スタジオに集まってヘッド・アレンジで煮詰めて作ってます。
──はじめて音源をリリースされたのは一年前の『暮らしの眼鏡』でした。
行 そう、昨年2月に3曲入りのCD-Rを出しましたね。
──それから約一年ほどあけて、4月に発売されたのが初となるアルバム『これからのこと』になるわけですが。
行 アルバムはいつかはという思いもありましたけどね。曲がそろってきたんで出そうかと。
──アルバムを制作するにあたり、リスナーに伝えたいことなどはありましたか？
宮下 行さんがソングライターなので、行さんの曲を表現するためにみんなやっているわけなんですが・・・。
行 でもまあ旅バンドというか、そこに象徴されるように、楽しい感じが伝わることができれば、それはライヴもそうだしCDもそうですね。
──歌を聴いたとき、田舎の田園風景が浮かんできたんですよ。初期のユーミンや、懐かしいカントリーの印象も強くて。曲を先に作られていると感じたのですが？
行 そう曲が先ですね。ただ雰囲気とかは・・・基本的には集まったメンバーの特性があるんで。いつも僕、デモを作ってこないんですよ。平たく言うと作れないというか（笑）いや、一応あるんですけどね。
──スタジオで煮詰める感じ？
宮下 かっこよくいえば、ヘッド・アレンジで作ってますね。
※ヘッド・アレンジとは楽譜などによらず、口頭で大まかな方向を出し合いながら曲を作っていくやり方
行 そうそう、ポイントとなるところを言ったらあとはおまかせだよね？
宮下 でも逆にメンバーとしたらどういう風な世界を作っていきたいのか・・・行さんの想いを具体化していくってのがあると思います。
──曲を煮詰める際に、イメージというのは予め、ゴールみたいなものがあってそこを目指していく感じなのか、それとも作っていくうちにあ、これだね！と腑に落ちる感じなのでしょうか？
行 もちろん僕も曲を書いた時点である程度の完成形は頭の中にありますけど、実際にスタジオでやるじゃないですか？すると案の定違うかたちになったり。でも、
それでも全然OK。自分の思ってるものが正解ではない、もちろんこだわりはあるけど、どっちかというと実際に音を出してもらったほうがよかったことが多くて。
──今回のアルバムでもいい意味で違った方向になった？
行 そうですね。スタジオ持ってきたら大体違ったので・・・結構最初のイメージと違ってますね。
好きなことを続けてやっていたら、たまたま椅子が空いていた。
──郷愁感があちこちに溢れているように思うんですが、このような音に仕上げたいというものがあったのでしょうか？
寺岡 平野さんというエンジニアさんがレコーディングしながら、結構そのアナログの音というか、古き良きというか、そういうのを意識してくれたんですよ。
行 平野さんは音を最初に聞かせたときからそういう感じでいくつもりだったみたいだから。
寺岡 なのでどっちかというとやっぱりエンジニアの平野さんの力が大きいですね。
──すごく不思議だったのがいわゆる田園風景が思い浮かぶ懐かしさみたいなものと一緒に、最新のシティポップスの都会的な匂いも混ざっていて、今までにあるようでなかった印象がすごく強かったんですよ。この妙というのは何だったんだろうかなと？
行 あー、でもそれはあまり意識していないかもしれないですね。人選でこういう音になったという結果なんで。最終的なミックスやマスタリングのところは平野さんが意識的にやってくれたのはあるだろうけど、そこまでの過程は特に。
──じゃあ最初から意図的にこの音を狙っていったというわけではなくて、今のメンバーが集まったら自然と今のかたちになったという。
寺岡 でもたまたまそういう椅子が空いていたというか、なかったというのは需要はまあ、潜在的にはあったけど、そこをあえてやっている人がいなかったというのはあるんじゃないかな。
行 絶対それはあるよね。
寺岡 そういうカントリーっぽいとか古き良き歌モノでがっつりしたものというか・・・たまたま椅子が空いていたんじゃないかと思ったりするところはあるんですけどね。だから誰が座っても不思議じゃなかったけど、行さんが多分そこを見つけて、椅子取りゲームで、すっと座ってみたらいいじゃんといってくれる人がすごくたくさんいてくれて・・・こういう風にいい結果がというか、うまくまわってるというか。だからものすごく新しいことを、突拍子もないことをやりたいとかいう感じでもなくて、たまたま好きなことを続けてやっていて、たまたまそこの椅子が誰も座っていなくていい具合に進んでいったんじゃないかと、個人的には思うんですけどね。
行 その通りです（笑）
一同 （笑）
行 ほんとほんと。
寺岡 奇をてらわない感じがすごくよかったんじゃないかと思うんです。
行 僕自身はそんなに器用じゃないんで、自分のなかから出てくるものしかなくて・・・あんまり計算高くはしていないしね。