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レジーのブログ×ポプシクリップ。

プル型、プッシュ型、仕事の広がり型

黒須 「レジーさんがプル型、つまり依頼仕事だけでやっているのは少し羨ましく感じました。ありがたいことに最近僕もレーベルやアーティストなどからの依頼仕事が増えてきたんです。ただ僕の場合はもともとがプッシュ型、こちらから取材したいバンドに依頼してスタートした経緯もあって、基本スタンスが自分で取材対象やテーマを選んで記事を書くというところにあります。だから大半の仕事は自分で作るところからやらなければいけないのは少し大変なんです。好きだからいいんですけどね(笑)」

 

レジー 「プル型という話だと、僕の場合はレーベルの方から直接オファーをいただいて書いた記事がこの1年でいくつかあります

 

黒須 「それはいい話ですね。音楽ライターの仕事としては、洋楽アルバムの日本盤解説やCDの帯コメント、アルバムリリース時の推薦コメントなどもあるじゃないですか? メディアの立場で書く仕事以外にもそのようなアーティスト側、レーベル側の立場で書く仕事もあると幅が広がりますよね

 

レジー 「それに関して言うと、去年“Awesome City Club”の公式サイトでのインタヴューとアルバムの紹介資料の中で文章を書きました。あと最近だと“odol”の新しいアルバムのライナーノーツも担当しました」

 

黒須 「奇遇ですね。僕も同様に昨年あるバンドの新作リリースの際、公式サイトでのオフィシャルインタヴューやバンドのプロフィール、リリース時の紹介文章などを書かせてもらったんですよ。結果、彼らのアルバムにクレジットを入れていただくことができて、それは素直に嬉しかったですね。ただ、やってみて思ったのはバンド側の立場の仕事は、メディアで書くのとはまた違う難しさがあったということです。ライター仲間から聞いてはいたんですけど、実際にやってみてその難しさ、視点がまるで逆というか・・・それを感じました。もちろん楽しくやらせてもらったんですけど、頭のスイッチを切り替える感じでした」

 

レジー 「盤に名前が出るような形に残る仕事はいいですね。他にも何か面白い仕事はありましたか?」

 

黒須 「面白いとは違うんですけど、最近だと川本真琴さんの案件はとても学ぶことが多かったんですよ。音楽キャリアのふりかえり記事も何度か書いたことがあるんですけど、2回に分けて計6時間もの取材は初めてでしたし、まとめ方も相当悩みましたから。この記事はインタヴューに加えて簡単なヒストリーやディスコグラフィも作ったんですが、ソニーミュージックをはじめレーベル各社の許諾をもらう作業も思っていた以上に大変でした。ソニーのような大手は情報管理がしっかりしているので、企画が通ればあとはすんなりと作業を進められるのですが、あるインディーズレーベルで担当者が変わり連絡先もわからず、データもないというものがあったんですよ(苦笑)。でもディスコグラフィで1作品でも欠けていたらカッコ悪いし、読者や川本さんに申し訳ないじゃないですか? だからそこはあちこち駆けずり回って頑張りましたけど、最後の許諾を取れたのが印刷開始の前日でスタッフ共々本当にヒヤヒヤしました(笑)」

 

レジー 「騒動もあったし大変だったんじゃないですか?」

 

黒須 「大変とは少し違いますが、記事掲載後にテレビ局からの問い合わせや芸能番組への出演依頼があったのは驚きました。こちらは一般人で裏方なわけですからね・・・もちろん全部お断りしたんですけど、自分の書いた記事の反響が想像以上にあったので、ビックリしたのと同時に世の中の動きを少し感じることができたのはいい勉強になりました。でも何よりも川本さんの記事を読んだリスナーから応援コメントをたくさんもらったんですよ。それが一番嬉しかったですね

ライターは自分で企画取材した記事を書かない?

黒須 「最近知人の音楽ライターと話をして気になったことがあるんです。音楽ライターは自分で企画取材した記事を書かないのでしょうか?」

 

レジー 「どういう意味ですか?」

 

黒須 「皆さん媒体やレコード会社から仕事をもらって取材して記事を書いているんですよね。メディアありきなんです。自分で気になるミュージシャンに直接取材を申し込んで記事を書かないのかなっていう素朴な疑問なんですよ。音楽ジャーナリストの岡村詩野さんが以前話していたんですけど、岡村さんは今でこそ様々な媒体から仕事をもらって記事を書いているわけですが、駆け出しの頃は媒体から仕事をもらいつつも、一方で自分が気になるミュージシャンの記事を書いてフリーペーパーで配っていたんだそうです。今でも時折自分で企画を考えて媒体の編集部に持ち込み企画をすることもあるそうなんですよ。本来ライターは書きたいことがあったら、自分起案で動くものじゃないかなって思っていたんですよね。ただ、周りに話を聞いてみるとちょっと違うみたいで・・・。僕がWebで書くようになったのも、自分が取材して書きたいというのがあるんです。音楽雑誌を作りはじめたのもその一環なんですよね」

 

レジー 「あまりそういう話をライターの方としたことがないので実際のところはわかりませんが、「媒体ありき」ではないものはお金にしづらいというのが大きいんじゃないでしょうか。「文章を書いた原稿料で生活する」というスタイルであれば、原稿料が出るところでやらないと損、という考え方もあるでしょうし」

