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Chocolat & Akito 扉 発売記念インタヴュー

今年9月にリリースされたChocolat & Akito の「扉 ep」は、前作の2ndアルバム『Tropical』から5年ぶりとなる作品で、この歌はラジオのテーマ曲としても使われていたので、ファンならずとも記憶にあるリスナーは多いのではないだろうか。

 

5曲入りの本作品は、シングル曲「扉」を相対性理論の永井聖一など3人のミュージシャンがリミックスないしミックスで参加しているのも特徴。経歴や年代が全く違うアーティストの手により生まれ変わった「扉」は、作品に幅や深みを与えているのはもちろんのこと、リスナーが本作品を何倍も楽しめるように工夫されており、そのリスナーに喜んでもらおうという精神は楽曲だけではなく、こだわりのパッケージにも見られる。

 

今回編集部では今年デビュー20周年を迎える片寄明人さんに、本作品のリリースに至った背景や楽曲に関するお話などを伺った。今月下旬に2作品のアルバム・リリースを控えて大変ご多忙の中、ご対応いただいたことに改めて感謝申し上げたい。本インタヴューが彼らの作品を理解する上でリスナーの皆様の一助になれば幸いである。

  

取材・文/編集部

夏前から精魂傾けた作業を続けてきたので、ホッとしています。

──前作2ndアルバム『Tropical』から5年ぶりのリリース、おめでとうございます。まずは今のお気持ちを教えてください。

 

片寄明人 5年ぶりのChocolat & Akito、9年振りのGREAT3、この両新作アルバムが偶然にも同じタイミングでリリースされる事となり、夏前から他の仕事をすべて断って、精魂傾けた作業を続けて来たので、正直完成が近づいている今はホッとすると同時に抜け殻のような気持ちになりつつあります。気持ちを切り替えてプロデュース・ワークなどで気分転換したいですね(笑)。「扉」はその最中のリリースだったので、もう何が何やら分からないまま発売されてました(笑)。

──Chocolat & Akitoさんを当サイトでご紹介させていただくのははじめてですので、簡単に結成の経緯や現在目指している音楽性などについて教えていただけないでしょうか?


片寄 GREAT3が活動を一時休止した2005年に妻であるソロ・シンガー、ショコラと2人で結成しました。ファンキーかつメロウなバンド・セットはもちろん、2人だけでのアコースティックな弾き語りライブでもハーモニーを生かしたメロディーの良さとシンプルな言葉で想いを伝えられるような楽曲作りを心がけています。

「扉」は今のChocolat & Akito を象徴する思い入れのある楽曲。

──「扉」をシングル・リリースされることになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?


片寄 この曲は4月からTBSラジオ「たまむすび」のテーマ曲としてリリース前から使って頂き、好評を博していた経緯もあり、まず第一弾のシングルとしてアルバムより前にリリースしたいと思いました。この「扉」と11月28日にリリースするアルバム『Duet』に収録されるリード・トラック「ONE」の2曲が、今のChocolat & Akitoを象徴する思い入れのある楽曲だと言えると思います。

──拝聴したとき80年代のニュー・ウェイヴや前作「チューニング」でも取り入れられていたファンクの要素も改めて感じましたが、音作りの面で今回特に意識されたことはありますか?


片寄 Daryl Hall & John Oates、Talking Headsなど、自分が多感な頃にリアルタイムで聴いていた80'sの音楽を自分たち流のファンキー・ミュージックに昇華させたイメージが「扉」作曲時にはありました。ただ巷に溢れる復古的な80'sサウンドにはあまり魅力を感じないので、あくまで今の音として表現出来るよう腐心しました。アルバムではさらに50'sのドゥーワップやオールディーズ的な要素をそこに投入し、かなり独自で個性的なサウンドをお聴かせできる仕上がりになったと思っています。

──特にサビの「閉じた扉は 無理にこじ開けず執着しないで 開かれた扉 きっとその奥に 何かある」。聴いていてこの詞・フレーズがとても印象的でした。作詞にあたっての想いや背景などがあればお聞かせください。


片寄 この数年間でたくさんの友人を突然の逝去で失った経験から「生死」について深く考えざるを得なかった結果がここ最近書くすべての歌詞に反映されていると思います。そして今という時代は、政治的、経済的、精神的、あらゆる意味で転換期、過渡期と言える時期だと思っています。昔の良き時代の想い出が忘れられずに、未だその価値観にしがみついた結果、今という貴重な時間に目を向けることが出来ず、生きることに苦しくなっている人が、特に僕の世代から上の人達に多くなってきているように感じています。

 

すべての苦しみの元は「執着心」から生まれるのではないでしょうか。「当たり前」のハードルを上げすぎると誰しも苦しくなるものです。まずは「生きている」ということ自体を当たり前に思わず、そして古い「閉じた扉」に執着せず、不安に負けずに目の前に今「開かれた扉」をくぐり、もう一度命を燃やしたいという想いを込め、今までになくシンプルな言葉で歌詞を書きました。

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