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レジーのブログ×ポプシクリップ。

昨年「レジーのブログ」を運営されているレジーさんと「ダブルワーク」に関する対談を行ったところ、周囲から様々な反応をいただいた。“音楽業界との関わり方にこんな方法があったとは知らなかった””就職試験で落ちたら、あとはどこかで転職するしかないと思っていた”といったものから“そもそも音楽業界ではバイトしながらバンドマンを目指すといったことが当たり前で、ダブルワークは至るところで行われているものだから別に目新しくもなんともなかった”という指摘、“音楽ライターはそれだけで食っている人がそもそも少なく複業が当たり前”などなど。

 

総じて言うならば、“当の音楽業界で働いている人からするとダブルワークは当たり前”、一方で“他の業界でサラリーマンをやっている人から見たら目新しい”という見え方・意見が多く、これらのコメントは僕にとって新鮮だった。

 

ここで簡単にだが、数字を見てみると日本の自営業者・家族従業者は僅か696万人で、全就業者6,388万人の11%しかない。つまり約9割が会社員や公務員などの被雇用者である。その内訳を見ると正社員が3,650万人、非正規社員が約1,980万人となっている(出典(「2015年度労働力調査結果」(総務省統計局))。

 

一般的に正社員はダブルワークや複業を禁じられている・もしくは許可制のところが大半だろうからそれをはずすと約2,700万人、全就業者の10人に4人はダブルワークをしてもいい環境にありそうだが、周囲を見る限りダブルワークをしている人は10人に1人もいない。見聞きする労働環境の実態からも自営業者・フリーランスを除き、会社員のダブルワークはまだまだ珍しいから先に挙げたような反響になったのだろう。

 

僕の周りでは会社員をやりながら大学講師をやっていたり、ミュージシャンとしてCDを10枚以上リリースしていたり、野球解説をしていたり、サッカーの審判をしていたり、スキーのインストラクターをしていたりなど、特技を生かしてダブルワークをしている人がちらほらいるのだけれども、彼らも恐らくは例外であって、ダブルワークはまだまだレアキャラなようだ。

 

そこでレジーさんと互いのダブルワークがその後どうなったのか、この1年をふりかえる対談を行うことにした。ダブルワークで音楽の仕事をやっている2人が実際に経験した話をすることで、リアルな現場の様子をお届けし、音楽の仕事をする上での選択肢の一つとして参考になればと思う。

 

 

対談・テキスト 黒須 誠/レジー

企画構成 編集部

普段の仕事では会えない人に会えるのがやっぱり大きい

黒須 「1年ぶりですね。本日はお忙しいところありがとうございます」

 

レジー 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。早速なんですけど昨年のダブルワークの記事の反響はどうだったんですか?」

 

黒須 「そこそこ反響があったんですよ。ただ、一般の音楽リスナーというよりも、インディーズバンドのスタッフさんとか音楽業界を志望している学生さんやバンドマンの方が多かったですね」

 

レジー 「なるほど、やっぱり記事の内容にリアリティを感じる人が反応したってことなんでしょうね」

 

黒須 「前回の対談から1年くらい経ちましたので、今日は互いにこの1年間どうだったのか、ダブルワークの観点でお話ができればと思っています。短い時間ですがよろしくお願いいたします。早速なんですがレジーさんはこの1年間、音楽の仕事において新しい出来事や発見などはありましたか?」

 

レジー 「うーん、大きくは変わっていないというのが正直なところです。スタンスとしては特に変化もなく淡々と続けている感じですね。個別の案件でいうと、去年の年末に“ぼくのりりっくのぼうよみ”のインタビューで初めて「音楽ナタリー」に記事を書きました。あとはPerfumeつながりで知り合ったフリーの編集者の方の紹介で、スポーツメディアに音楽の記事を書くといったこともやりましたね。楽曲の話ではなく音楽ビジネスに関する内容に振り切った文章を以前から書きたかったので、「エンタメビジネス」という観点で音楽とサッカーの共通点みたいなものを探るというコンセプトの記事にしました。連載の予定だったのですが、メディアそのものが無くなってしまったこともあって残念ながら2回で終わってしまったんですけど」

 

黒須 「仕事の広げ方について何か変化はありますか? 例えば駆け出しのライターであれば自分が過去に書いた記事を持って媒体に売り込みにいったりするわけですけど」

 

レジー 「それも変化はないですね。媒体の仕事はどれも“書いてもらえませんか?”と依頼をもらってやっています。自分から取材して書きたいものについては「レジーのブログ」で書く、という形で役割を整理しています

 

黒須 「仕事の量はいかがですか?」

 