 

黒須 「やっぱりお金の問題、そこに行きつきますよね。でもnote(※3)のように誰もが自分で書いた記事を手軽に販売できるプラットフォームも出てきているから・・・まあ現実は固定ファンを持っていない限りそんなに売れないから難しいのでしょうが」

 

レジー 「「媒体から原稿料をもらう」という以外の考え方だと、自分でメディアを作ってそこからマネタイズするとかでしょうか

 

黒須 「そうですね。まさにそこは僕もチャレンジしているところですが、自分でゼロから雑誌を作って売るのはほんと大変です(苦笑)。デザイナーと二人でやっているんですけどね」

 

レジー 「最近出された雑誌の売れ行きはどうですか?」

 

黒須 「この前作った第6号のポプシクリップ。マガジンから試しにAmazonでも置いてもらうようにしたんですけど、音楽雑誌総合ランキングで最高8位、J-POPカテゴリでは最高4位になったんですよ。それがすごく嬉しかったんですよね。『ロッキン・オン・ジャパン』や『音楽と人』を超えることはできなかったんですけど、一時的とはいえ『MUSIC MAGAZINE』や『MUSICA』など自分が普段読んでいる雑誌より順位が上になったときは驚きました。あと星野源さんとエグザイルさんの間に表紙のSwinging Popsicle さんが並んだときにはスタッフも大変喜んでいましたね(笑)。インディーポップZINEでも戦い方次第ではこんなことが起こるんだなと、学ぶことの多い出来事でした」

 

レジー 「おお、すごいですね。多分Webと相性がよかったのと、他では売っていない希少性がよかったんですよね

 

黒須 「そうだと思います。ただ、感想ツイートを見るとサイトを昔から応援してくれる人が買ってくださっているのはもちろんなんですけれど、初めての方もたくさんいたんですよ。多分他の媒体ではあまり取り上げていない空白地帯だったからリスナーが興味を持ってくれたんでしょうね。でも見方を変えれば音楽雑誌が売れていないのは本当なんです。音楽雑誌は5万部、10万部、多い雑誌で20万部以上を謳っているところもありますけど、Amazonの売れ行きと市場構成比から逆算したらありえない数字なんですよ。だから発行部数はともかく、実売部数はそこまで伸びていないんだろうなと。僕は雑誌が好きだから、これからも工夫して無理なく続けていきたいなとは思いますけど」

花火をあげちゃって精神的にも肉体的にも燃え尽きないようにしたい

黒須 「そろそろまとめに入りたいと思います。レジーさんのこの1年は、生活環境が変わったり、新しい媒体で書いたりなどはあったけれども、基本大きな変化はなく淡々とやってきた1年だったということなんですね」

 

レジー 「実はそれを目標にしているんですよ。花火をあげちゃって精神的にも肉体的にも燃え尽きないようにしたいんですよね。今やっていることが楽しいので、同じペースで周囲に迷惑をかけずやり続けられればなと思っています。結構それって難しいんじゃないかって思っていて」

 

黒須 「確かにペースを維持するのって結構難しいんですよ。コンスタントにアウトプットを出すのは大変なことですからね」

 

レジー 「そうですね。変にピークを作らず、枯れないようにやっていければと思います。以前僕のブログで紹介したダブルワークをやっていた3人もそれぞれの形で音楽に関わる仕事を今も続けているみたいです」

 

黒須 「周りにダブルワークで音楽に関わっている人がいるのは励みになりますよね。僕がダブルワークをはじめた頃、周りに音楽関連のダブルワークをやっている人が皆無で、わりと孤独で寂しかった時期もあったんですよ(笑)。医療系や途上国支援のダブルワークは結構いたんですけどね・・・。あと自営業の方が複数の仕事をするのは当たり前でも、会社員にとってダブルワークはまだまだ市民権を得たとは言い難いし、理解されづらいこともあって・・・。最近は周りでも少しずつ増えていて、レジーさんのように続けている方がいると自分も頑張ろうって思えますね」

 

レジー 「僕も今のライフスタイルから学ぶことは多いですし、色んなことを試せるのでやっていてよかったなと思います」

 

黒須 「昨年に続いて“音楽業界でのダブルワーク”をテーマに対談をさせてもらったんですけど、互いに1年続いてよかったと思います。また来年、互いのダブルワークがどのような形になっているのか、振り返られたらいいですね」

 

レジー 「今の時期だと就職活動をしている学生さんもいると思うんですが、音楽と関係のある仕事をするには色々なアプローチがあるので、「別の仕事をしながら音楽に何かしら関わっていく」というような生き方もぜひ選択肢として考えてもらえたらと思います」

 

黒須 「それでは、また来年」

 

 

 

 

参考リンク

※1 東洋経済オンライン「ロート製薬の「副業解禁」が示す本当の意味」

 

※2 サンカク 仕事を辞めずに、成長企業の経営にサンカクできる

 

※3 note 

 

レジーのブログ

 

レジーのブログ×ポプシクリップ。ダブルワークによる音楽との向き合い方(前編)

掲載日:2016年8月6日

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