80万円
 ┗ミックス (自ら実施)0円 (1日)5万円 (2日)15万円 (3日)25万円
 ┗ゲストミュージシャン謝礼 (なし)0円 (1人)3万円 (2人)10万円 (3人)25万円
         
CDプレス 8万円 18万円 35万円 60万円
 ┗マスタリング (自ら実施)0円 5万円 10万円 20万円
 ┗アートワーク・デザイン (自ら実施)0円 5万円 10万円 20万円
 ┗CDプレス(500枚) (海外)8万円 (海外)8万円 (国内)15万円 (国内)20万円
         

著作権管理団体委託費用・その他経費

(信託せず)0円 0円 0円 0円
レコード会社・レーベル取分 (自主レーベル)0円 0円 0円 0円
         

アーティスト印税(バンドの利益)

(15%)15万円 15万円 15万円 15万円
         
売上収入 60万円 60万円 60万円 60万円
 ┗CD売上(500枚×@2,000) 100万円 100万円 100万円 100万円
 ┗流通費(販売店手数料) (30%)30万円

30万円

30万円 30万円
 ┗流通費(取次会社手数料) (10%)10万円 10万円 10万円 10万円
         
売上収入-各種経費(残額)

34万円

9万円 ▲45万円 ▲145万円
         
PR-素材制作 0円 13万円 26万円 40万円
 ┗アーティスト写真 (自分たちで撮る)0円 3万円 6万円 10万円
 ┗ミュージックビデオ (自分たちで制作) 0円 10万円 20万円 30万円
 ┗その他  0円 0円 0円 0円
         
PR-媒体費に使える残予算 34万円 (▲4万)0円 (▲71万)0円 (▲185万)0円
         
         

売上500枚だと上記試算になりました。

 

Aパターンで制作し自分たちで全て賄った場合、媒体費で34万円使えることになりますが、現実はAとBの間くらいで行っているインディーズバンドが大半ではないかと思います。(Aパターンはバンドメンバーにエンジニアやデザイナーがいる場合で、相応のスキルが必要です。ただ、中堅からベテランのバンドほどスキルもあるので、Aパターンに近いやり方で作る方が最近は多いです。反対に新人バンドはスキルがありませんから、外部のエンジニアやデザイナーに頼まないと一定のクオリティのある作品は作れません。新人バンドほど予算が必要になる、という見方もできます)

 

Cパターンは1,000枚売れてようやくトントンか少し赤字です。1,000枚売れるバンドがAパターンやBパターンで制作したら結構な金額をPR費用に充当することができそうです。Dパターンは参考ですが、2,000枚から3,000枚は売れないと赤字になります。

 

PR素材制作費は、聞いた範囲の相場感です。ミュージックビデオは、それなりのクオリティで作るならば30万から50万は必要ですが、20万前後で制作している方もわりと多いです。また最近はiPhoneを使い0円で作っている方もいますから、Aパターンは0円としました。実際にはフライヤーをはじめ他にもPRに必要な素材はありますが、ここでは最低限の項目だけを記載しました。

予算は結局何に重きを置くかでガラっと変わります。制作費に予算をかけてPR費用を抑える方もいれば、情報過多の今の時代だからこそ、動画など中心にPR費用に予算を投じて、認知アップを目指す方もいます。

 

 

こう考えると小規模のインディーズバンドにとってPR費用の確保はなかなか難しそうです。

 

次回は媒体への掲載費用についていくらかかるのか、考えてみます。

最後、宣伝になりますが、来週から始まるOTOTOYさんの「音楽パブリシスト養成講座」にゲスト講師として招待いただきました。

 

まだ音楽パブリシストとしては3年目ですが、音楽ライター経験での各種取材話なども交えながら、音楽業界に関するお話、どうやってメディア掲載やタイアップを行っているのか、など色々なお話ができると思います。。。私もボランティアで相互扶助の精神で参加します。ご興味あるかたはぜひ当日お会いしましょう。

 

 

・OTOTOY音楽パブリシスト養成講座

http://ototoy.jp/school/event/info/247https://www.popsicleclip.com/2017/09/21/diary00016305/