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HARCO『ゴマサバと夕顔と空心菜』発売記念インタヴュー

もう他にやることがない!ってところまでいけば、曲が書けるようになるんじゃないかって。

──曲は出来るようになっても、今度はクオリティの面で納得いかないものが続いた、と。

 

HARCO 「そうです。それで苦し紛れに自分で自分に架空のオファーをしてみるんです。“映画のエンディング曲のオファーがきたら…”とか。で、“パルメザンチーズのCMソングのオファーがあったら…”という仮定で作ったのが今回のアルバムに入っている[Snow on the Pasta]なんです(笑)」

 

──架空のノベルティ・ソングですね。昔からコンポーザーが利用する手法の一つ。

 

HARCO 「そう。で、1曲、“大貫妙子さんから曲提供のオファーがあったら…”というので作ってみたりもしたんですけど…それは結局今回のアルバムには入らなかったですね。大貫さん、お会いしたことはあるんですけど、もちろん実際にオファーされたことはないんで(笑)。まあ、そのくらい今回のスランプは長かったですね」

 

──なぜ今回そこまで長期的に曲作りのスランプに入ってしまってたんだと思いますか?

 

HARCO 「う~ん……5年前の前作『Lamp&Stool』はジャズとポップスのクロスオーバーを意識して作ったものだったんですけど、そのアルバムを作る前に、自宅に防音のスタジオをしつらえていつでも録音できるようにしたんです。で、これからここで次のも作るぞ~って意気込んでたら、GOING UNDER GROUNDのサポートの仕事が入ってきて…。今はもうやってないんですけど、ちょうど3年くらいやったのかな、結構忙しくしていたので、なんだかんだでスタジオで音を作る時間がとれなくなっちゃったんですよ。そうこうしているうちに、今度は映画音楽やプロデュースの仕事も依頼があって……物理的になんだかんだで忙しくなってきて、自分の曲を作る時間がなくなってきちゃったんです。で、前作からの流れがだんだん途絶えてきてしまって、曲を作る勘が失われてしまったんですよね。ここまで自分の曲が後回しになるなら、とことん後回しにしようと思って、パソコンの中にTO DOリストを作って、まず身辺をちゃんと整え始めたんですよ。要らない機材や楽器を譲ったり、本や服も処分したり……断捨離ですよね。本当はそのTO DOリストの一番上に曲を書くことがこないといけないんだけど(笑)、もうとことん他のことを先にやっちゃおうって。もう他にやることがない!ってところまでいけば曲が書けるようになるんじゃないかって思ったんです。で、実際にもう他に何もすることがなくなった。いよいよ曲でも書くか!って感じになったんですよ(笑)」

 

──そこからエンジンがかかってきた。

 

HARCO 「そうなんです。で、[カメラは嘘つかない]って今回のアルバムに入っている曲が去年の春くらいに出来た時に、割と僕も納得できたしスタッフからの評判も良くて。ああ、こういう感じでまた書いていけばいいんだなってことが掴めてきたんで、今作の作業の折り返し地点みたいな曲になりましたね。思えば、あの曲ができてから今回のアルバムの作業がスムーズに進んでいきましたから」

自分の好きなものってなんだろう?って考えたら、それはやっぱり昔から好きなシティ・ポップスだったんです。

──あの曲はとても青木くんらしい曲だけど、明確なリファレンスがあまり感じられない、自然に誕生したことがわかるような曲だと思いましたよ。

 

HARCO 「そう、今回のアルバムってこの曲だけじゃなくて、リファレンスをあまり考えなかったんですよ。ああいう曲を作りたいとか、ああいう感じにしたいとか。そういう願望があまりなくって。前のアルバムなんかはそういうところが強かったし、実際に何かをお手本にしていたところもあるんですけど……でも、もともと僕はそうやってリファレンスを用意して曲を作るタイプじゃないんで、たぶん、昔の自分に戻ったところもあるかもしれないですね。もちろん、普通に色々聴いてはいたんですよ。マック・デマルコ、すごくハマりました。岡村さん、見に行ってましたよね? あれ、僕も行きたかったんだよなあ。見に行けなかったんですけど、ユルい感じがいいなあって。あとBibioも大好きですね。日本だとceroとかシャムキャッツも好きで聴いてますよ。で、自分に置き換えた時に、もっともっとわがままなアルバム、好きなことを好きなようにやるアルバムにしようって思えてきて。じゃあ、自分の好きなものってなんだろう?って考えたら、それはやっぱり昔から好きなシティ・ポップだったんですよね。でも、シュガーベイブの時代のシティ・ポップと今のシティ・ポップって違うじゃないですか。昔は都会の風景を描いた、東京に憧れる人も楽しむような音楽って感じだったけど、今の日本はいくつも大きな都市があって、どこにも都会的な風景がある。それに、インターネットを開けば、どんな郊外に住んでいても何でも手に入る。どこに住んでいても都市は目の前に存在する、みたいな時代でしょう? シティ・ポップ自体も宅録ですごくクオリティの高いものができてしまう時代。北園みなみ君なんて、部屋の中に都市を作っちゃう、みたいなところがあるアーティストだし。で、僕はバンドの一人じゃなくて、やっぱりソロ・アーティストなんだけど、バンド・サウンドはすごく好きで、そのどっちもをやりたいな、やるにはどうすればいいかな?ってことをよく考えてきたんですけど、それができるのってやっぱりシティ・ポップって気もするんですよね」

 

──シティ・ポップス……それはスタンダードなポップスという風に置き換えることもできますか?

 

HARCO 「ああ、そうですね。自分の中では、そういうポップスが好きなんだなっていう思いはずっとやっぱり継続していて……コアから出した3部作で、僕は一つのピークを築いた自覚があるんですけど、その頃の感覚につながってる感じもするんですよね」

          

 

 

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