マニアックな指向を持ったミュージシャンからポップなアイデアを引き出すことが何より喜びなんです。

──サポート・メンバーも大変豪華ですが、制作・アレンジはどのように進められたのでしょうか?


片寄 ドラムにLittle Creaturesの栗原務くん、鍵盤とシンセ・ベースにヒカシューの清水一登さん、ギターはTica、Gabby & Lopezの石井マサユキくん、という気心知れた、ここ数年のChocolat & Akitoライヴメンバーでレコーディングに挑みました。

 

共同プロデューサー&エンジニアには僕とはフジファブリックやAnyなど多くのプロデュース・ワークでタッグを組み、近年はサカナクションのエンジニアとしても有名な、浦本雅史くんを迎えました。まだ30歳そこそこで若いバンドをたくさん手がける彼独自の視点を期待しての抜擢でした。


僕はこのバンドの魅力はある意味でミスマッチな組み合わせにあると思っているんです。栗原くんは決してファンキーなドラマーではなく、もっとパンク、ニュー・ウェイヴな魅力を持ったミュージシャンですし、ヒカシューの清水さんの普段の活動も僕らの音楽よりずっと前衛的でプログレシッブなものです。しかしそこに石井マサユキという実に黒くファンキーでありながら繊細な要素を持ち合わせたギタリストが混じり音を紡いだ結果、他では聴くことが出来ない唯一無二の歪なファンキー・ポップが出来上がる。これが今のChocolat & Akitoバンドの大きな個性だと思っています。


アレンジはいつも皆でスタジオに入って、あぁだこうだ言いながら考えていきます。フックとなるキャッチーなアレンジは意外にも清水一登さんから生まれることが多いですね。ジョン・マッケンタイアなどシカゴのミュージシャンと共演するときもそうなんですが、僕はマニアックな指向を持ったミュージシャンからポップなアイデアを引き出すことが何より喜びなんです。自らの音楽では前衛的な表現をしている人でも、心の中ではポップに対する興味や嗜好を必ず持っているものだと僕は思います。彼らも皆、僕の音楽に参加するときはそこを楽しんでくれているんじゃないかと思っています。

制作風景
制作風景

──本作品には多くのミュージシャンが参加されています。相対性理論の永井聖一さん、SAKEROCK、在日ファンクの浜野謙太さんによるリミックスに加え、トータスのジョン・マッケンタイアさんによるミックスもあり多角的に楽しめる作品になっています。今回の作品につながった出会いや経緯はどのようなものだったのでしょうか?


片寄 相対性理論、SAKEROCK、在日ファンクについては僕自身が彼らの音楽のファンなのでリミックスを依頼しました。永井聖一くんとは以前より仲良しなのですが、浜野健太さんとは未だにお逢いしたことがないんです。両者ともにその個性を存分に生かしたリミックスに仕上げてくれて嬉しくなりましたね。ジョン・マッケンタイアとは2000年にシカゴに飛び、彼の家にホームステイをして、Tortoise、The Sea and Cakeのメンバーとソロ・アルバムを制作して以来、GREAT3、Chocolat & Akitoで計6枚のアルバムを一緒に作ってきた、いわば盟友です。次作『Duet』でも8曲中、浦本くんが手がけた2曲を除く6曲のミックスを手がけてくれています。

 

実は「扉ep」に収録されている「扉(ジョン・マッケンタイアver)」はリミックスではなく、ジョンがドラムとMIXを担当した、いわば全くの別テイクなんです。一度シカゴでレコーディングしたのですが、ギターを重ねたり色々手を加えたくなってしまい、結局お蔵入りとなっていたテイクなので、その浦本ヴァージョンとの違いを楽しんでもらえるといいな。

制作風景
制作風景

ライヴ会場でしか購入できない手作りの「Chocolat & Akito ZINE」。

──また5曲目の「ジョヴァンニ」はレーベル・メイトの宮内優里さんによるリミックス作品ですが、この歌は確か初収録タイトルだと思うのですが、なぜリミックスが先に収録されたのでしょうか?


片寄 実はここ数年、ライヴ会場でしか購入できない「Chocolat & Akito ZINE」というスタイルで新曲をリリースしてきました。これは完全手作りのヴィジュアルBOOKで、デザインから印刷、製本、CD焼きまですべてを僕らの手で行い、会場でサインをして1冊ずつ手渡ししているんです。

Chocolat & Akito ZINE
Chocolat & Akito ZINE

「ジョヴァンニ」はこのZINEのVol.1に収録されていた曲ですし、ライヴでは以前より演奏してきた曲なのでコアなファンの間ではお馴染みの曲かも知れません。宮内優里くんの素晴らしいその資質とこの曲がきっと合うだろうと考えたんです。期待に応えてくれましたね。全国的なリリースとしてはリミックスが先となる変則的な形となりましたが、ZINEに収録したジョン・マッケンタイア制作のヴァージョンとも違う、まったく新しい新ヴァージョンも次のアルバムに入りますので、「あぁ!こんな曲だったの!」と驚いてもらえると嬉しいな。

        

 

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