レジー 「外部媒体のものは去年の9月くらいから大体ステイって感じですが、ブログでやっているインタヴューまで含めて考えると増えていると言っていいかなと。自分の環境としては、仕事量の増減よりも時間の管理という部分が大きく変わりましたね。子どもが生まれて、家庭事情で週末も子守にかなりの時間を割かないといけなくなっているので、土日にまとめて作業するみたいなことがやりづらくなりました。今のところは何とかなっていますけど、そのあたりのタイムマネジメントはもっと精度を上げていかないなと思っているところです。子どもはなかなか自分の思い通りに動いてくれないので難しいところもありますが・・・まあ諸々楽しくやってます」

 

黒須 「本業の仕事と音楽の仕事のバランス、やりくりについてはいかがですか?」

 

レジー 「基本的には本業がある中で吸収できる量やタイミングをコントロールしてやるようにしていますし、状況に応じて媒体側と適宜スケジュールを調整するようにはしています。あとうちの会社は「やることやってればあとは自由」という雰囲気が強くて、仕事をする場所や時間についても一般的な職場よりは融通が利きやすいので、そのあたりは恵まれていると思います」

 

黒須 「安倍総理が一億総活躍社会を推進するといった話やロート製薬が副業をOKにしたことがテレビでも取り上げられたり(※1)、サンカクという仕事を辞めずに、成長企業の経営に参加できるサービスが登場したり(※2)・・・世の中の機運も少しずつダブルワークを後押ししているように感じられるんですよ。そこで改めてダブルワークの魅力についてお伺いできればと」

 

レジー 「そうですね、前にお話ししたかもしれないですが、普段の仕事では会えない人に会えるというのがやっぱり大きいのかなと」

 

黒須 「確かにそうですよね。ただ、レジーさんや僕のようにある程度時間が経つと慣れてしまって、今挙げた魅力も薄れてくると思うのですが?」

 

レジー 「そういう側面もあるとは思いますが、僕の場合はまだまだ刺激をもらっていますよ。根がミーハーなので、そういう部分の感動はいまだにでかいです。あとはこれも前回の対談とも重なりますが、会社で働いているときよりも「経済」に関わっている実感はありますね。請求書を書くことから何から全部の作業を一人でやっているので」

 

黒須 「ああ、それは僕も同じですね。会社だと経理担当者にまかせてしまっていますからね。雑用含めて全部自分でやらなければいけないのは、自営業者やフリーランスであれば当たり前のことなんでしょうけど、分業制の組織で働く会社員にとっては意外と当たり前ではなかったりするから、この実感はダブルワークならではのものかもしれないですね」

 

レジー 「そう思います」

自分からガンガン売り込んでまで広げたいとは考えていない

黒須 「レジーさんは今のところ音楽媒体で執筆されていますけど、一般紙など他のジャンルに仕事の幅を広げたいとは思わないんですか?」

 

レジー 「それって例えば音楽ライターの柴さんがAERAで書いたようにという意味ですか?」

 

黒須 「そうですね。柴さんは著書『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』も出されていますし、働くフィールドを広げられている印象がありますね」

 

レジー 「まあお話をいただければやってみたいとは思いますけど・・・いつも読んでないであろう人がいるところに文章を書くのは面白そうなので。でも自分からガンガン売り込んでまでとは思わないですね

 

黒須 「そこの考え方は変わらないんですね」

 

レジー 「今時点で毎月定期的に書いているものが複数あるのでそれを維持しつつ、さらにブログも書きたいときに更新して・・・っていうのが基本なので、その上でチャンスがあってタイミングが合えば新しいこともやりたい、くらいの感じですね。お話をいただければいろいろなことにチャレンジしたいとは思っていますが、積極的に新規案件を開拓したいという気持ちはあまりないです。与えられた場所でエッジの立ったことをこれからも書いていければいいな、くらいのことしか考えてないというか」

 

黒須 「ミュージシャンへの取材なども増えて顔見知りになったりすると、心情的にエッジの立つ尖ったことは書きづらくなったりしませんか?」

 

レジー 「まあそういうこともなくはないですけど・・・その辺の制約も楽しんでやっているつもりではいます」

 

黒須 「周りのライターと話をしていると、実際のところは書きたいことが書けないというよりも、その記事の目的によって何を書くべきかが変わる、 といったことのようですね。ポプシクリップ。はレーベルやアーティストから広告費を一切もらわない独立媒体で普通のメディアとはビジネス構造が違うからあまり気にする必要はないんですけど、それでも応援する立場で書くときはネガティブなことや些細なことをつっこんでも仕方ないから書かないですし、一方でレビュー記事の場合はバンドにとっては耳の痛いことを書く場合もあります。さじ加減は難しいんですけどね」

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